人生100年時代、保険で貯蓄はNG?
ファイナンシャルフィールド / 2021年1月8日 11時10分
低金利時代となり、預貯金ではお金を増やすことができなくなりました。いまだに保険商品での貯蓄を考えている方がおられますが、保障を目的とした保険加入ではなく、貯蓄を目的とした保険加入は本当に良いのでしょうか。
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これまでは、終身保険や養老保険といわれる保険への加入で貯蓄を考えている方が多くおられました。しかし現在は、保険商品の主な運用先である国債の金利が大きく低下していることで、運用益が出せなくなってきています。
最近では、円建ての保険商品よりも利率が良い外貨建ての保険を勧められるケースも多くなってきているようですが、トラブルも増えているようです。
円建て商品では「変額保険」という保険商品の中で投資信託へ投資を行い、死亡保障の最低保証はあるが解約返戻金は運用次第という商品もあります。しかし運用を目的とした保険加入では、保険会社の利益や経費を引いたものを投資に回し、投資信託にもコストがかかるため、二重のコスト負担になります。
実際にどれだけの差が出るのでしょうか
直接投資を行う場合、例えば投資信託の購入では購入手数料や信託報酬、信託財産留保額というコストがかかります。このコストは商品によってもさまざまですが、リスクの大きな商品ほど手数料などが多くなります。
例えば3.3%(税込み)の購入手数料の場合は、2万円の投資では660円が手数料として引かれるため、2万円-660円=1万9340円が投資に回ります。
仮にこの額を毎月積み立てて、30年間3%で運用できたとすると、1127万131円となります。
ある保険会社のパンフレットに載っているシミュレーションで、月額2万円の保険料で変額保険に加入した場合は、30年後に約901万円となっています。死亡保障はあるものの、貯蓄で考えると約1127万円と約901万円となり、差額は226万円にもなってしまいます。
同じ条件で6%の利回りが実現できた場合は、直接投資で1942万7321円、変額保険では約1538万円となり、差額は約400万円となります。
保険で増えた分には税金が
保険商品で運用する場合、非課税で運用することになり、複利効果が期待できるのですが、お金を受け取るときには税金がかかります。
保険料として支払った金額を差し引いた額に対して、一時金で受け取った場合は一時所得、年金で受け取った場合は所得税の雑所得として、総収入金額から保険料総額を差し引いたものに税金がかかってきます。
投資信託でも、投資した額から増えた部分に対しては20%の課税と、20%のうちの所得税部分の15%に2.1%課税される復興特別税0.315%を合わせた税率20.315%がかかります。
しかし現在はNISAやつみたてNISAという少額投資非課税制度があり、年間の一定の投資額までは運用益が出ても非課税で受け取ることが可能となっています。
さらに、老後資金として運用を行う場合には、個人型確定拠出年金(愛称iDeCo)という制度があります。iDeCoは毎月の拠出額の上限は決まっていますが、拠出額全額が所得控除の対象となっています。
さらに、給付金を受け取るときも一括で受け取る場合は退職所得控除の対象となり、年金で受け取る場合には公的年金等の雑所得(公的年金等控除)の対象となります。
保険では短期間で解約すると損失となる
保険での貯蓄でさらに考えていただきたいのは、早期に解約をしないといけないケースが起きたときです。
保険は加入当初に保険会社への利益分や手数料が差し引かれているので、保険料から運用に回る額は少なくなります。従って、保険で貯蓄を始めても短期間で解約した場合は払った保険料よりも少なくなってしまいます。
資産運用はリスクがあるから怖いと思われていても、短期で見ると保険の方が確実にマイナスになるといえます。投資も保険も長期で考えておく必要があります。
まとめ
最近ではNISAやiDeCoの認知も広まってきて、資産運用を検討される方が増えてきていると思います。ただ、いまだに保険で貯蓄というイメージも残っているために、老後資金や教育資金を保険で準備されようと思われる方も見受けられます。
保険は死亡保障やけがの保障などを目的とした加入は良いのですが、お金を増やそうという目的では実は効率が悪くなってしまいます。
目的に合った金融商品を選ぶように心掛けましょう。
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
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