個人事業主が知っておくべきこと 小規模企業共済とは何か?
ファイナンシャルフィールド / 2021年1月8日 23時10分
小規模企業共済という制度があります。これは小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための積み立てによる退職金制度です。
会社員や公務員などの被用者と比べて個人事業主は社会保険で必ずしも恵まれていないのですが、小規模企業共済は税制的にも優遇されていて、小規模事業者にとって知っておくべき制度です。この記事では小規模企業共済の税務メリットについて解説したいと思います。
小規模企業共済の対象と目的
小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための積み立てによる退職金制度です。
「小規模」とは業種によって従業員の人数で決められており、建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などの場合は、常時使用する従業員の数が20人以下、商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合は、5人以下の小規模の個人事業主または会社の役員の方などを指します。
小規模企業共済の仕組み
個人事業主が小規模企業共済に加入する場合の仕組みについて解説します。
掛け金は月額1000円から7万円の間で、500円刻みで選択することができます。掛け金の増減は可能です。事業をしている間、毎月積み立てていきますが、個人事業主が廃業・死亡した場合に共済金を受け取ることができます。
そのほかにも、老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛け金を払い込んだ場合)または、個人事業を法人成りした場合などにも共済金を受け取ることが可能で、受け取りの事由により、共済金の金額が変わってきます。
掛け金は中小機構が予定利率1%で運用するので、元本割れのリスクはありません。受取金は一括払い、分割払いまたはその組み合わせが可能です。
小規模企業共済の節税効果
掛け金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります。
これは個人型確定拠出年金(iDeCo)と同様です。共済金もiDeCoと同様、分割払いの場合は公的年金等控除が適用され、一括払いの場合は、退職所得控除が適用されます。
次の前提で節税効果を反映した利回りを算出してみましょう。
- ★掛け金:毎月1万円
- ★加入期間:10年
- ★請求事由:個人事業の廃業
- ★共済金A:(廃業の場合の共済金)129万600円
- ★加入期間中の課税所得:500万円
1年当たりの節税額 | |
所得税の節税額 | 1万円×12ヶ月×20%=2万4000円 |
住民税の節税額 | 1万円×12ヶ月×10%=1万2000円 |
1年間の節税額計 | 3万6000円 |
10年間の節税額 | 3万6000円×10年=36万円 (掛け金計120万円の30%) |
掛け金の全額が所得控除になるというだけで、掛け金の30%相当の節税効果が期待でき、10年間の累計では、掛け金120万円に対し36万円の節税効果が出てきます。もし、課税所得がさらに大きければ、もっと大きな節税効果が期待できます。
これに対し、運用益は次のとおりです。
- ★共済金A (129万600円÷120万円)-1=7.55%(10年)
- ★運用益年利回り:7.55%÷(10年÷2)=1.51%*
*10年間の間、毎月掛け金を積み立て120万円になるので、金利計算上の積数は当初120万円を一括投資した場合と比べると1/2になるので、10年を2で割って計算します。
すなわち、運用利回り1.51%に加えて、年間の掛け金の30%相当が節税額として毎年還付ないし減額されるということになります。これはかなり大きなメリットです。
まとめ
これだけ大きな節税効果があるので、小規模企業共済に加入する価値はあると思います。
注意すべきは、節税効果といっても、所得税は税の還付、住民税は税の減額という形で受け取ることになるので、廃業したときに現金で受け取るわけではないことです。節税分を毎年貯蓄して翌年の掛け金に回すことをきちんとやらないと節税メリットはいつの間にかどこかへ行ってしまいます。
出典 中小機構 小規模企業共済とは
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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