住宅ローン完済年齢上昇、老後貧困にならないために
ファイナンシャルフィールド / 2020年10月21日 8時30分
![住宅ローン完済年齢上昇、老後貧困にならないために](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_89563_0-small.jpg)
10月5日の日経新聞の朝刊1面に「住宅ローン完済年齢上昇 平均73歳 年金生活不安定に 審査、老後リスク吟味必要」という記事が掲載されました。
住宅購入時には返済可能と思っていても、当初のプランが崩れると老後の生活資金に困窮する場合も。今起きていることを確認するとともに、これから住宅を購入する人が気をつけるべきこと、すでに購入した人は改めて今後の資金計画を検証するヒントにしていただければと思います。
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住宅ローンの完済年齢が高齢化している
10月5日の日経新聞朝刊の記事によると、2020年度に住宅ローンを利用している人の返済完了時の平均年齢は73.1歳。2000年度と比べると5歳程度返済完了時の年齢は後ろにズレているとのこと。その原因を「住宅取得年齢の高齢化」「融資額増大」「返済期間の長期化」の3つとしています。
晩婚化による住宅取得年齢の高齢化
日本では少子高齢化が進行していますが、あわせて晩婚化、第一子出産年齢の高齢化なども進んでおり、その結果、住宅取得時期も遅くなる傾向が進んでいます。
一般的な住宅ローンは完済までの期間を最長35年、完済時の年齢が80歳未満まで設定できます。返済期間を長くすれば1回ごとの返済金額が少なく抑えられます。しかし、何かしらの資金手当てがのぞめないと(親からの相続や定年後も一定以上の収入が確保できる見込みなど)、80歳まで同じペースでローンの返済を続けることは難しいでしょう。
「住宅ローン控除」の功罪
現在「住宅ローン控除」によって、一定の条件の下、年末のローン残高の1%相当の税金が戻ってくる税制優遇策の恩恵を受けることができます。返済額が少なければ元本の減少が少なくなり、結果としてより多くの税金が戻ってくることになります。
税制優遇を最大限に活用しようとした結果、あえて返済期間を延ばし、住宅ローン控除が受けられる期間を経過した後に、一括返済で元本を減らす計画をすることも少なくありません。
私もそうした計画をおすすめすることがありますが、その際は一括返済のための返済資金を形成する計画まで検討します。住宅取得時期が遅れても、完済時期を遅らせないよう返済期間を短くするのが理想ですが、実際にはそう簡単にはいかない場合もあるでしょう。
将来困らないためには、普段の生活の中からしっかりと返済資金(月々の返済だけでなく、一括返済を考えている場合はその資金もあわせて)を確保する資金計画が必要になります。
定年延長などによって就労できる年齢も延びつつあります。会社によっては定年廃止などの動きもありますが、それでもある程度の年齢に達すると、収入が減少すると考えておく必要はあるでしょう。
「低金利」の功罪
空前の低金利、といわれるようになってかなりの時間がたっています。低金利の状況下では当然のことながら支払う金利が少なくなるため、結果として住宅取得のための予算をアップできます。低金利の結果として不動産価格が上昇したという見方もできます。
実際、近年の住宅取得価格は上昇傾向が続いてきました。特に都心部のマンションは、一般のサラリーマンが買うには少し厳しい価格帯に達していると考えられます。
その一方で、現在は共働き世帯が増えています。
子供がいる家庭では両親が働いている場合、子供を保育園などに預けるケースが多く、夕方には迎えに行く必要もあります。以前のように通勤に1時間半以上かかってしまうようなエリアに居を構えると、子供を保育園に迎えに行く時間に間に合わないため、必然的に会社の近くに住まざるを得ない。高くても現実的に考えればそうした立地でマイホームを探さざるを得なくなります。
コロナウイルス感染拡大の影響でテレワーク・リモートワークが定着しつつあります。夫婦どちらかが在宅で勤務できるように調整できれば、こうした課題が解決できる可能性も高まり、これまでは検討エリア外だった場所も、候補に入ってくるようになるかもしれません。
結果として、都心に近い、通勤時間の短いエリアで厳しい返済計画が必要な物件を購入するのではなく、余裕をもって返済できる予算で購入可能なエリアも、選択肢に加えることができるようになるかもしれません。
まとめ
今後もしばらくは低金利の状況は継続すると考えられますが、住宅ローンを返済し続ける期間ずっと維持されると考えるのはリスクがあります。特に最近は「変動金利」で借り入れるケースが増えています。
元本が少なくなれば利息も小さくなりますが、元本がまだ多い時に金利が上昇するような事態になれば、今後の返済計画はより厳しくなってしまう可能性も否定できません。
住宅を取得する際に、将来の実現可能な資金計画を検討しておくことの重要性が増しているといえます。
住宅購入の際には「今、無理なく返済できるか」だけではなく、「将来にわたって返済に無理はないか」ということを慎重に考えておく必要があります。
すでに住宅ローンの返済をしている人も、しっかり将来計画、返済計画を考えておきましょう。収入が減少してからリカバリーするのは非常に厳しいといえます。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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