iDeCoやつみたてNISAで信託報酬の高い投資信託を選んではいけない本当の理由って?
ファイナンシャルフィールド / 2021年2月1日 12時0分
![iDeCoやつみたてNISAで信託報酬の高い投資信託を選んではいけない本当の理由って?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_97570_0-small.jpg)
iDeCoは掛け金の全額が所得控除の対象となり、運用益非課税、老齢給付金を受け取る場合にも年金ならば公的年金等控除、一時金ならば退職所得控除と節税メリットの塊のような商品です。
つみたてNISAもiDeCoほどではありませんが、運用益非課税の特典があります。そして両者に共通する特徴は、長期的な資産運用により自分自身の資産を増やすことです。
いずれも資産の主な運用方法は投資信託ですが、最も気をつけなければいけないのは「信託報酬」の高い投資信託を選んではいけないということです。
今回はその理由について説明したいと思います。
信託報酬とは?
投資信託では、投資家に代わって以下の会社が投資財産を運用しています。信託報酬とは、それらの運用会社に支払われる手数料です。
・委託会社
投資信託財産の運用指図を行う
・受託会社
委託会社からの指図に基づいて有価証券(株式や公社債)を売買するとともに、その保管を行う
・販売会社
投資信託の募集・売買、分配金・償還金の受益者への支払いを行う
信託報酬以外にも投資信託の購入時にかかる販売手数料や、投資信託の換金時に発生する信託財産留保額がありますが、商品によっては手数料がかからないものも多く、かかっても一時的な支払いで済み、金額もきちんと把握できます。
それに対し、信託報酬は次の2点が異なっています。
(1)投資信託の保有期間に対して継続的にかかる費用であること
(2)投資家に示される基準価額はすでに信託報酬を引いた数字なので、投資家は信託報酬をいくら支払ったかよく分からないこと
投資信託における信託報酬
一例として、iDeCoの対象商品の品ぞろえの豊富なA証券会社における投資信託の信託報酬を見てみましょう。
信託報酬(商品数)
0.1%台(14本)
0.2%~1%(17本)
1%超(5本)
上記のうち、インデックスファンド19本、アクティブファンド17本という構成になっています。36本中の31本の信託報酬が1%以下ということは、iDeCo向きの手数料率の低い商品を集めたということができます。
また、その中で信託報酬が最も高いファンドは2.1%で、バングラデシュ、モンゴルなどアジア5ヶ国の企業およびそれら各国で事業展開をする企業の株式に投資するアクティブ・ファンドです。
インデックス・ファンドとは、例えば投資信託の基準価額が日経平均のような市場におけるある指標と同じ動きをすることを目指すもので、それに対してアクティブ・ファンドは、市場における指標を超える運用成績を目指すものです。
一般にインデックス・ファンドの方が信託報酬が低く、アクティブファンドの方が高くなる傾向にあります。
長期投資における信託報酬 投資信託を一時払いで買った場合
長期投資において信託報酬はどのくらいの金額になるでしょうか?
まず、100万円で投資信託を購入して20年間持ち続け、その間、投資信託の価格は変わらないと仮定した場合の信託報酬は以下のとおりとなります。
前提(投資期間中、投資信託の価格は変わらないと仮定)
総投資額:100万円
投資時期:一時払い
投資期間(=保有期間):20年間
信託報酬0.1%の場合
100万円×0.1%×20年=2万円(投資金額の2%)
信託報酬2%の場合
100万円×2%×20年=40万円(投資金額の40%)
信託報酬2%の投資信託を20年間持ち続けると、投資金額の40%の手数料がかかります。これでは元本が値上がりしても、値上がり益が信託報酬と相殺されたり、値上がり益以上に信託報酬が大きくなって投資家の利益にはなりません。
また、投資家に示される基準価額は信託報酬を引いた後の数字なので、長期保有して上がらないと思っても、いくら信託報酬を支払ったのか投資家はよく分かりません。
投資信託を積立方式で買った場合
iDeCoにしても、つみたてNISAにしても、毎月少額ずつ掛け金を積み立てます。その場合の信託報酬は次のようになります。
前提(投資期間中、投資信託の価格は変わらないと仮定)
総投資額:100万円
年間投資額:5万円
投資期間:20年間
信託報酬金額
5万円×2%×20年=2万円
5万円×2%×19年=1.9万円
……
5万円×2%×2年=0.2万円
5万円×2%×1年=0.1万円
合計21万円(投資金額の21%)
一時払い方式は、投資開始時点で100万円の投資が行われます。これに対して積立方式は、投資期間20年にわたり毎年5万円支払い計100万円を投資します。
従い、累積投資金額は毎年5万円ずつ増えていきます。ですから、信託報酬2%の一時払い方式と比べると信託報酬は約半分で済みます。 しかし、総投資額の21%でもかなり大きな額といえます。
まとめ
ここまで説明したことをまとめると、次のとおりになります。
(1)投資信託は株式と違い保有期間に応じてコストがかかるため、長期保有には向かない。
(2)iDeCoやつみたてNISAのような長期保有を前提とした投資に使うとすれば、なるべく信託報酬手数料率の低いものを選ぶ必要がある。
(3)20年積立ベースで考えると信託報酬総額は以下のようになる。
信託報酬手数料率 | 信託報酬総額の総投資額に占める割合 |
---|---|
0.1% | 1% |
0.2% | 2% |
2% | 21% |
※筆者作成
信託報酬手数料率0.1%または0.2%のものを選べば、信託報酬総額の総投資額に占める割合は20年間で1%または2%ですが、信託報酬手数料率2%のものを選ぶと21%となってしまい、値上がり益を食いつぶして、利益が出るどころか赤字になるリスクがあります。
以上から、iDeCoやつみたてNISAのような長期投資では、信託報酬の高い投資信託を選んではいけないということになります。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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