2021年税制改正、私たちの生活にどんな影響がある?
ファイナンシャルフィールド / 2021年1月22日 10時30分
2020年12月10日、「令和3年度税制改正大綱」が発表になりました。
「ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生」「デジタル社会の実現」「グリーン社会の実現」「中小企業の支援、地方創生」「経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し」「経済のデジタル化への国際課税上の対応」「円滑・適正な納税のための環境整備」の7本の柱がテーマとなりましたが、このコラムでは特に消費者にとって身近な、住宅ローン控除、土地の固定資産税、エコカー減税、教育資金贈与の改正について解説していきます。
住宅ローン控除特例措置の延長
住宅ローン控除は、住宅購入者の金利負担を抑えるための制度で、毎年末の住宅ローン残高の1%が住宅購入後の10年間、所得税から控除されます。
所得税から控除しきれない場合は住民税から控除されますが、適用される金額には上限があり、一般の新築物件購入の場合はローン残高の4000万円分(税額控除の金額は年40万円、10年合計で400万円)まで、長期優良住宅や低炭素新築住宅の場合は5000万円分(税額控除の金額は年50万円、10年合計で500万円)まで税額控除を受けることができます。
また、上記の税額控除は特定取得(対価の消費税10%を購入者が負担する形の取得)が適用の条件となっています。個人が売主の中古物件のように対価に消費税の負担が発生しない場合には、物件の築年数や耐震基準などの一定の条件をクリアすれば、2000万円分(税額控除の金額は年20万円、10年合計で200万円)まで税額控除を受けられます。
2019年10月の消費増税に伴い、消費税10%が適用される新築住宅を購入し、2019年10月1日〜2020年12月31日の間に住み始めた場合、住宅ローンの控除の適用期間が13年間に延長されることになりました。最後の3年間は、年末のローン残高の1%か、建物取得価格の2%の3分の1のいずれか少ない方の金額が毎年控除されるというルールです。
この制度の入居制限が、今回の税制改正によって2022年12月末まで延長されます。注文住宅の場合は2021年9月、分譲住宅の場合は2021年11月までに契約を完了することが条件になりますが、2020年12月時点で「13年間の住宅ローン控除の適用には間に合わなかった」と残念に思っていた方は救われた格好です。
また、住宅ローン控除の適用を受ける場合、合計所得金額が3000万円以下、購入した物件の床面積が50平方メートル以上であることが条件でしたが、合計所得金額が1000万円以下の方は、床面積の条件が40平方メートル以上に緩和されます。独身で持ち家の購入を検討している方にも裾野が広がったといえるでしょう。
土地の固定資産税の納税者負担軽減措置
土地・家屋などの固定資産税は3年に1度、評価の見直しを行います。2021年度は、ちょうど固定資産税の見直しのタイミングです。近年は都心を中心に土地の価格が上昇していたため、固定資産税が上がった不動産オーナーも少なくないはずでした。
今回の改正では2020年1月の公示価格を基に固定資産税を見直した際に、税額が2020年度よりも上がってしまう場合、新型コロナウイルスの影響による経済的な打撃を鑑みて、2020年度の税額のまま据え置くことが決まりました。一方、郊外などで固定資産税が下がるケースでは、税額はしっかり下がります。この制度は個人と法人に適用されます。
エコカー減税の2年間延長と基準の厳格化
エコカー減税は、規制に適合した電気自動車、燃料電池車、天然ガス自動車、プラグインハイブリッドカー、クリーンディーゼル車などのエコカーの自動車取得税が非課税、自動車重量税が免税になる制度です。また、ガソリン車やLPG車も一定の排ガス規制の基準をクリアすれば、上記の税金が減税になります。
2021年4月末までとされていたエコカー減税が、改正により2年間延長されます。ただし、クリーンディーゼル車が2023年度からガソリン車と同じ取り扱いになる点、ガソリン車の性能基準が厳しくなる傾向にある点など、適用条件の範囲が狭くなっている傾向もあります。
教育資金贈与を非課税とする特例措置
教育資金贈与を非課税とする特例措置とは、0歳〜30歳未満の子どもや孫に、父母や祖父母が教育資金の贈与を行う場合、1人につき1500万円までは贈与税が非課税になる制度です。この制度は2021年3月までとされていましたが、2年延長となります。
ちなみに、教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合は、受贈者が23歳未満、または在学中か教育訓練受講中でない限り、死亡の日までの年数にかかわらず教育資金に使わなかった資金は相続税の対象になります。
元々この制度は、子どもたちの教育機会を広げるための制度のはずです。相続税対策が目的ではないため、今回の改正で制度が強化されたと考えられます。
また、類似の制度として20歳以上50歳未満の子どもや孫に、父母や祖父母が結婚子育て用の資金を贈与する場合、1000万円までが非課税になる制度があり、こちらも2021年4月1日以降2年間の延長となります。
まとめ
ここまで見てきたとおり、2021年度の税制改正は新型コロナウイルスによる経済的打撃の影響もあり、従来の制度を延長することで納税者を支援する内容が多くなっています。一方で、一部の改正では本来の趣旨と異なる制度利用を防ぐ目的や、企業努力を促す目的で厳格化されている部分もあります。制度が作られた背景を理解して利用すると良いでしょう。
出典 自民党 令和3年度税制改正大綱
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)
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