令和2年の「路線価」公表。そもそも路線価って?
ファイナンシャルフィールド / 2020年8月14日 10時0分
![令和2年の「路線価」公表。そもそも路線価って?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_84350_0-small.jpg)
2020年7月1日、国税庁より「令和2年路線価」が発表されました。相続が発生した人、相続が気になる人、相続に関わる専門家たちにとって、注目の土地の基準価格です。変動率の全国平均は昨年を1.6%上回り、5年連続で上昇する結果となりました。 「路線価」は公示地価の80%といわれ、相続税や贈与税の算定に使われる評価額ですが、新型コロナウイルスによる経済低迷の影響で不動産価格の下落が予想されるため、補正などの措置も検討されています。
最高額は、東京都中央区銀座の文具店「鳩居堂」前の4592万円
毎年、路線価のニュースで話題になるのが、東京・銀座の「鳩居堂前」の価格です。全国で最も路線価が高く、1平方メートルあたりの価格は4592万円(上昇率は昨年より0.7%)と35年連続の最高額となりました。
都道府県庁所在都市の最高路線価は、国税庁ホームページで確認することができます。
そもそも路線価って?
同じ土地でも価格はひとつじゃない
土地は「一物四価(一物五価)」といわれるように、以下に示す通り、同じ土地でも評価方法により複数の価格があり、調査方法や発表、目的により使い分けられています。
(1)実勢価格(時価・相場)…実際に取引される価格
(2)公示地価…国土交通省による1月1日時点の標準値の価格
(3)基準地価…都道府県による7月1日時点の基準値の価格
(4)相続税評価額(路線価)…相続税、贈与税などの課税価格を算出するための価格
(5)固定資産税評価額…固定資産税や不動産取得税などの基礎となる価格
上記(2)(3)は、あわせて「公示価格」と呼ばれることもあります。どちらも取引の目安となる価格であり、重複している場合もあります。(3)が(2)を補完するイメージと考えてよいでしょう。
相続税や贈与税の財産を評価する場合に適用するのが「路線価」
相続、贈与によって財産を取得した場合には、それぞれ相続税、贈与税が課税されます。相続税(贈与税)の申告にあたり、形状や奥行き、広さによって異なる土地は、価格を把握することが困難です。
また、公平を図るという観点から、国税庁は、土地財産に係る相続税および贈与税の財産を評価する基準値として「路線価」(指定された道路に面している土地の価格)を発表しています。
路線価は、通常の売買における価格設定とは異なり、公示地価や売買事例、不動産鑑定士などによる評価額をもとに決められ、公示地価の80%程度とされています。なお、路線価が設定されていない土地の場合には、倍率方式という方法で評価を行います。
今後、相続が生じる可能性のある方、相続税が気になる方は、毎年更新される「路線価」を確認し、必要な対策を検討しましょう。
2020年1月1日以降に相続が生じた場合に、新型コロナウイルス感染症による影響をふまえた「補正率」の検討
2020年1月1日から12月31日までの間に相続(贈与)が発生した場合には、同年7月1日に発表された「令和2年路線価」を適用して評価をします。
評価時点である2020年1月1日には、まだ新型コロナウイルスの感染拡大前であり、むしろ東京オリンピック・パラリンピック前の活況という状況でした。しかし、今後の経済情勢を予測すると、下落傾向にあるといえます。
国税庁は今後、国土交通省が発表する都道府県地価調査(7月1日時点の地価)の状況などにより、広域な地域で大幅な地価下落が確認された場合などには、便宜を図る方法を検討する旨を発表しています。
公示地価の80%=路線価と考えると、下落率が20%以内であれば、路線価を適用して申告することで問題ありません。もし、それ以上地価が下落した場合には、路線価が地価を上回り、多くの納税者に影響が出ることになります。
そういった意味で、2020年1月1日以降に相続が生じた場合には、特に申告に関して慎重な対応が必要です。
基準地価(都道府県地価調査)が発表されるのは、毎年9月末から10月頃、相続税の申告は、相続発生から10ヶ月以内ですので期限に注意しましょう。
なお、新型コロナウイルスの影響をふまえた「補正率」の措置の対象となった場合は、国税庁の発表前に申告済みであっても、「相続税申告の更正の請求」で対応できそうです。
引き続き情報にアンテナを
新型コロナウイルス感染症は、経済活動にも大きな影響を与えています。感染拡大防止とともに、経済の立て直しに、一人ひとりが取り組んでいく必要がありそうです。同時に、起こりうる影響への対策も考えていきましょう。
気になっているけど後回しにしがちな「相続対策」、自分自身のこと、家族のことを考えるよい機会かもしれません。自宅の土地の大まかな評価額を知ることで、相続税がかかるのかどうか、かかるとすればどのくらいの税額になるのかについて知ることができます。
相続税がかからない場合でも、財産を誰にどのように残すのかについて考えてみてください。いざというときに慌てないためにも、情報にアンテナを張ることを心がけたいですね。
[出典]
国税庁「令和2年分都道府県庁所在都市の最高路線価」
国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」
国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」
国税庁「令和2年分の路線価等について」
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士
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