4人に1人が孤独死?「そばで助けてくれる人がいない」高齢者の現実
Finasee / 2023年2月27日 11時0分
Finasee(フィナシー)
変わってきた「おひとりさま」の意味
今からおよそ40年前の1980年には、日本で一番多かったのは夫婦と子どもの世帯で、全体の4割を占めていました。2019年には、単独世帯が一番多い世帯となり、全体の3割を占めています。人口は減少している一方で世帯数は増加しており、私たちの暮らしの基盤が「家族」や「家庭」から「個人」へとシフトしていることが分かります。
その1つの要因が未婚率の上昇です。50歳時の未婚割合は1980年時点では男性3.9%、女性4.3%でしたが、2020年には男性26.5%、女性17.5%に。2040年にはそれが男性29.5%、女性18.7%になると推計されています。
「おひとりさま」が初めて注目されるようになった2000年ごろは、経済的に自立した女性が1人で食事や娯楽を楽しむといった新たな消費行動が脚光を浴びました。その流れ自体は第3次おひとりさまブームと言われる現在も続いており、「ソロ活」という言葉も生まれています。
一方で、2011年に発売された『おひとりさまの老後』(上野千鶴子著)がベストセラーになるなど、人生の終わりをどのように“ひとり”で迎えるか、それまでの高齢期をどのように“ひとり”で生き抜くか、ということも大きなテーマとして浮かび上がってきています。
老後というのは誰にとっても、心身が衰えてこれまでできたことができなくなったり、大切な人を亡くしたりと、さまざまな喪失を経験する時期であり、最終的には自分の死が待っています。その過程で、これまでは自由を与えてくれていた「ひとりであること」の意味が、いつしか「そばで助けてくれる人がいないこと」に変わってしまうことが、徐々に認識されるようになってきたのです。
おひとりさまの高齢期への注目が高まっている高齢期に関しては、この「そばで助けてくれる人がいない」ことは、必ずしも独身の人だけの話ではないことに注意が必要です。
結婚していても配偶者が亡くなればおひとりさまだし、配偶者がいてもお互いに高齢になって助け合う余力がなければ、おひとりさまが2人いるのと同じことです。子どもがいても離れて暮らしていたり、関係が悪かったり、子どもに余裕がなかったりすれば、助けを得るのは難しいでしょう。そういった可能性を考えたとき、「自分は絶対おひとりさまにはならない」と言い切れる人は果たしてどのくらいいるでしょうか。
なぜ「そばで助けてくれる人がいる」ことがそれほど重要なのかは、実際にその助けを必要とする場面にならない限りはなかなか分かりません。それはおひとりさまに限らず、今、健康で自立した生活を送っている私たち皆がそうでしょう。
老後とはいつのことなのか、何が起こるのか、どう対処できるのかといったことについて、実は私たちはそれほど多くのことを知っているわけではありません。子世代が親世代の面倒を見るのが当然だった時代はそれでもよかったかもしれません。何かが起こって自分で対処できない場合は、子世代が代わりに対処してくれたからです。
しかし今はそのように、何も備えなくとも自然に誰かが肩代わりをしてくれることは期待できないでしょう。「家族の個人化」という言葉があるように、たとえ家族同士であっても、それぞれの人生、それぞれのライフスタイルがあることが当然のこととなっているからです。
また、長寿化に伴って、“子世代も高齢者である”ことも珍しくなくなっています。そういう意味では全ての人がおひとりさまになる覚悟を持ち、自ら老後に具体的な備えをしておくことが求められている時代といえます。
これから本連載では、お財布事情、介護問題、お墓問題、住宅問題、金融商品・遺言相続といったテーマで、おひとりさまが直面する課題について考えていきます。
彩子さん(50歳女性)の場合それでは早速、実際の事例を見ていきましょう。まずは50歳女性のケースをもとに「おひとりさまのお財布事情」を紹介します。
***彩子さん(仮名、50歳)は金融関係のシステム会社に勤めるシステムエンジニア。業界では珍しく新卒から同じ会社に勤めており、現在は40人の部下をまとめる管理職です。30歳の時に一度結婚しましたが、3年後に離婚して以来、おひとりさま。実家は3駅離れた隣町にあり、弟夫婦が母親と二世帯住宅で暮らしていますが、会うのは正月くらいとのこと。
経済的にはそれなりの蓄えがあります。5年前からトイプードルと一緒に暮らしており、休日は趣味の登山を仲間と楽しんでいます。最近はおひとりさまの終活に関する本が多く出ているので気になっていますが、仕事や趣味が忙しく、深く考えてはいません。ただ、山に行くときには、自分に何かあったら犬はどうなるのだろうと心配になり、それだけは弟に頼んでいます。
●50歳で直面した「できなくなる」という現実… 続きは【50歳女性が直面した“おひとりさま”の現実…】(本サイト記事)で紹介します。
沢村 香苗/日本総合研究所 スペシャリスト
東京大学文学部卒業。同大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。研究機関勤務を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。研究・専門分野は高齢者心理学、消費者行動論で、「高齢者の身元保証人、身元保証等高齢者サポート事業に関する調査研究」など実績多数。著書に『自治体・地域で出来る!シニアのデジタル化が拓く豊かな未来』(学陽書房)。
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