「つみたてNISAをやりたい」って伝えたのに…運用報告書を見たらNISA口座で積立していた?
ファイナンシャルフィールド / 2020年12月8日 9時50分
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A子さんは、還暦を過ぎたばかりの女性です。お付き合いのある銀行でNISA口座を開設したA子さんは、そこで毎月分配型の投資信託を買って、毎月受け取る分配金を、定期預金で積み立てていきます。
知り合いのFPのBさんに「本当に分配金出ているの?」と聞かれ、Bさんに運用報告書を見てもらったら、なんと普通分配金がなく特別分配金のみを受け取っていた状態でした。定期預金の分、利益が出たと思っていたA子さんですが、実は損をしていたことを知ってがく然としました。
「利益のないときは分配金は出ないって、担当のCさんは言ったのに…」とA子さん。
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NISA口座では運用益非課税。でも、損したら?
NISA(少額投資非課税制度)は、現行、年間120万、5年間非課税で運用できる制度です。2023年までの制度ですが、2024年から2028年までの5年間新制度で延長し、1階は20万円までのつみたて投資、2階は102万円までの上場株式・投資信託と、2階建ての運用ができます。
投資信託に投資した場合、普通分配金と売却時の譲渡益は非課税ですが、他の口座(特定口座等)の利益や配当金等は損益通算ができません。損が出てもないものとみなされます。毎月分配金型の投資信託は、運用益が出ないときは元本を削って分配金を出します。元本を削って出すのが特別分配金ですが、そもそも非課税です。
また、毎月分配型の投資信託は、購入時の手数料や信託報酬の高いものが多く、その分投資金額に回せる金額が減ります。A子さんは、投資信託の運用報告書の見方をBさんから聞いて、儲かっていると思っていたのが、実際は元金が減っていることを知ります。
初心者向けの「つみたてNISA」を始める
BさんはA子さんに、つみたてNISAについての話をします。つみたてNISAは、長期・積立・分散投資で安定した資産形成を目指すもので、商品販売手数料がゼロで信託報酬が低い、頻繁に分配金が支払われないなど、法令上の条件を満たした投資信託です。
投資が初めてでも、商品選びに大きく失敗しません。非課税枠は年間40万円までで、最長20年間非課税で運用ができます。
ところでつみたてNISAと一般のNISAは、同じ年に両方はできません。A子さんは、年初NISA口座で買い付けをしたので、翌年からつみたてNISAを始めることにしました。どんどん目減りする投資信託を解約し、次の年の半ばに、「つみたてNISAを始めるのだけれど…」と連絡がありました。
お付き合いのため、つみたてNISAを行う金融機関は変えられません。BさんはA子さんにその金融機関で取り扱う商品の中で選び方を説明しました。その後、「つみたてNISAを始めました」の報告を受けます。このときは、これで一安心だったのですが…。
つみたてNISAを始めたはずなのに…
2年ほど後に、またまたBさんの元にA子さんから「ちょっと外貨建て保険について聞いてもいい?」と相談が入ります。「前に話したつみたてNISAを止めて、この外貨建て保険を始めようかと思うのだけど…」とA子さんは続けます。
BさんがA子さんから渡された運用報告書を見たところ、驚がくの事実が発覚します。A子さんは、「つみたてNISA」ではなく、NISA口座で積立をしていました。「つみたてNISAにしたいって、担当に言ったのに…」とA子さん。
毎月分配型ではありませんが、毎月買う度に購入手数料がかかり、信託報酬も高く、解約時に信託財産留保額もかかる商品を買っていたのです。手数料が高いのが悪いとは一概には言えません。手数料が高くても、リターンが良ければ問題はありません。資産残高や値動きなど総合的に見て判断します。
しかし、BさんはA子さんに言いました。「投資信託の選び方を説明したでしょう。私だったら、その投資信託は買わない」さらにBさんは続けます。「契約時に気がつかなかったの? 契約書、ちゃんと読んで契約したの?」どうやら、銀行の担当者を信頼して、言われるままに署名・捺印をしたとのこと。
国民生活センターにも、同様に「定期預金を頼んだのに外貨建て保険を契約させられていたと」いう相談が寄せられています。「よく分からないから…」と担当者に任せたら、客の良いようにではなく、担当者の良いようにされてしまうこともあります。
「つみたてNISAにしたいって言ったのに…」と言っても、書面に署名・捺印されているので、正しい手続きをとったことになっています。最低限、署名・捺印の前に「自分が何に契約するのか、ちゃんと読む」こと、これだけは気をつけましょう。
(参考・引用)
金融庁「令和2年度税制改正について」
金融庁「あなたとNISA」
国民生活センター「令和2年2月20日 報道発表資料 外貨建て生命保険の相談が増加しています!」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者
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