生命保険、1つの契約に複数の受取人を指定すると受取額に差が出ることも?
ファイナンシャルフィールド / 2021年1月20日 11時30分
特定の誰かへの想いをお金というカタチにすることができる生命保険。
万が一の際の生命保険金の受取人は必ずしも1人である必要はなく、複数人を指定することができる商品があります。受取人に指定できるのは原則として2親等(=一部の商品では3親等)までの方です。
不動産は分けることが難しい
相続財産の中でも不動産は、1件の建物や1画地の土地を複数の相続人で分け合うことはなかなか難しいでしょう。もし、複数の相続人で分ける場合は、不動産を売却してそのお金を分けることが多いと思います。
生命保険は、前述のとおり、保険金受取人を複数指定できる商品もありますので、そのような保険契約をしていれば、比較的スムーズに相続を行えます。
ただし、場合によっては少々悩ましいケースもあります。
相続人の人数によっては、受取額に差が出ることがある
悩ましいケースを、夫・妻・子どもが3人という5人家族を例にご説明します。
ご主人を亡くされ、奥さまは自身を契約者と被保険者、そして3名のお子さんを受取人とする生命保険を検討していました。生命保険金の非課税枠を慮り、お子さん1人につき500万円、3名で合計1500万円の生命保険金というプランです。つまり、1件の契約で受取人が3名の生命保険プラン、ということです。
いざ、申し込みの時点で早くも戸惑いが生じました。
前述のとおり、保険金は1500万円(1人に対して500万円×3人)としていましたが、生命保険の申込書には、お子さん1人ひとりの名前を記す際に、受取金額ではなく受取割合を%で記入する仕様になっていました。
そのため、受取人が3名では均等な割合にできません。どうしても、3名のうち1人が34%、2人が33%ずつという割合になってしまいます。
この契約の場合、保険金が1%違うとその差は15万円です。多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれだとは思いますが、もしかしたら、相続の際にトラブルに発展してしまうかもしれません。
生命保険金を受け取るときにトラブルが起こる?
トラブルが起きてしまう可能性がある場面は、上記以外にもあります。それは、生命保険金を受け取るときです。
生命保険金の請求をすることになったら、まず、3名の受取人のうち代表者を定めなくてはなりません。そして、定めた代表者が必要な書類をとりまとめ、生命保険会社に送ります。
必要な書類とは、まず亡くなった被保険者(=本稿では奥さま)に関する書類として、住民票や除籍謄本、死亡診断書、それに生命保険証券。そして、受取人3名が用意するのは、それぞれの保険金請求書と印鑑証明書です。
3名が書類をスムーズにそろえることができれば良いのですが、1人でも書類がそろわなければ、生命保険金の受け取り(=正確には、生命保険金の請求)に時間を要することになります。
スムーズに書類がそろったとして、もう1つ心配なことがあります。保険商品によっては、生命保険金が3名分まとめて代表者の銀行口座に振り込まれるものがあるのです。この場合、生命保険金を受け取った代表者が、他の2人にそれぞれの生命保険金をわたす必要があります。
代表者は、受取人1人につき500万円という、決して少なくない金額を2人にわたさなくてはなりません。それぞれに現金を持参するのは、なかなかリスキーです。
銀行での送金の場合、ATMでは500万円を一度に送金できないことが多く、銀行の窓口が開いている時間に足を運び、送金手続きをすることになるかもしれません。その際、振込手数料もかかります。
また、これはあまり考えたくないことではありますが、「代表者が生命保険金を送金してくれない」などの、受取人相互のトラブルの可能性も捨てきれません。
ただ、生命保険の商品によっては、受取時の銀行口座を3名それぞれの銀行口座に指定できるものもあります。生命保険金の受取人を複数人指定したいと考えている方は、受取時のリスクやトラブルの可能性を知っておき、契約前によく検討することをお勧めします。
望ましいのは、「受取人は1人」
複数の受取人を指定することで起こるトラブルの可能性を知り、トラブルはどうしても避けたいと思う方は、やはり受取人は1人にしておくのが望ましいでしょう。
先述の例でいうと、生命保険金の受取人としたい子どもは3人いますので、3つの保険契約を結ぶことになります。
保険の申し込みのときに3枚の申込書への記入が必要となり(生命保険会社によっては、意向確認書や告知書もそれぞれ3枚必要な場合もあります)、少々手間に感じるかもしれませんが、先述の例のような契約時の戸惑いや生命保険金を請求するとき、生命保険金を受け取るときに想定されるトラブル等に不安を感じる方は、受取人は1契約につき1人にしておいたほうが良いかもしれません。
まとめに代えて
生命保険のプランを検討するとき、どうしても保険内容や保険料に意識が向きがちです。しかし、保険商品によっては、これまでご紹介したようなトラブルが想定されるものもあるかもしれません。
保険契約時には、生命保険金を受け取るときの状況も想定して検討すると良いでしょう。
(参考)日本生命「夢のかたち+(プラス)」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
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