こっそり学ぶ遺族年金(5) 寡婦年金と死亡一時金
ファイナンシャルフィールド / 2020年9月4日 10時10分
![こっそり学ぶ遺族年金(5) 寡婦年金と死亡一時金](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_85974_0-small.jpg)
一家の働き手が亡くなった後、配偶者や子供たちの生活を支えるのが遺族年金です。遺族年金についての知識は、誰もがあらかじめ持っておきたいものです。
「こっそり学ぶ遺族年金」の第5回のテーマは「寡婦年金と死亡一時金」です。
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男女平等ではないが…
厳密にいえば遺族年金ではありませんが、それに近いものが国民年金の給付制度にあります。寡婦年金と死亡一時金です。
寡婦年金は、夫が老齢年金を受け取る前に亡くなった際に、残された妻に対して支給される年金のことです。「寡婦」とは、一般的には、夫に死別、または離別して再婚しないでいる女性のことですが、寡婦年金の場合、対象は夫に死別した女性です。寡婦年金の性格としては「夫がそれまで支払ってきた国民年金の保険料が掛け捨てにならないように」と説明されています。
名称といい、性格といい、男女平等の時代に合わないように感じられると思いますが、歴史的に見ると遺族基礎年金の前身が母子年金だったわけですから、分からないでもありません。現実に、夫が自営業だった妻の場合、老齢基礎年金を受け取れる年齢までの間、収入が途絶えてしまう可能性があり、それを救済する措置としての役割も果たしているようです。
寡婦年金は10年以上継続した婚姻関係が必要
寡婦年金の受給要件は、次のとおりです。
▽夫は、亡くなった日の前日において、国民年金第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)の保険料納付済期間と保険料免除期間が合わせて10年以上(2017年8月1日より前の死亡の場合は25年以上)あったこと。
▽妻は、夫が亡くなったときに、10年以上継続して婚姻関係(事実婚を含む)にあり、夫によって生計を維持されていたこと。
▽次の場合は除く。
・夫が障害基礎年金の受給権を有していた場合
・夫が老齢基礎年金を受給したことがある場合
・妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給している場合
▽次の場合は選択になる。
・妻が繰り上げ受給の老齢基礎年金以外の年金を受給している場合
・死亡一時金を受け取れる場合
▽夫が亡くなってから5年以内に請求すること。
受給できるのは60歳から65歳になるまで
受給期間は、妻が60歳から65歳になるまでの最長5年間です。また、受給額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3です。
なお、寡婦年金と遺族基礎年金を同時に受給できませんが、過去に遺族基礎年金を受給していた場合でも、60歳になれば寡婦年金を受け取ることができます。
例えば、夫が死亡して遺族基礎年金を受給していたけれども、子が18歳の年度末(障害等級1級または2級の障害の状態にある場合は20歳になるまで)になったため、遺族基礎年金を受給できなくなったとします。そういう場合でも、妻が条件を満たしていれば、60歳になってから寡婦年金を受給できます。
死亡一時金は受け取れる対象者が幅広い
死亡一時金も「亡くなった人がそれまで支払ってきた国民年金の保険料が掛け捨てにならないように」との性格があります。寡婦年金と違って、受け取れる対象者は幅広く、亡くなった人と生計を同一にしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番で1人に決まります。
保険料納付月数に応じて、12万円から32万円まで
死亡一時金を受け取れる要件は、次のとおりです。
▽亡くなった人は、亡くなった日の前日において、国民年金第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)の保険料納付済期間が36月以上あること。
▽受け取れる人は、亡くなった人と生計を同一にしていた遺族で、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番で1人。
▽次の場合は除く。
・亡くなった人が老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していた場合
・遺族基礎年金を受給できる人がいる場合
死亡一時金の金額は、保険料納付月数に応じて、12万円から32万円までです。付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8500円が加算されます。死亡一時金は亡くなった日の翌日から2年を経過した場合は、請求できなくなります。
寡婦年金か死亡一時金か
上記のように、寡婦年金と死亡一時金は、どちらか一方しか受け取ることができません。一般的には、寡婦年金のほうが高額になる場合が多く、寡婦年金を選ぶ人が多いようです。
ただし、夫が亡くなったときに妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給していた場合は、死亡一時金を受給することになります。妻が若くて、60歳になるまでにかなり期間がある場合などは、死亡一時金が適しているかもしれません。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
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