デジタル遺品は明示する工夫を。家族が知らないと問題に
ファイナンシャルフィールド / 2020年12月10日 9時50分
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近年では多くの高齢者がパソコン、スマホを利用しているため、所有する金融資産などをパソコンなどで管理することが多くなっています。
高齢になり本人がもし亡くなったりすると、金融資産をデジタル化して保有していると、残された家族が具体的な中身を把握できなくなり、非常に大変な事態になります。
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亡くなった親のパスワードがわからない
高齢の父親がパソコンやスマホを利用し、ネットで株取引をしていることは承知していたが、突然亡くなったために、使用しているパソコンのパスワードがわからず取引の実態を知るのに苦労した、という話はよく聞きます。
ネットを利用し、ネットバンキングや株取引をどの程度していたか、電子書籍の購入や動画配信など有料のサービスの提供を受けていたか、電子マネーによるスマホ決済を利用していたかなど、具体的にはわからないケースが多いと思います。
相続の観点からは、何よりもネット関連で金融資産がどのくらい所有していたかを調べる必要があります。最近では、65歳以上の高齢者が所有するインターネット口座の数が急速に増えており、取引の実態を把握ができない際は、困った事態になります。
特にパソコンなどデジタル機器に関して、家族に利用していること自体を伝えていない、知らせていたとしても機器のロックを解除するパスワードや利用IDを秘密にしているケースがかなりあります。もし本人が亡くなると、家族は非常に困った事態になります。
資金残高や取引内容をどう調べる
家族がパスワードなどを知らない場合は、故人の金融資産の把握が非常に難しくなるばかりでなく、遺産総額がなかなかわからず、相続人による遺産分割の協議にも影響してきます。相続額が確定してない以上、どの遺産を誰が引き継ぐのかが決まらず、相続税の申告期限が来てしまいます。申告期限をすぎると加算税も発生します。
プラスの資産だけならともかく、マイナスの資産(負債)も考慮しなければなりません。
例えば、故人がFX取引(外国為替証拠金取引)や、仮想通貨などリスク度の高い商品に手を出していると、思わぬ負債が死後発生している可能性があります。本人にかなりの負債がある、家族に知られたくない過去の記録や写真データなどがある、などの場合は、意識的にロックをかけ秘密にする傾向があります。
また、ネットの有料サービスを契約していると、本人が亡くなり利用しなくなった後でも、毎月決まった金額が自動的に引き落とされていきます。またすでに電子マネーとして一度入金している分についても、本人が出金できずに、親族が返金を求める場合は、かなりの手間がかかります。長い間、残高として残されるかもしれません。
トラブルを防ぐための心構え
こうしたトラブルを防ぐための対策はあるでしょうか。まず高齢者自身が「自分に万が一」のことを想定して、所有する金融資産を始め、デジタルデータの概要を家族に伝えておくことが一番です。家族の側でも、それとなく実情を伝えてほしいことを知らせ、なるべく聞き出しておきたいものです。
具体的な数字はともかく、ネットバンキング、ネット株取引など概要を伝えると同時に、その内容を一覧表化して、家族がわかるようにしておくことです。紙にプリントし、金庫などに保管しておくのも一考です。
その上でパソコンなどを開く際に、ロックを解除するためのパスワードや利用サービスのIDを、何らかの方法で家族に知らせておくと、イザというときに役立ちます。
さらにネットを利用している取引のうち、利用頻度の低い取引は、なるべく解約することをお勧めします。例えば、株取引を複数の証券会社とネット取引している場合は、できれば1~2社に取引先を絞り、他の会社との取引は解約しておきましょう。
またネットで定額課金されるサービスを契約していると、定期的に一定金額が自動的に引き落とされてしまうため、それについては家族がわかるようにしておけば、すぐに解約の手続きができます。またパソコン上に負債になるような内容がある場合も、隠すことはせずに、わかるようにしたいものです。
円滑な相続ができるような準備を
急に親が亡くなったりして、どうしてもパスワードなどがわからないときに、その解析を行うことができる専門のサービス会社などに依頼することも考えましょう。その際、場合によって10万円を超えるかなり高額の費用が発生します。
安く請け負ってくれる業者の中には、データなどを抜き取られる可能性もありますので、低価格かどうかではなく、できるだけ信頼できるサービス会社に依頼することが大切です。高齢者も、家族にこうした負担をかけないよう、注意を払う必要があります。
可能であればデジタル化した株式などの遺産を、相続人の誰に引き継ぐかを確定しておくことも大切です。例えば、遺言書まではいかなくても、エンディングノートの形式をとり、電子データで残すだけでなく、家族がわかりやすい形で発見できるように、書面などでも残しておくといいと思います。
そうすれば、残された家族で遺産分割をめぐる対立を回避することも可能で、故人の遺志を確認することができます。残された家族は、ネット銀行やネット証券に対して、戸籍謄本、印鑑証明書など必要書類を送付することで、資産の分割と移転が進み、相続もスムーズに完了できます。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
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