年金額は毎年変わる? その仕組みとは
ファイナンシャルフィールド / 2021年2月19日 3時0分
令和3年度の公的年金額は、令和2年度より0.1%減ることに決まりました。毎年1月下旬に厚生労働省から「年金額改定についてお知らせします」という発表がされていますが、そもそもなぜ年金の受取額は毎年変わるのでしょうか。
この機会に改定の仕組みを知って、その上で厚生労働省の発表を見てみましょう。
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モノの値段が上がる傾向があれば、それに伴い年金額も変更される仕組みがあります。電車の運賃や切手を例に考えてみましょう。1駅分の運賃が150円から160円になった、はがき1枚62円が63円になった。こうした物価の動向が反映されて、年金額は毎年度改定されます。
物価の動向を数字に表したのが「物価上昇率」で、「商品やサービスの価格がどの程度上昇したかを示すもの」と定義されています。公的年金制度では、全国消費者物価指数(総合)が前年と比べてどの程度変化したのかを見て、その動向を反映する仕組みになっていますが、より実態に合った年金額を導こうという趣旨の下、そこに2つの要素を加え、さらに調整しています。
2つの調整要素について
具体的に2021年度の年金額改定を例に挙げ、2つの調整要素について解説していきましょう。
名目手取り賃金変動率
1つめは賃金の動向を反映させる「名目手取り賃金変動率」です。公的年金制度は賦課方式といって、現役世代が納めた保険料を年金受給者に仕送りするような仕組みなので、現役世代の収入の増減の動向を反映させないとバランスが悪くなります。
この名目手取り賃金変動率は、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に、前年の物価変動率と可処分所得割合変化率(0.0%)を乗じたものです。
令和3年度は以下のとおり、名目手取り賃金変動率はマイナス0.1%となりました。
実質賃金変動率(-0.1%)(平成29年度~令和元年度の平均)× 物価変動率(0.0%)(令和2年の値)× 可処分所得割合変化率(0.0%)(平成30年度の値)
マクロ経済スライドによるスライド調整率
2つめは「マクロ経済スライドによるスライド調整率」です。
マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。物価も賃金も上昇したという状態であったとしても、若い世代の負担が増え過ぎないように年金額の上昇を抑えましょう、という趣旨のものです。
令和3年度は以下のとおり、マクロ経済スライドによるスライド調整率はマイナス0.1%となっています。
公的年金被保険者数の変動率(0.2%)(平成29年度~令和元年度の平均)× 平均余命の伸び率(-0.3%)(定率)
ただし、賃金や物価による改定率がマイナスの場合、マクロ経済スライドの調整は行わないというルールがあるので、令和3年度はこの数字が計算に入っていません。
物価変動率と名目手取り賃金変動率から見る令和3年度の改定率
それでは、ここまでの数字を令和3年度の改定率とすり合わせましょう。
●物価変動率=0.0%
●名目手取り賃金変動率=マイナス0.1%
●マクロ経済スライドのスライド調整率=加味しない
というわけで、厚生労働省の発表は「年金額は昨年度から 0.1%の引き下げです」となっています。
毎年、年金額が改定されるということ、その仕組みについて、お分かりいただけたかと思います。前年度はマクロ経済スライドの発動がありました。
少子高齢化が進み、インフレの兆候が見られないことからも、引き続き年金額は現状維持、または減少の傾向が続くと予想されます。過去の傾向を見て今後の年金受給額を想定し、将来必要なお金について対策していくことも大事ですね。
出典
厚生労働省 令和3年度の年金額改定についてお知らせします
厚生労働省 令和2年度の年金額改定についてお知らせします
厚生労働省 いっしょに検証!公的年金 用語集
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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