婚姻費用って知っていますか? 離婚関連で見落とされがちな費用
ファイナンシャルフィールド / 2020年8月1日 6時10分
日本でも離婚が珍しくなくなり、離婚に関する報道もいろいろ耳にしますね。離婚時には財産分与、子どもの養育費などが問題となります。ところで、「婚姻費用」という言葉をご存じでしょうか? 婚姻費用とは、夫婦が共同生活をするために必要な生活費のことをいい、婚姻費用の分担請求とは、別居中に収入の少ない妻(または夫)が収入の多い夫(または妻)に生活費の一部を請求することをいいます。別居から離婚に至る期間が長くなると多額の婚姻費用の分担が発生することになります。 この記事では、婚姻費用について解説してみたいと思います。
婚姻費用とは?
財産分与とは、夫婦が離婚するときにお互いの財産を分け合うことをいいます。養育費とは離婚後に発生する未成年の子どもの生活費、教育費などをいい、離婚後は子どもを養育する側に対して子どもを養育しない側が養育費の一部を支払います。
それに対し、婚姻費用は、婚姻中の夫婦が共同生活するために必要な生活費を指します。
夫婦が別居をすると、それぞれに生活費が発生します。夫婦はそれぞれの収入に応じて生活費を分担することが法律で定められているので、通常は収入の多い方が少ない方に対し生活費を支払うことになります。これを婚姻費用の分担といいます。
生活費には、食費、住居費、光熱費、医療費など、子どもがいれば、子どもの生活費、教育費、医療費などが含まれます。
婚姻費用の分担は別居した時点で発生し、正式に離婚するまで続きます。近所のAさんは奥さんと別居していて、今離婚の裁判中というときは、婚姻費用の分担が発生している可能性が高いわけです。
婚姻費用の計算の仕方
では、婚姻費用はどのように計算するのでしょうか?それは最高裁の司法研修所が発行した「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」という本に詳細に定められています。まず、夫婦それぞれの基礎収入を次の計算式に基づいて計算します。
基礎収入=税引き後の所得-職業費-特別経費
職業費:給与所得者として就労するために必要な経費、スーツ代、交通費、接待交通費など。自営業者には認められない。
特別経費:家計費の中でも固定費的な性格を持つもの、家賃や医療費など、自分の意志で変更することが難しいもの。
基礎収入とは、税引き後の所得から、必要経費である職業費や固定費的な特別経費を差し引いたもので、夫婦それぞれの基礎収入を足したものが婚姻費用=夫婦の生活費となります。
ただ、実際には細かい経費を寄せ集めて計算するのは大変なので、各人が所得の形態(給与所得者か自営業者か)および収入に従って一律に計算できるように係数を定めています。
基礎収入=総収入×係数K*
*給与所得者の場合 係数K=0.34~0.42
自営業者の場合 係数K=0.47~0.52
子どものいない場合といる場合―婚姻費用の違い
婚姻費用は子どもがいない場合といる場合で当然違ってきます。
1.子どものいない場合
婚姻費用=夫の基礎収入+妻の基礎収入
夫婦で基礎収入が違っても、夫婦それぞれの生活費は1:1ですから、基礎収入の少ない方から多い方へ(基礎収入の多い方の基礎収入-婚姻費用/2)を分担請求することになります。
2.子どものいる場合
子どもを育てる側の婚姻費用の取分
=婚姻費用×(100+子どもの係数)/(100+100+子どもの係数)
子どもの係数
14歳以下の子ども1人当たり 62
15歳以上の子ども1人当たり 85
それぞれの基礎収入と取分の差額に応じて、少ない方が多い方に分担請求することになります。
婚姻費用の損得
上記の説明を読んで、勘のいい方はお分かりになったと思いますが、婚姻費用の損得は夫婦それぞれの基礎収入の違いで決まります。子どものいない場合、夫婦それぞれが取るべき婚姻費用は1:1です。
もし、基礎収入が夫900万円、妻100万円とした場合、次の計算式に従い、夫は妻に対し毎年400万円支払わなければいけません。
1年当たりの婚姻費用の分担額
夫婦の婚姻費用:900万円+100万円=1000万円
夫婦それぞれの生活費:1000万円÷2=500万円
夫が妻に支払う婚姻費用の分担額:500万円-100万円=400万円
もし基礎収入が夫100万円、妻100万円なら婚姻費用の分担は発生しません。離婚裁判が長くなると、この婚姻費用の分担だけで1000万円を超える金額が発生することになります。機会を見て次回は、実際の数字を基に、婚姻費用の問題を掘り下げてみましょう。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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