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こんな基準で選ぶ人はいないと思いますが、文庫本に見られる意外な「コスパ」の差とは?

ファイナンシャルフィールド / 2020年12月4日 0時0分

こんな基準で選ぶ人はいないと思いますが、文庫本に見られる意外な「コスパ」の差とは?

以前から何度も書いていますが、商品の値段は【単価×量】で構成されています。同じクオリティーならば単価も同じくらい。そのため価格は量によって、少なければ安く、多ければ高くなるはずでしょう。
 
そう思っていましたが、あるモノで必ずしもそうなっていないケースがありました。どんなモノなのか、そしてどうしてなのでしょうか。

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街歩き型のカルチャー講座でのこと

きっかけは、あるカルチャー講座でした。コロナ禍のため教室での開催にはまだまだ制約も多いようですが、屋外の街歩き型などでは再開して盛況のものもあります。
 
こうした街歩き型講座で、有名な小説の舞台などを巡る企画がありました。武蔵小金井駅に集合して周辺を散策するもので、課題小説は『武蔵野夫人』(大岡昇平著)。講座主催者でもある新潮社の文庫本を事前に読んで参加するのです。
 
この講座はシリーズもので、次の課題小説は『檸檬』(梶井基次郎著)。著者がかつて住んだ麻布界隈を巡る内容でした。
 
この2冊の新潮文庫を買って比べてみると、ちょっとした違和感がありました。『武蔵野夫人』のほうが『檸檬』よりも価格が高いのです。こう書くと、それは前者のほうがぶ厚い(ページ数が多い)からと思われる方も多いことでしょう。
 
しかし、実態は逆です。整理しておくと次のようになります(いずれも新潮文庫の最新刷で、価格は税別。ページ数は本に付されたページ数の最終数字)。
 
『武蔵野夫人』 (価格) 520円 (ページ数) 281
『檸檬』      (価格) 430円 (ページ数) 350
 
こう書いてもあまり実感が湧きませんが、厚さはそれぞれ約1.0センチメートルと約1.4センチメートル。手に取ると明らかに違います。そしてページ単価(小数点以下第3位を四捨五入)を計算すると、約1.85円と約1.23円。『武蔵野夫人』は5割も割高です。
 
文庫本は単行本などに比べると、サイズが小さくて装丁や紙質も質素。そのため価格も安めに設定されています。また文庫本同士でも、写真などを上質紙にカラー印刷しているようなものは割高になることは感覚的に理解できますが、上記の2冊はいずれも文章だけの普通の文庫本なのです。
 

ポイントは、印税と発行部数

こうした点について新潮社のカルチャー講座の窓口に聞いてみたところ、次のようなコメントをもらえました。
 
◇著作権があると印税(通常、税別書籍価格の10%)がかかるため、高くなる。梶井基次郎(1932年没)は著作権が消滅しているが、大岡昇平(1988年没)は遺族に印税が支払われているはず。
◇発行部数も価格に影響する。たくさん作れば安価にできるが、少ない部数だと割高になる。
 
「印税」といっても税金ではなく、出版社などが支払う著作権使用料のことです。著作権は著作者が死亡してから「50年」を経過した年の12月31日まで存続する決まりでしたが、2018年12月30日から「70年」に延長されています。
 
10%分のコストが追加でかかるかどうか、400円から500円くらいの本では見た目の価格の印象にかなりの影響を与えるでしょう。
 
ついでに、たまたま手元にあった新潮文庫の本(いずれも近時購入したもの)で、文豪、夏目漱石の『三四郎』や漫画家、はるな檸檬のコミック・エッセイ『れもん、よむもん!』も加えてデータを比較してみると次のようになりました。
 
『武蔵野夫人』     (価格) 520円 (ページ数) 281 (ページ単価)約1.85円
『檸檬』         (価格) 430円 (ページ数) 350 (ページ単価)約1.23円
『三四郎』       (価格) 340円 (ページ数) 354 (ページ単価)約0.96円
『れもん、よむもん!』 (価格) 550円 (ページ数) 140 (ページ単価)約3.93円
 
一番下の作品だけ文章の多いマンガ仕立てで、紙も少し上質なものが使われています。『檸檬』と比較するためにあえて作品名や著者名がかぶっているものを選んだわけでもありませんが、ページ単価は4つの中では圧倒的に高額です。
 
一方、名作『三四郎』のページ単価の際立つ安価さは、先ほどの新潮社のコメントでとてもよく理解できますね。
 

まとめ

寒さに向かい、またコロナ禍の影響もまだまだあって、家で過ごす時間も多いでしょう。「読書の秋」の時季は過ぎましたが、読書の機会はこれからも少なくないと思われます。そんなとき、装丁や紙質はシンプルながら、文庫本は身近で割安で手軽な存在です。
 
本は興味や関心があるものから選び、ページ単価の高低で読む本を決めるような局面はないと思います。しかし、分厚い古典の名作でも意外なくらい割安に手に入る場合があることは、ちょっぴり覚えていてもよいでしょう。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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