相続対策は大丈夫?最近よく耳にする「家族信託」ってどんなもの?
ファイナンシャルフィールド / 2020年10月13日 10時0分
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相続や認知症など、シニアにとって気になるワードはいくつかあります。その中で、耳にすることが増えた「家族信託」。関係があるのは、事業をしている人や投資用不動産を持っている人、あるいは相続財産の多い人ではないの? と思われがちですが、身近な存在になりつつあります。
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相続対策は万全、生きている間の対策はできていますか
終活をする中で一番気になるのは相続、という方が多いようです。相続対策といえば
(1)相続税対策(節税)
(2)相続税の納税資金対策
(3)争族対策(遺産分割をめぐって相続人同士が争うことを未然に防ぐ)
が主なものです。
これらを解決するために、遺言書の作成が推奨されてきました。元気なうちに(認知症になる前に、つまり判断能力のあるうちに)遺言書を残すことで、残された家族は安心感が得られます。これは自分が亡くなった後、残された家族のための対策です。
では生前(自分が生きている間)の対策はいかがでしょう。「生前の対策は自分でできるから大丈夫、迷惑をかけないように準備してきた」という方も多いですが、そこに立ちはだかるのが認知症の心配です。
厚生労働省によると、2019年日本の平均寿命は男性81.41歳 女性87.45歳です。寿命と健康寿命の間には、男性約8年間、女性約12年間の隔たりがあります。生命保険文化センターによると、平均的な介護期間は54.5ヶ月(4年7ヶ月)です。この期間の中で認知症を発症してしまったら、「不動産の売却ができない」「まとまった預金が引き出せない」等々といった行為ができなくなります。
老後資金として預貯金は十分あるにもかかわらず、介護施設の入居費用が引き出せない、介護費用がかさんできたので自宅を担保に借り入れをしたいのにできない、といった事態になってしまうのです。
「備えて安心」は保険と似ている
家族信託は、家族間で行う信託契約です。例えば父を委託者(兼受益者)、息子を受託者として信託契約を結びます。聞きなれない言葉なので、以下のように置き換えると少し分かりやすくなります。
委託者:財産の持ち主(財産を預けて管理などをしてもらう人)
受託者:財産を託される人(管理や処分などを任される人)
受益者:利益を受け取る人(預けた財産から生じた利益を得る人)
事例の場合は以下のようになります。
(1)信託すると財産の名義は息子に換わる
(2)名義は換わるが贈与とは異なり贈与税は発生しない
(3)信託財産からもたらされる利益は父親が受け取る
(4)信託財産の管理や処分をする権利は息子に移る
(5)信託できる財産は不動産・有価証券・預貯金などで、信託するものを選ぶことができる
家族信託の契約をしておくことで、息子が預貯金を引き出すことや不動産の管理を担えますので、父親の判断能力が低下して財産管理が難しくなっても安心です。介護が長引くと、精神的にも経済的にも負担が大きくなります。親には「子どもに負担をかけたくない」という気持ちがあります。
一方「介護はしたいが、教育費や住宅ローンの返済があり経済的に余裕がない」という子どもの事情もくむ必要があります。家族間で話し合い、あらかじめ家族信託の契約をしておくと、お互いの気持ちも整理することができます。
先日、某司法書士法人の主催するセミナーに参加する機会がありました。その中で家族信託は保険商品と似ているという話があり、とても納得しました。生命保険は、「もしも」起きるとダメージが大きく、補填しきれない事故に備えるものです。例えば「がん保険」。将来、がんに罹患するか否かは分かりません。でももし罹患した場合、治療に関わる費用だけでなく、通常の仕事ができなくなるリスクもあります。
それらに備えて保険に加入します。がんにならなければ不要の保険料かもしれませんが、加入することで、経済的な心配を拭うことができます。家族信託も同様に考えられるというのです。認知症になるか否かは分かりません。ですが事前に備えておくことで、「もしも」の対策になります。「備えて安心」ということで似ています。
高齢者白書(2017年度)によると、2012年は認知症患者数が65歳以上の高齢者人口の15%でした。それが2025年になると20%になると推計されています。5人に1人が認知症になる時代が来るのなら、それなりの備えはしておく必要がありそうです。生命保険と同様で、すべての人に必要なものではありませんが、一考の価値はあると思います。今後、家族信託が身近な存在になるのではないでしょうか
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
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