「国勢調査」に回答すると何か得することあるの?
ファイナンシャルフィールド / 2020年10月7日 3時0分
令和2(2020)年9月14日から、日本に住むすべての人と世帯を対象に「国勢調査」が始まりました。自宅に調査書類が届いた方も多いでしょう。
忙しい時間を割いてまで必ず回答をしなければならないのか、だとすれば私たちの生活にどんなメリットがあるのか、気になるところです。
「国勢調査」の実態を知り、時間を割いて調査提供すると私たちにも何か利があるのか、調査結果をうまく利用するためにはどうすればよいのか、を考えていきましょう。
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「国勢調査」はそもそも何のためにあるのか
この調査は総務局統計局により5年に一度行うもので、日本に住むすべての人(外国人を含む)と世帯が対象になっています。第1回目の調査は大正9(1920)年に行われ、今回の調査は21回目で、実施から100年の節目の年でもあります。
調査の目的は、国および地方公共団体が行う各種行政施策(生活環境の改善や防災計画など)のために、基礎資料を得ることです。つまり、私たち情報の提供者からすれば、われわれの生活に欠かせない行政の施策に役立てるための情報提供、ということになります。
調査期日は令和2(2020)年10月1日現在で、回答期間はインターネットも調査票(紙)も、ともに10月7日(水)です。7日までに回答が確認できない人に対しては、10月8日(木)~10月20日(火)に調査員が回答のお願いに来るとされています。統計法では、正確な統計を作成するために、調査への解答は義務(報告義務)としています。
世帯の場合は、世帯主1人が回答すればよく、全16問、所要時間10分程度とされていますので、できれば期限までに協力したほうが手間は少なそうです。
回答項目は、以下のとおりです。
■世帯員に関する事項(15項目)
「氏名」「男女の別」「出生の年月」「世帯主との続柄」「配偶の関係」「国籍」「現在の住居における居住期間」「5年前の住居の所在地」「在学、卒業等教育の状況」「就業状態」「所属の事業所の名称及び事業の種類」「仕事の種類」「従業上の地位」「従業地または通学地」「従業地または通学地までの利用交通手段」
■世帯に関する事項(4項目)
「世帯の種類」「世帯員の数」「住居の種類」「住宅の建て方」
国勢調査からわかること
調査開始の大正9(1920)年から100年という長期にわたり推移がわかることは、この調査の良い点といえます。前回の平成27(2015)年調査結果からは、例えば下記のようなことがわかります。
■人口の推移
平成27(2015)年調査時の日本の人口は1億2709万4745人です。6000万人に満たなかった大正9年の調査開始以来、初めての人口減少で、平成22(2010)年と比較すると96万2607人の減少となりました。少子化の影響で、今後のわが国の経済成長にも影響がおよぶことが推測されます。
■諸外国と比較したわが国の高齢化
平成27(2015)年のわが国の65歳以上人口の割合は、26.6%と4人に1人以上となっています。諸外国と比べて上昇のスピードも急速になっていることから、高齢化社会問題は他国の前例がないため、わが国独自に解決法を見つけていかなくてはなりません。
出典:総務省統計局「国勢調査2020総合サイト」
■人口増加県
国民全体の人口は減る一方で、平成22(2010)年から27(2015)年までの人口増加県は8都県あります。沖縄県が増加率は2.9%と最も高く、次いで東京都が2.7%、埼玉県および愛知県が1.0%などとなっています。人口増加県内では、地域によっては不動産を買っても価格が暴落しにくい可能性があるかもしれません。
■世帯の構成状況推移
一般世帯のうち平成12(2000)年は「夫婦と子どもから成る世帯」(31.9%)が最も多くなっていましたが、平成27(2015)年は「単独世帯」(34.6%)が最も多く、一般世帯の3分の1以上となっています。ライフスタイルの多様化が進んでいるので、それぞれのライフプランに合わせたお金の使い方から、将来に必要な老後資金を計算する重要性が見えてきます。
■男女別未婚率の推移
平成27(2015)年の25〜34歳人口の「未婚率」を男女別に見ると、男性59.0%、女性47.0%で、男女ともに調査開始以来最も高くなっています。前述の単身世帯増加の原因にもなっていることが考えられます。
■女性の労働力率(M字カーブ)の推移
女性の労働力率の折れ線グラフは、アルファベットのMと形状に似ていることから、M字カーブと呼ばれます。出産育児期などの年代に働く人がいったん減り、育児が落ち着いた時期に再び増えることで、過去にはグラフがMの形状になっていました。
ところが、男女雇用機会均等法が施行される直前の昭和60(1985)年と平成27(2015)年を比較すると、M字カーブの底は、昭和60年は30〜34歳でしたが、平成27年には35〜39歳になり、Mの形状も以前ほど顕著ではなく、緩やかになってきました。
これは、女性の出産・育児の年齢が上がっていることや、働き続ける女性が増えていることを表しています。働く女性にとっては、今後も働きやすい環境が整っていくことが期待されます。
調査結果を利用し将来を予測して、生活に生かす
調査回答しただけでは、何もわかりません。総務省統計局に集められた情報は、独立行政法人統計センターで集計されます。その後公表されるまでにしばらく時間がかかりますが、必ず公開されますので、その情報を積極的に自分で探してみることが大切です。
なぜなら、国勢調査は現時点での日本の状態を表す診断書のようなもので、その情報から将来へ向けてのヒントが得られる可能性があるからです。
例えば、人口が現在どれくらいで、将来的にはどうなる傾向にあるのか、少子高齢化傾向がこのまま続くと仮定すれば、年金を受け取る年齢は先送りになったり、高齢になっても働ける社会になったりしていくことも考えられます。年金受給額も減る可能性があり、人口増加県では、高齢者施設も満員で入りにくくなるかもしれません。
女性が働くことが当たり前となる社会では、男女の賃金格差が縮小したり、家事代行サービスが発展する可能性があるかもしれません。
まとめ
せっかく貴重な時間を割いて記入する「国勢調査」ですので、国や地方公共団体だけが施策を考えるために利用するのではなく、自らも調査結果から今後の日本の未来を思い描いて、利用してみてはいかがでしょうか。
今後の生活で迷った時や、資産運用の方針を決める時の判断材料にできる可能性があります。
(参照)総務省統計局 国勢調査2020総合サイト「3.65歳以上の割合の推移−諸外国との比較(1950年〜2015年)」
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
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