資産運用で最も重要なのは「金融政策」。投資初心者から中級者になるために必要なこと
ファイナンシャルフィールド / 2021年1月16日 22時0分
投資初心者にとって、これからのマーケットがどうなるかを自分で組み立てていくのは非常に難しいように思います。
新聞を読んでマーケットがこれからどう動くかを自分なりに組み立てられるようになれば、おのずと資産運用は楽しいものになると思いますが、そこまでの道のりは簡単ではなく、どちらかというと長く険しかったりします。
新聞の内容を読み解きながら、今後のマーケットがどのように動くかを想定する練習をしてみたいと思います。
金融政策の理解は時間をかけてでも行っておく
2020年12月17日付の日本経済新聞電子版で『FRB、量的緩和を長期維持 「完全雇用に近づくまで」』という見出しの記事がありました。
投資に慣れている人にとっては、見出しを読んだだけで「株は買いだな」とすぐに結論が出ますが、投資初心者にとっては、おそらく、この記事をクリックすらしないかもしれません。なぜならば、この見出しがメッセージとして伝わらないからです。
これは仕方がないことですが、例えば、見出しを見るだけでも「FRB」、「量的緩和」、「完全雇用」と金融・経済の専門用語だけで構成されています。そこに、「量的緩和を長期維持」、「完全雇用に近づくまで」と言い回しが含まれているため、これらの関連性が分かっていなければ、この記事の価値すら見いだすことはできません。
実をいうと、特にリーマンショック後は、資産運用をする上でこの手の記事が最も価値が高く、この辺りのテーマを物色するだけで金融・経済に関する記事を読んだといっても過言ではないぐらいです。
投資に慣れている人はこの見出しを読んだとき、頭の中では「アメリカの金融当局は、景気が回復するまで、雇用が回復するまで、お金を出し続ける」から「株式市場にマネーがたくさん流れてくる」と想像します。
この記事の中で中心になるキーワードは金融政策ですが、金融政策には金融引き締めと金融緩和の2つがあります。端的にいうと、金融引き締めはお金を出す量を減らすこと、金融緩和はお金を出す量を増やすことです。
お金を発行している中央銀行がお金を出す量を減らすと、世の中に出回るお金の総量が減っていくため景気は悪くなります。逆にお金の量を増やすと、世の中に出回るお金の総量が増えるため景気は良くなります。前者が金融引き締め、後者が金融緩和です。
このようなことから、金融引き締めを行うのは景気に過熱感があるとき、金融緩和を行うのは不景気のときといえますが、この関係性を理解しておかなければこの記事の意味がイメージできません。
資産運用の本質は、世の中に出回るお金がどこに向かうかを予測するゲームといえますが、この記事が語っていることは、「アメリカの中央銀行であるFRBが米ドルを今後もさらにたくさん供給していきます。
だから、世界中にドルマネーが増えます。このお金は、もちろんコロナ禍における経済活動の下支えとして活用されますが、一方でカネ余りという現象を生み出すため、余ったお金は株式などの資産市場にも流れていきます」という意味です。
金融政策について深く学んでいくと、このような単純な構造になるとは言い切れませんが、マーケットに与えるメッセージが資産運用では重要であるため、この意味ではこのような単純な理解でかまいません。
中央銀行が実施する金融政策の目的は物価と雇用の安定です。物価はモノの値段(価値)、雇用は人々が職に就くという意味ですが、これらの安定を目的に中央銀行は金融政策を実施します。
この記事の見出しに「完全雇用に近づくまで」とありますが、完全雇用とは端的にいうと、より多くの人が職に就くことです。完全という言葉が用いられているため100%全ての人が職に就くと思うかもしれませんが、これは理論上の言葉で、現実世界ではありえないことから、より多くの人が職に就くことを完全雇用といっていると覚えておきましょう。
要するに、この記事がいっていることは、「FRBとしては、景気が回復し、より多くの人が職に就けるようになるまでは、お金を出し続けます」ということです。
金融・経済の知識があれば、見出しを見るだけでこれだけの字数の想像ができます。あとは、この記事の細かい内容がどう書かれているかを読みに行くだけです。
資産運用について時間がないから学べないと思っている方が多いように感じますが、実をいうと、知識があれば内容を読まなくても見出しを見るだけである程度の内容が推測できるようになるため、時間がないからこそ、早めに基礎知識は学んでおくというのが正解だったりします。
まとめ
この記事は景気を良くするための金融政策の話です。このため、金融緩和の強化により企業活動が活発化し、人々の収入が増え、消費が元に戻るという連想ができます。
このようなことから、資産運用をする上では、株式市場にお金が流れ込むことを先取りし、「株式は買いだな」という結論づけをします。直線的に金融・経済の専門用語や言い回しから株式は買いだという判断に結び付けましたが、この間で展開される文脈が、いわばマネーリテラシーです。
初めは第2外国語を学んでいるような感覚かもしれませんが、少しずつ分かってくると読めるという手ごたえを感じるようになると思います。
投資初心者にとっては、そこにたどり着くまでが大変かもしれませんが、そこまで行けば、あとは新聞などの記事は所々流し読みをすることができるようになるので時間の効率は高まります。
そこからが投資中級者の仲間入りです。新聞などに学ばせてもらっているぐらいの気持ちで謙虚に学びを続けていくようにしましょう。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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