個人事業主と法人。事業を行うにはどちらが有利か?
ファイナンシャルフィールド / 2020年11月12日 9時0分
読者の方の中にも、個人事業主の方がいらっしゃるかと思います。また、コロナ禍の影響で副業を認めるようになった企業も増えており、何か事業をやってみたいと考えている方もいらっしゃるのではないかと思います。
一般に事業を始めるときは大きく分けて、個人事業主としてやるか、株式会社などの法人組織を立ち上げてから行う方法があります。また、個人事業主の方が新たに会社を設立したという話も聞きます。
事業をやりたいと考えた場合、個人事業主として行った場合と法人として行った場合のどちらが有利なのでしょうか?
この記事では、個人事業主と法人を比較することにより、どちらがどれだけ有利かという点について解説してみたいと思います。
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個人事業主と法人の違い
法律は一般に自然人である個人に対して、権利義務を定めています。自然人(個人)以外に法律上で認められた団体や財産を「法人」といい、法律は法人に対しても権利義務を定めています。
会社を設立すると法人ができることになります。法律の定める個人に対する権利義務と法人に対する権利義務が異なっているので、事業を行うなら個人、法人のどちらが有利かという比較をする必要が出てくるのです。
事業を始めるなら、個人事業主と法人のどちらが有利か?
以下の表に事業を行う場合の個人事業主と法人の比較をまとめています。これをベースに個人事業主、法人それぞれの場合のメリット・デメリットについて説明してみたいと思います。
個人事業主と法人の比較
個人事業主 | 法人 | |
---|---|---|
開業にかかる費用 | 不要 | 株式会社で約25万円 (収入印紙代、定款作成費用、登録免許税など) |
開業にかかるスピード | 開業届を出すだけで すぐにスタート可 |
設立までに2週間程度が必要 |
資本金 | 不要 | 必要 |
会計・税務 | 会計帳簿が必要 | 税理士のサポートが必要 |
社会的信用 | 法人より低い | 社会的な信用が高い。 採用面でもメリットあり |
資金調達 | 不利 | 有利 |
雇用 | 不利 | 有利 |
社会保険 | 常時従業員5人未満の個人事業所は 加入義務なし(任意加入) |
社長1人でも加入義務あり |
決算期 | 12月31日で固定 | 任意の月を選択可能 |
税金 | 超過累進課税のため、 利益が大きくなると税率も増加 |
利益額にかかわらず 法人税率は一定のため、 利益が大きい場合には有利 |
赤字 | 年間赤字の場合、税金は0円。 繰越欠損は3年間可能 (青色申告の場合) |
年間赤字の場合でも、 法人住民税均等割7万円 (最低額)の支払いが必要。 繰越欠損は10年間可能 |
責任 | 全責任を個人で負う | 法人の財産の範囲内で責任を負う |
※筆者作成
個人事業主として事業を行う場合
●メリット
事業開始に資本金も手続きの費用もかからず、税務署に開業届を出すだけでスタートできるので、開業時の負担がほとんどない。従業員がいても4人以下なら社会保険に加入する必要がなく、社会保険料に関する事業主負担もない。
●デメリット
(1)法人に比べ、社会的信用が低い
銀行借入などの資金調達、従業員の採用では不利となる場合もある。
(2)税務
事業の利益に対して所得税が超過累進課税でかけられるので、利益が大きくなると税金が増える点で不利。繰越欠損は青色申告の場合は3年間可能だが、法人の9年間と比べると短い。
(3)責任とリスク
個人事業主は事業の責任を個人で全て負う必要があり、事業に失敗した場合、個人生活・家族に対して影響が及ぶ。
法人として事業を行う場合
基本的に個人事業主の場合の裏返しとなりますが、簡単に説明します。
●メリット
法人は個人事業主よりも社会的信用があるので、資金調達、雇用面で有利。税金の面では、法人税率はほぼ一定なので利益が大きくなっても税率が上がることはない。
事業の責任を法人の財産の範囲内で負うため、失敗した場合でも最悪、法人をつぶすことで対応可能。特に事業規模が大きくなった場合は、リスク管理の面からも法人の方が有利。
●デメリット
事業開始にあたり、資本金および手続きの費用が必要で、かつ設立までに2週間程度の時間がかかる。費用的にも投資が必要なので、見通しが立たない事業を始めるためにはリスクが大きい。
社長1人でも社会保険への加入義務があるので、社会保険料(法人負担分)を負担しなければならない。
まとめ
個人事業主と法人のメリット・デメリットの比較を行ってきました。個人事業主は、事業を始めるにあたっては費用も時間もかからず、開業しやすいのですが、事業規模が大きくなった場合は資金調達、採用、税務の面で不利です。また、事業の責任が個人に及ぶ可能性があります。
こうした点を踏まえると、まずは個人事業主として始めて、事業が大きくなったときに法人組織に切り替える(法人成りといいます)というのがよさそうとの結論になります。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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