日本は借金大国なのに、金利や物価が全然上がらないのはどうして?
ファイナンシャルフィールド / 2020年10月19日 9時0分
日本は借金大国といわれています。「これ以上国債を発行したら金利が急激に上昇し、ハイパーインフレになる!」といわれて相当久しいですが、実際にはなっていません。
資産運用をする際は、相場の変動要因についてある程度知っておく必要がありますが、今回は国債を起点に金利と物価について考えていきたいと思います。
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国債価格が上がると金利はどうなる?
教科書どおりに結論をいうと、国債価格と金利・物価の関係は次のようになります。
〇国債価格と金利・物価の関係
〔国債価格〕 | 〔金利〕 | 〔物価〕 |
---|---|---|
上昇 | 下落 | 下落 |
下落 | 上昇 | 上昇 |
※筆者作成
表を見ると、先ほどの「これ以上国債を発行したら金利が急激に上昇し、ハイパーインフレになる!」というのは、確かに教科書に倣っているということができるでしょう。これについて理屈で説明を加えるなら、まず国債価格と金利の関係性を理解する必要があります。
国債は国が発行する借用証書のようなものです。国が資金の借り手、国民や企業などが資金の貸し手になりますが、貸し手からすると、ただでお金を貸してもうまみがないため金利を付けて貸したいと思います。この金利が国債の利回りですが、貸し手が多いと利回り(金利)は下がり、逆に貸し手が少ないと利回り(金利)は上がります。
それはそうですよね。貸してくれる人が少ないのは金利といううまみが少ないからで、この場合、借り手としては金利を上げなければお金を貸してくれません。
逆に貸してくれる人が多い場合、借り手がそれほど借りる必要がないと考えているなら、わざわざ金利を上げようとはせず、むしろたくさんの人がお金を貸してくれるため金利を下げようとします。国債価格と金利の関係は、大ざっぱにいうとこのように成り立っています。
つまり、国債価格と金利には、「国債価格が上昇すれば、金利は下落する」、「国債価格が下落すれば、金利は上昇する」という逆相関の関係が存在するということができます。
金利が上がると物価はどうなる?
それでは、金利と物価の間にはどのような関係性があるのでしょうか。前述の表にあるように、金利と物価には「金利が下がると物価も下がる」、「金利が上がると物価も上がる」という正の関係が成り立っています。この関係性を理解する場合、金利を景気と絡めて考えてみると分かりやすくなります。
景気と金利の関係性は単純です。
●これから景気が悪くなる⇒金利は下落する
●これから景気が良くなる⇒金利は上昇する
そして、景気と物価について見てみると、一般的に次のような関係性があります。
●これから景気が悪くなる⇒物価は下落する
●これから景気が良くなる⇒物価は上昇する
このようなことから、「金利が下がると物価も下がる」、「金利が上がると物価も上がる」という関係性が存在していることが分かります。
前述した国債価格と国債利回りの関係においては、国債の仕組み上、必ず逆相関の関係にありますが、「景気と金利」、「景気と物価」、「金利と物価」のそれぞれの関係性においては、あくまでも傾向として捉えるようにしてください。
金利がずっと上がらないのはなぜ?
このように見ていくと、「国債価格が上昇すると金利・物価は下落する」、「国債価格が下落すると金利・物価は上昇する」とまとめられますが、これは実をいうと、教科書に即した理屈で、実際は必ずしもそうはなっていません。
冒頭の「これ以上国債を発行したら金利が急激に上昇し、ハイパーインフレになる!」を見てもわかるように、これまで国が国債をたくさん発行し、累計額が約1000兆円にも上っているにもかかわらず、金利はほぼゼロ金利ですし、物価も長年低水準で推移しています。教科書どおりの理屈でいうと、国債をたくさん発行し、国債価格が下落(国債が売られている状況と等しい現象)すると、金利や物価は上がっていかなければおかしくなります。
しかし現実は、このとおりにはなってはいません。この理由は、発行している国債を日銀が買い取っているからです。新聞やニュースなどでよく耳にする「金融緩和政策」という言葉がありますが、この政策の一つが日銀による国債の買い取りです。
国は国債を発行します。このとき、国債の量が増えるため国債価格は下落し、利回り(金利)は上昇します。しかし、その裏で日銀が国債を買い取っているため、この関係性が打ち消され、むしろ買い取る量が多いため、国債価格が上昇し、利回り(金利)が下落しているという現象が何年も続いています。
まとめ
国債の利回りは、私たちが普段使っている金利という言葉のニュアンスとは少し異なります。簡単にいうと、国債の利回りをベースに日常の金利が成り立っているわけですが、現在、資産運用を行う場合、国債と金利の関係性が教科書どおりにはなっておらず、真逆になっているため、一般常識的に金利について解釈してしまうと判断を間違うもとになってしまいます。
相場の変動要因を知るということは、変動要因の関係性を知るということです。慣れないうちは難しいと思うかもしれませんが、実際に起こっていることと教科書でいわれていることが一致していないと思ったとき、「なんでだろう」と疑問を持って調べてみると、結構、簡単にその答えが見つかることがあります。
コロナショック後のマーケットは、定石どおりの動きになっているとは必ずしもいえません。求められているのはなぜそうなっているかを自分なりに考えてみることのように思います。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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