令和4年4月から変わる年金の繰上げ・繰下げ、変更点は?(2)繰上げ
ファイナンシャルフィールド / 2020年12月9日 22時50分
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現在、公的年金の受給開始は原則として65歳からですが、その時期を現行制度では前後5年間変更できます。先に受給開始することを繰上げ、後から受給開始することを繰下げといいます。単純に受給開始時期をずらすだけでは、不公平が生じますので、繰上げた場合には、一定の割合で年金額が減額されますし、繰下げた場合には年金額は増額されます。
年金の制度改正により、この繰上げ、繰下げ受給の制度について令和4年4月から変更される予定です。
本稿では、改正後の「繰上げ」がどのような制度であるかを解説し、何に着目して考えるかという点と、制度変更後(実は、繰上げも変更されます)はどうなるかについて、解説します。
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繰上げについて(どれくらいで、総額減となるか)
公的年金は、受給開始時期を1カ月単位で繰下げて受給することが可能です。現行制度では、繰上げられる期間は、最大5年間です。繰上げた場合には、受給できる年金が1カ月あたり0.5%減額されます。5年間だと、60カ月になりますので、60×0.5%=30%ですので、30%減額した年金を受給することとなります。
ただし、繰上げの場合は、先に年金を受け取っているので、受領する年金の総額が逆転するのは、一定期間、長生きをした場合です。仮に、1カ月繰上げた場合は、0.5%(=0.005)減るのですが、先にもらった1カ月分を取り崩すには、1÷0.005=200カ月かかります。200を12で割ると16.666ですので、おおよそ17年かかることになります。
1年ないしは5年繰上げた場合はどうでしょうか? 1年の場合は、先にもらった期間が12カ月、減額される率は6%(12×0.5%)ですし、5年の場合は、先にもらった期間が60カ月、減額されるのが30%(60×0.5%)となります。
確かに、繰上げる期間を増やすことによって、月数だけ減額率は増えますが、同じだけ先にもらえる月数も増えます。結局、どのくらいの期間で、先にもらった分を取り崩すのかと考える際には、繰下げる期間は関係ありません。1カ月あたりの減額率0.5%に依存し約17年です。
繰上げについて(健康寿命とのかねあい、現行制度)
ここでは、繰下げと同様に、その逆を考えてみます。逆転までは、先ほど考察した単純な例での計算では、17年かかるということでした。仮に、現行制度で一番手前に繰上げた場合(5年繰上げ)を見てみましょう。
この場合、30%年金額は減額されますが、実際に、受給総額が繰上げずに受け続けた場合と比較して、下回るタイミングは17年後ですので、60歳から受給開始した17年後の77歳に逆転することになります。
次に、何と比較するか? ですが、先ほどの繰下げの場合は、長生きできるかがポイントとなるので寿命(余命)と比較してみました。
一方で、繰上げを考慮するケースは、もっと切実な事情も十分にありえますが、ここでは、キャッシュフローの観点で先に使いたいと考える人、ということは高齢であってもある程度普通に動ける人と考えました。元気な間に逆転しなければいいじゃないという発想です。
そこで、日本人の健康寿命(日常生活に制限のない期間)で比較してみます。少し古い2016年のデータですが、男性72.14歳 女性74.79 歳です(内閣府の平成30年版高齢社会白書より)。これをベースに考えると、長生きする女性でも、健康寿命の間には逆転されないことになります。
こう考えると、一見繰上げも合理的に見えるかもしれません。しかしながら、それよりもずっと長生きするとした場合に、減額した金額で本当に生活を賄えるのか、十分な検討をしておくことが重要ですし、また、繰上げに伴って一定の制度上の制約がありますので、その点も確認しておくことが必要です。
繰下げについて(寿命とのかねあい、新制度)
さて、制度改正において、繰下げについては、増額率は変わらず、繰下げ可能期間が延長されました。一方で、同じ改正で繰上げについては、繰上げ可能期間が延長されることはなく、そのかわり、減額率が縮小される予定です。(0.5%⇒0.4%)
減額率が変わると、逆転のタイミングも変わります。1÷0.004=250(カ月)。それを12で割って20.833...≒約21年です。現行制度よりも4年伸びることとなり、男性の場合には、健康寿命どころか、平均寿命近く(81歳)まで大丈夫となりました。
まとめ
繰下げ、繰上げはどちらも、将来のキャッシュフロー(お金の流れ)を変更するもので、繰下げによってより多くもらえると考えるのは早計ですし、繰上げで先にもらって健康寿命をすぎれば、少なくてもよいと割り切る、というのも少し楽観的すぎると思われます。
年金の改正により、選択の幅はより広がりますので、自身の健康状態、現在また将来の収入、年金見込み額を計算等して、将来的にどのようなキャッシュフローになるかを考え、それを調整する道具として使える制度ではないかと考えます。
執筆者:堀内教夫
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