あなたは増えつつある老後の認知症に備えてますか? そんな中で注目されている家族信託(民事信託)をご紹介します
ファイナンシャルフィールド / 2020年10月7日 8時30分
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日本は世界に誇れる長寿国ではありますが、良いことばかりではありません。平均寿命が延びるにしたがって、認知症になる人の数も大幅に増えています。厚生労働省によると、2025年には認知症になる人の数は675万人~730万人、高齢者の割合でいうと19.0%~20.6%の人が認知症になると推計されています(※)。つまり高齢者の5人に1人は認知症になると予測されているのです。
認知症になると、銀行でお金を下ろすことも、老人ホームに入るための契約もできなくなります。このような場合には、成年後見制度などで後見人(家庭裁判所で任命した弁護士や司法書士などがなる場合が多い)が代理で行うことができますが、制度が複雑で手続きが煩雑な上、亡くなるまで毎月数万円の費用が発生するため、できれば認知症になる前に対策を打ちたいものです。
そこで最近注目されているのが、費用も比較的低く抑えられる家族信託(民事信託)による認知症対策です。今回は、この認知症に備えての家族信託を簡単にご紹介します。
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家族信託の仕組み
家族信託とは、家族の者や信頼できる人(または法人)に自分の財産を預けて管理・運用してもらい、そこから得られる利益があれば受け取り、将来自分が亡くなるときには財産をどうするかも決めておける財産管理の方法です。
財産の管理・運用を委託する人を「委託者」、財産の管理・運用を任された人を「受託者」、利益を受け取る人を「受益者」といいます。
一般的には、自分が「委託者」と「受益者」になり、子どもが「受託者」になります。子どもがいない場合などでは、信頼できる弁護士や司法書士などに「受託者」を依頼するか、信託銀行を「受託者」にする方法もありますが、どちらも財産を管理するのに費用がかかります。家族信託の仕組みを図で表すと以下のようになります。
図表1 家族信託の仕組み(筆者作成)
家族信託のメリットとデメリット
家族信託のメリットを列挙します。
1. 元気なうちに子や信頼できる人(法人)に財産の管理と運用を任せ、亡くなったときに財産をどうするかまで決めておけるので、安心できる。
2. 認知症になっても銀行から預金が引き出せなかったり、不動産の売却契約ができなくなったりする心配がない。
3. 二次相続以降の承継先まで決めておくことができるなど、遺言よりも柔軟な財産承継ができる。
4. 成年後見制度に比べて柔軟な財産の管理と運用ができる。
家族信託のデメリットも列挙します。
1. 子などの相続人が複数人いる場合では、1人を受託者にすることで財産分与が偏らないように、家族会議を開いて相続人の間で合意形成する必要がある。
2. 委託者が認知症などになった場合、受託者が財産を使い込まないかなど、財産管理と運用を監視・監督する必要がある。
家族信託を契約するには
家族信託を契約するためには、司法書士などに信託契約の手続きを依頼しなければなりません。また、信託契約を結ぶ前に司法書士などとよく相談して、(1)誰を受託者にするか、(2)他の相続人とは合意ができているか、(3)信託財産の範囲はどこまでにするか、(4)相続時の遺産分割をどうするか、など事前の取り決めをしておくことが重要になります。
信託契約の手続きにかかる費用は、司法書士などへの報酬として一般的には50万円~100万円程度がかかりますが、信託する財産額に応じて増えますので確認が必要です。それに公証人への費用や信託財産に不動産が含まれる場合の登録免許税、印紙代、郵便代などの実費がかかります。
終わりに
誰もが認知症になりたいとは思っていません。しかし、平均寿命が延びて超高齢化社会になった日本においては、認知症への備えを考えておくべきです。そのための手段として、家族信託という制度は最も有力な候補だと思います。
出典
(※)厚生労働省老健局 認知症施策の総合的な推進について(参考資料)
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)
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