身近な景気を回復させるために大切なのは、需要不足の解消?
ファイナンシャルフィールド / 2021年2月7日 3時10分
![身近な景気を回復させるために大切なのは、需要不足の解消?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_97885_0-small.jpg)
景気を良くするにはどうしたらいいんだろう。
日本は、なぜ、景気が悪いんだろう。
この2つの問いは、別の言葉で表現されていますが、いっていることは同じです。
つまり、日本の場合、景気がなかなか回復しない理由は単なる需要不足で、景気を回復させるためには単に人々がお金をたくさん使ってくれる社会にすればいいということです。
需要不足が語られなければ、景気回復の実感は湧くことはない
経済学なんて分からなくても多くの人がそう感じているはずですが、どうもこの国の場合、この単純な疑問に素直に答えてくれる政治家がいないように映ります。
国民の暮らしを身近に感じていないからなのか、官僚の言いなりになっているからなのか、それとも特定の支援者しか視界に入らないからなのか。
メディアを通じてさまざまなことがいわれていますが、そのメディアも日本経済がなかなか良くならない現状についてははっきりした物言いをしない期間が長く続いています。
ここ近年、メディアにおいても需要不足を指摘する記事や意見を耳にする機会が増えているようですが、それでも国民的なコンセンサスには至っておらず、ここに目をつむっている限り、本質的には私たちの暮らしはなかなか良くならないと思います。
需要不足が起こっている理由は、多くの人が分かっている
需要が不足しているということは、単に人々がお金を使わないということですが、その理由は何でしょうか。難しく考えずに自分の場合はどうだろうと想像してみると、その答えはあながち間違っているわけではないことに気付くかもしれません。
現状を見ると、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、景気が減速していることが頭に浮かぶかもしれません。でも、本当はその前からずっと景気回復の実感が湧かないと多くの人が感じています。
この原因は何でしょうか。
お金が使われにくくなっているから、つまり、お金を使おうと思っても使えないからです。お金を使わないということは、消費にお金が回りにくくなっていることを意味しており、世の中にお金が回りにくくなっているのだろうと想像できます。
要するに、モノを買わない、もしくは買えない、さらには買おうという気すらない、買うモノと買わないモノの選別がシビアになっているといった傾向がまん延しているため、世の中にお金が回りにくくなっているわけです。
それではなぜ、モノを買おうとしないのでしょうか。人によっては給料が少ないから、減っているからと答える方もいるでしょうし、どうせ将来また消費税が上がるんでしょ、と思っている人もいるかもしれません。
また、なるべく必要でないモノは買わずに、むしろ将来のためにお金は取っておこうと考えている人もいることでしょう。ここに日本の抱えている社会的な問題がありますが、この点についても、なんとなく想像できるかもしれません。
お給料がなかなか上がらないと感じている人の場合、お勤めの会社の雇用を取り巻く環境がそれほど良くないからでしょう。例えば、会社の売り上げがそれほど上がっていなければ、そもそも社員・従業員のお給料を上げる余裕はありません。
また、定年後の再雇用や定年退職の年齢の引き上げに伴い、賃金カーブ自体が少し緩やかになっているため、給与の伸び率を抑えているという会社もあるでしょう。
どうせ将来また消費税が上がるんでしょと思っている人の場合は、増税というメッセージは家計にとってインパクトが強いため、なるべく無駄なものは買わないと考えてしまうのは当たり前です。
そして、今、お金を使わずになるべく将来のために取っておこうと考える人にとっては、年金不安に象徴されるような老後の生活に対する悲観的なイメージを持っているのかもしれません。
このように順を追っていくと、人それぞれお金を使う動機が薄まっている理由があることが分かります。
必ずしもみんながみんな、お金を使わない、お金を貯めようとするというわけではないのはもちろんですが、なぜ世の中にお金が回らなくなっているのか、つまり、なぜこの国では長年需要不足に陥っているのかは、人々の感じ方をひもといていくとおのずと見えてくるような気がします。
むしろ、経済学を基にするから話がややこしくなるわけで、身近なところから素直な感想を想像してみるだけで分かることもたくさんあります。経済学的にいうと、消費にお金が振り向かずお金を貯めようとすることを、消費性向が低下し、貯蓄性向が高まっていると表現します。
このような言葉を知っていると、先ほどのような話は一言で済みますが、人々の営みについて想像を働かせようとしない経済学者がこのような言葉を使って政策を語ってしまうと、私たちにとっては途端にイメージしにくいものになってしまいます。
まとめ
需要不足の直接的な原因は、人々がお金を使わず、むしろ貯めようとするからです。
つまり、消費性向が低下している代わりに、貯蓄性向が高まっているから需要不足が起こっているわけですが、私たちにメッセージとして刺さらないのは、このような言葉のギャップが存在するからなのかもしれません。
マネーリテラシーを身に付ける初めの一歩は、身近な暮らしで感じたことに素直に疑問を持ち、なんでだろうと自分なりに想像してみることです。その結果、自分で調べたり、本を読んだり、人に聞いたりしながら、経済についての知識や考え方が身に付いていきます。
今のような経済状況は、経済を知る上で教科書的にはとても良い題材といえるので、この機会に理解を進めていくと面白いかもしれません。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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