不動産査定の提示のときに確認しておきたいことと媒介契約の3種類の違いって?
ファイナンシャルフィールド / 2020年9月6日 3時0分
不動産の売却を考える場合に、多くの人が利用するようになっている不動産業者の「査定」。前回は業者に査定を依頼する前に、しておくべきことについてお伝えしました。
業者に査定を依頼した後、業者から査定金額の提示を受け、内容を確認したうえで業者と媒介契約を結び、売却活動が始まります。今回は査定の提示の際に確認すべきことと、媒介契約に関してお伝えします。
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不動産の査定を業者に依頼する
前回お伝えしたように、不動産業者と一般の人との間には不動産、あるいはその取引の進め方に関する経験や知識に大きなギャップがあります。
完全にその格差を埋めることは困難ですが、最近はインターネットの普及によって、誰でもさまざまな情報が収集できるようになりました。そうした情報の中から、自身が保有する不動産の想定価格や立地特性をつかんでおくなど、予習しておくことの重要性はお伝えしたとおりです。
予習したうえでいよいよ不動産業者に査定を依頼することになりますが、その際にも注意が必要です。複数の不動産業者に査定を依頼すると、それぞれの会社から査定価格が提示されます。しかし、その査定価格は実際に売れる金額とは限りません。
中古車の買い取りとは異なり、不動産では多くの場合その不動産業者が買い取るわけではなく「その金額ならきっと買ってくれる人がいるはず」という価格が査定金額です。
不動産業者は、表向きでは想定される販売価格を査定額として提示します。しかし、多くの不動産業者はこの段階では「できれば自社と一般媒介契約ではなく専属専任か専任で媒介契約を結んでいただきたい」と考えています。
専属専任、あるいは専任での媒介契約を獲得できれば、少なくとも3カ月程度の契約期間中は他社に先を越されることなく売却活動を独占して引き受けることができるからです(媒介契約の種類については後述します)。
そのため、とにかく専属専任か専任の媒介契約を獲得するため「高く売ります」「自分の会社に任せていただければ高く売れます」と見せかけるケースが少なからず見受けられます。
不動産業者から査定金額の提示を受ける際には、予習しておいたことを念頭に、想定価格との差が生じた場合はなぜその差が生じるのかの説明を受けることが重要です。
またひと言で査定といっても、机上だけで行う査定と、実際に現地を確認して行う査定があります。机上査定のほうが、訪問査定よりも高めに出るケースが多いと考えられます。
机上査定では、インターネットや最低限の役所調査などだけで査定します。実際に物件を見ると、価格設定上のマイナスポイントが見つかるケースが少なくないためです。敷地の傾斜や隣地との境界の状況、周辺環境など、机上では読み取れないことも少なくありません。建物の維持管理状態、内外装の仕様なども同様です。
必ず下がってしまうというわけではありませんが、あらかじめ査定方法によって価格に差が出る可能性があることは理解しておきましょう。
売却戦略の説明を受ける
もちろん査定額どおり、あるいはそれ以上の金額で売れることもあります。大切なのは売却戦略です。不動産会社と媒介契約を結んだ後、不動産会社はその物件の売却情報を指定流通機構(REINS=レインズ)に定められた期限以内に掲載します(一般媒介契約の場合、不動産業者は指定流通機構への掲載義務はありません)。
当然のその段階では建物付きで売るか、更地で売るかなど、どのような状態で売却するかを決めている必要があります。また、いくらで売り出すかが重要になります。
売却物件の情報を公開する際に提示する価格は、いわゆる「売却希望価格」です。売却物件の情報とともに価格を公開すると、それ以上の価格で売れることはありません。では、高めの価格を表示すればいいかというとそうともいえません。
とにかく早く売却して現金化したい事情がある場合には、売却希望価格を周辺相場より安めに設定することも選択肢ですが、一般的には「できれば高く売りたい」と考える方が多いと思います。
特に地元の不動産業者は、周辺で売りに出される物件の相場について熟知しています。周辺相場より大幅に高く設定してしまうと見向きもされない状態になり「この価格では簡単には買い手は付かないだろうから、いずれ値下げするだろう」と思われてしまいます。
あらかじめ提示された査定を元に、売却想定価格を想定し、値引き要請などがあることも想定しながら、価格適度な範囲で価格設定することが重要になります(どの程度が適正な範囲かは一概にはいえませんが、2割増しでは高すぎるといえるでしょう)。
予習しておいた金額と査定額の違いについて納得し、各不動産業者の売却戦略を聞いたうえで、納得できる業者と媒介契約を締結することになります。
媒介契約の種類
不動産業者と締結する媒介契約には以下の3種類があります。
・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約
一般媒介契約では売主は複数の不動産業者と媒介契約を結ぶことができます。一見、競争原理が働いてより高く売却できそうに感じるかもしれません。しかし、専属専任や専任の媒介契約でも売主にもメリットがあります。
不動産の媒介(仲介)によって発生する仲介手数料は成功報酬です。売却活動にはチラシの作成配布費や、ポータルサイトへの掲載手数料などもかかります。
内覧希望があれば、人を付けてご案内します。人を配置して「オープンハウス(内覧会)」を開催することもあるでしょう。しかし、自社で買主を見つけられなければ報酬を受け取ることはできません。
一般媒介契約では他社に先を越され、まったく仲介手数料や契約履行に伴う費用を受領できない可能性があるため、売却活動に費用や時間を大きく割くことが難しくなります。専属専任か専任の媒介契約を締結したほうが、不動産業者も一定の費用をかけてでもなんとか買主を見つけようと頑張るでしょう。
不動産業者は売主と「専属専任」「専任」の媒介契約を結んだ際には、先述のように指定流通機構の「レインズ」に物件情報を掲載する義務があります。「レインズ」は「不動産業者間の情報サイト」であり、すべての不動産取引業者が閲覧できます。
本当に売主の立場に立ち、良い条件で売るために競争原理を働かせるならば、むしろ一般媒介契約ではなく、専任や専属専任媒介契約のほうが広く買主を探すことができるといえます。
まとめ
査定の依頼から媒介契約までを行う際に、事前に理解しておくべきことをお伝えしてきました。不動産はどれもが「唯一無二」のものであり、それぞれに個性があります。価格設定は不動産業者としても腕の見せどころともいえます。
しかし、一部の不動産業者は媒介契約を結ぶことを重視し、高めの査定を提示する場合があります。すると、媒介契約後に非現実的な価格設定で売り出し、なかなか売れず、売主に値下げの打診を繰り返し、結局、売却に時間がかかるとともに、当初提示された査定金額を大幅に下回る金額になってしまうということにもなりかねません。
売却戦略は不動産業者から根拠とともに提案され、売主もそれに納得したうえで実行する必要があり、そのためには売主側でも事前の「予習」が必要だといえます。
高額になる不動産の売却。安心して任せられる不動産業者を選ぶためにも、こうしたひと手間を惜しまないことが重要です。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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