年金の改正法案を知って、今後の働き方や年金の受け取り方を検討しよう!
ファイナンシャルフィールド / 2021年2月9日 23時10分
令和2年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(以下「年金制度改正法」といいます)」が成立し、6月5日に公布されました。
この法律が成立することによって何が変わり、どう対応していけば良いのでしょうか。
年金制度改正法の概要
年金制度改正法の概要は、以下のとおりです。
- (1)被用者保険(厚生年金保険、健康保険)の適用範囲の拡大
- (2)在職中の年金受給の在り方の見直し(在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入)
- (3)受給開始時期の選択肢の拡大
- (4)確定拠出年金の加入可能要件の見直し等
- (5)その他、年金制度全般について
以下では、(1)から(4)について解説します。
被用者保険(厚生年金保険、健康保険)の適用範囲の拡大
被用者保険(厚生年金保険、健康保険)の適用範囲の拡大とは、具体的には次のようになります。
(2)5人以上の個人事業所に係る適用業種の追加
(3)国・自治体などで勤務する短時間労働者に対する公務員共済の短期給付の適用
注目したいのは(1)です。現行は従業員数が500人超の規模の企業とされていますが、2022年10月に100人超、2024年10月に50人超の規模の企業に適用されるようになります。これにより、短時間労働者であっても被用者保険に加入できる人が増える見込みです。
在職中の年金受給の在り方の見直し(在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入)
在職中の年金受給の在り方の見直しとは、具体的には次のようになります。
(2)在職老齢年金制度の支給停止基準額の引き上げ
(1)については65歳から70歳までの方が対象となります。現行は、退職時や70歳到達時に年金額が改定されますが、改正法では毎年1回改定されるようになります。
(2)については60歳から64歳までの方が対象となります。現行の支給停止基準額は28万円ですが、改正法では47万円とされています。
これにより、60歳以降の方の経済基盤が安定することを期待できます。(1)(2)は共に2022年4月に施行される予定です。
受給開始時期の選択肢の拡大
現在、公的年金の受給開始は原則として65歳です。しかし、受給資格者の選択によりその時期を60歳から70歳の間で選択することができます。改正法ではその時期を60歳から75歳の間に拡大しています。
65歳から繰り上げて受給した場合、年金額はひと月当たり0.5%の減額(最大30%減額)となります。一方、65歳から繰り下げて受給した場合、年金額はひと月当たり0.7%の増額(最大84%増額)となります。
この改正は、2022年4月に施行される予定です。
確定拠出年金の加入可能要件の見直し等
(2)確定拠出年金の加入者に係る範囲の拡大、条件の緩和
注目したいのは(1)です。(1)は、企業型確定拠出年金であれば65歳未満から70歳未満に、個人型確定拠出年金(iDeCo)であれば60歳未満から65歳未満に、加入可能年齢を引き上げるというものです。
また、受給開始年齢については、確定拠出年金は60歳から75歳まで、確定給付年金は60歳から70歳までと、それぞれ5年間引き上げられています。これにより、老後資金の準備期間を長くし、老後の経済的不安を軽減させる効果が期待できます。
(1)は2022年5月に、(2)は2022年4月に施行される予定です。
まとめ
年金制度改正法のポイントは、平均寿命の伸長に加え、多様な働き方がある現状に合わせた年金制度の整備と考えられます。
定年退職の年齢が60歳となっている企業はまだ多く、再雇用制度を採用していたとしても収入が減ることへの不安は残ります。そのような中、国が率先して法整備をしていくことで、企業側も雇用制度の見直しがしやすくなるのではないでしょうか。
年金制度改正法の成立は、ライフプランニング(人生設計)やファイナンシャルプランニング(資金計画)を見直すきっかけになるのではないかと思います。
出典
厚生労働省 「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
厚生労働省 「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
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