1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

恐怖指数、SOX指数etc. “コロナ以降”注目を浴びた指数をキホンから解説

Finasee / 2021年9月7日 11時0分

恐怖指数、SOX指数etc.  “コロナ以降”注目を浴びた指数をキホンから解説

Finasee(フィナシー)

新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界的に経済活動が停滞した2020年。その後、各国の大規模な量的緩和策やコロナワクチンの開発、普及によって欧米をはじめとした先進国での経済活動は急速な回復を見せた。とりわけ米国では、コロナ禍で一時期、11年ぶりのマイナス成長を記録していた実質GDPの規模が、直近では感染拡大前の水準を上回った。

こうした経済のV字回復は歴史的にも珍しい。それに伴って、経済の現状や展望を示す各種指数も類を見ない動きを見せている。

この記事では「コロナ禍でよく見かけるようになったけどよく知らない」「なぜ上がっているのか分からない」といった指数について、その概要を紹介する。

指数は景気動向を示す数値

指数とはある時点を基準にポイントとして算出される値だ。株価やサービスの料金など、複数の異なる数値を1つの値に計算し直し、絶えず変動する市場を把握しやすくするといった目的がある。

例えば、ニュースや新聞などで目にする機会の多い「TOPIX(東証株価指数)」は、東京証券取引所第一部に上場する全銘柄を対象とし、株式数(浮動株数)でウェイト付けした、時価総額加重型の指数だ。1968年1月4日の時価総額を100として現在の数値を算出する。株式市場は全般的に経済の先行きを織り込んだ動きを見せることから、TOPIXは景気の先行指標として参考にされている。

なお2021年8月26日時点の終値ベースのTOPIXは1935。銘柄の入れ替わりや貨幣価値の変動、基準日とは計算方法も少し異なるため単純比較はできないが、数値は基準日からおよそ19倍に増えている。当時と比べると着実に、日本経済が成長していると言えるわけだ。

コロナ禍で注目を浴びた指数を紹介

2020年から続くコロナ禍では、いくつかの指数が不安定な景況感を背景に大きく変動し、注目を浴びた。ここからはそれらの指数について一つずつ紹介していく。

株式市場の振れ幅を示す「VIX指数(恐怖指数)」

「VIX指数」は投資家が株価の今後の値動きにどれほどの振れ幅を見込んでいるかを数値化した指数だ。相場の先行きに対する警戒感を示しており、別名で恐怖指数とも呼ばれる。

VIXとは「Volatility Index(ボラティリティ・インデックス)」の略語。ボラティリティとは値動きの変動性、インデックスは株式の市場動向を示す株式指数をそれぞれ意味する。

1993年より米・シカゴ・オプション取引所が算出と発表を行っており、米国の主要株式指数の一つである「S&P500」を対象とするオプション取引の値動きをもとにしている。

相場が下落し、値動きの変動性が高まるとVIX指数の値も上昇する。通常は10~20の間で推移するが、相場暴落時には40~50にまで上がることも。

過去に40を超えた事例は多くなく、米同時多発テロ(2001年9月)やリーマンショック(2008年9月~)など、どれも世界的な事件がきっかけとなった。

今回も新型コロナの影響で株価が暴落した2020年3月のコロナショックの結果、リーマンショック以来の過去最高水準となる80を超えた。しかし、その後は大規模な金融緩和策や経済回復期待から株式市場が復調し、低下傾向にある。

なお、日本にも「日経平均VI」という同様の指数がある。日経平均VIは2008年のリーマンショックで相場が大暴落したときには過去最高の92まで、2011年の東日本大震災の直後には70に迫る水準まで上昇した。コロナショックで相場が急落した時も日経平均VIは46に上がっている。

投資の面から言えば、VIX指数が安定した水準にあるときに株式市場に投資をすれば、大きな損失を被るリスクを抑えられると言える。市場と逆の動きをするVIX指数に連動した投資信託もある。ポートフォリオの一部に加えておけば、市場全体が暴落してもその投資信託は値上がりするため、それを売却することで資産の損失を緩和することにもつながる。

現在、米国株式市場は堅調。それに伴いVIX指数も比較的安定して推移している。ただし、今後急上昇する懸念もある。早ければ年内にも量的緩和策の縮小が開始されると見られており、もし実行されれば株式市場が再び大幅に下落し、VIX指数も急上昇する可能性もある。

半導体市場の景況感を表す「SOX指数」

「SOX指数」は主に米国の主要半導体関連企業30銘柄で構成された株価指数だ。

SOX指数を算出、公表しているのは米・フィラデルフィア証券取引所。1993年12月1日を基準値100としており、2021年8月24日の終値は3345である。28年間で実に33倍以上も上昇しており、半導体市場の急成長を物語っている。

半導体はPC、スマホ、液晶テレビ、自動車などあらゆる製品に使われている。各種製品の需給が変化すると、関連企業の業績も影響を受け、指数も変動する。

一般的に半導体セクターは景気変動の影響を受けやすい景気敏感株として知られている。そのため、SOX指数も景気を読む参考として使われることもある。SOX指数の動向は米国に限らず世界全体の半導体市況に関する投資家の見方を表しており、日本の半導体関連銘柄の株価にも影響を与えている。

また、国内において半導体株は日経平均への寄与度が大きい値がさ株が多い。SOX指数の下落を受けて、半導体市場の先行きが不安視されて半導体株が下がると、日本株式市場全体も下落する傾向にある。

SOX指数は2000年前後にITバブルの影響で、ハイテク企業の増加などにより大きく上昇したが、バブル崩壊で急落してリーマンショックで底を打ち、その後は上昇傾向が続いた。

コロナ禍では巣ごもり需要により、ノートPCなど通信端末の売り上げが伸び、半導体の需要が大幅に増加。関連企業の大幅な利益増により株価が上がり、SOX指数も上昇した。自動車の利用減少を見込んで減産されていた車載用半導体が、中国の早期経済再開により、思わぬ需要増を受けて深刻な不足に陥ったことも、指数の上昇傾向を加速させた。

2021年8月初旬に過去最高値を付けたが、車載用半導体不足緩和のニュースから直近では下降トレンドとなりつつある。

一方でIT関連機器の需要はまだまだ堅調なうえ、今後は5G、AI、VRといった先端技術の普及も予想される。SOX指数も長期的な観点ではまだまだ上昇が期待できるだろう。

貿易の活発さを示す「バルチック海運指数」

バルチック海運指数は主要航路のばら積み貨物船の運賃から算出する、国際的な海上運賃の指標である。

先述の2つの指数と異なるのは、株価ではなく「運賃」がベースとなることだ。英・ロンドンにあるバルチック海運取引所が算出、公表しており、1985年1月4日を1000として現在の値を計算している。2021年8月24日の終値では4201を記録した。

ばら積み船とは梱包されていない鉄鉱石、穀物などコモディティー商品輸送を担う船を指す。商品輸送の需要が高まり、ばら積み船の稼働が増えると、運賃も高くなり、バルチック海運指数も上昇する。

バルチック海運指数は主に貿易の活発さを示し、経済やコモディティー商品相場の先行指標としても扱われる。運賃は海運関連の会社の景況感・株価に影響するため、同指数から海運株市場の動向も見通すことが可能だ。

なお、世界で最もコモディティー商品の需要が大きい中国や、鉄鉱石輸出の最大国ブラジルの動向が同指数を大きく左右することもある。

1990年代から2000年初頭までは1000~2000の間を推移してきたものの、2008年には中国経済の急成長に伴う鉄鉱石輸入増加など、新興国の台頭による原料輸送需要の高まりで過去最高となる12000付近にまで達した。しかし、リーマンショックにより暴落。2016年2月には300を切るなど、その後もたびたび急騰、急落を繰り返しながら推移していた。

2020年5月にはコロナ禍で経済活動が停滞し、ばら積み船が運搬する資源の需要が低下する見通しから400付近まで下落していたが、2021年6月頃に景気回復の期待から急上昇。11年ぶりの高値3267を記録するまでに伸びた。

その後も世界的な荷動きの活発化を背景に、運賃市況が高騰して指数はさらに上昇。それに連動し、国内外の海運関連株も値上がりを見せている。

今回も他国よりも先行して経済再開を始めた中国がバルチック海運指数を押し上げたかっこうだが、最近は中国の経済活動の鈍化も指摘されている。欧米先進国でも同様の懸念があり、今後も指数が上昇するか見通しは不透明だ。

なお、同指数に連動する投資信託やETFは国内の証券会社では取り扱っていないため、直接投資することは今のところ難しい。しかし、同指数と連動性が高いコモディティー商品や海運関連株へ投資する際の一つの参考として使うことは可能だ。

 

まとめ

景気サイクルは本来、長い年月をかけて上昇と下降を繰り返していく。しかし、今回のコロナ禍はそのサイクルを加速させ、緩やかに推移していくはずの指数も急激な変動を見せた。

生活様式が変わり在宅時間が増えた結果、テレワークや宅配サービスなど新たな需要が生み出され、それに伴いSOX指数のように大躍進した指数もある。イレギュラーな状況下で大きな変動を見せる指数の動きを把握することは、世界経済の動向の把握にもつながる。今どのような業界や商品の需要が高まっているのか、将来性のある産業分野を知る良い機会にもなるだろう。
 

田中 雅大/編集者

ペロンパワークス・プロダクション代表。編集プロダクション、出版社勤務、『MONOQLO』『日経ビジネスアソシエ』『サイゾー』等の編集記者、Webメディア運用を経て、ペロンパワークス・プロダクション設立。編集記者時代のフィールドは金融とデジタル製品。AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください