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50歳女性が直面した“おひとりさま”の現実「私が入院したら、誰が…」

Finasee / 2022年2月4日 11時0分

50歳女性が直面した“おひとりさま”の現実「私が入院したら、誰が…」

Finasee(フィナシー)

彩子さん(仮名、50歳)は金融関係のシステム会社に勤めるシステムエンジニア。業界では珍しく新卒から同じ会社に勤めており、現在は40人の部下をまとめる管理職です。30歳の時に一度結婚しましたが、3年後に離婚して以来「おひとりさま」。休日は趣味の登山を仲間と楽しんでいます。

ある朝、彩子さんがいつものように新聞を読んでいたところ、雑誌広告の「おひとりさまの老後資金」という見出しが目に入りました。彩子さんは無駄遣いをする方ではないので、それなりに貯蓄はあり、少しだけ投資もしています。これからもおひとりさまを続けるかどうかは分からないけれど、自分の面倒は自分で見たいし、できるだけ人生を楽しみたいと思っています。でも具体的に何をすればそれが実現する確信が持てるんだろう、自分の貯蓄は十分なのだろうか、などと考えながら会社に向かいました。

会社に着くと、同僚がやってきて、隣の部署の社員が昨夜会社で倒れて搬送されたと知らせてくれました。その人は1人暮らしなので、会社で倒れたのが不幸中の幸いだった、救急車に同乗した部下が入院の連帯保証人としてサインしなければならなかったらしいとのことでした。

彩子さんも1人暮らしなので、ひとごとではないなと少しヒヤッとすると同時に、入院の連帯保証人って何だろうという疑問を持ちました。インターネットで調べると、入院時に保証人が頼めなくて困っている人が多いという報道がありました。そういえば、母親が入院した際、付き添った彩子さんも、いくつかの書類に名前を書いた記憶があります。たくさんの書類があったので、名前を書くだけで精いっぱいで内容を確認する余裕はありませんでした。

自分が入院するとしたら、誰が名前を書いてくれるのだろう……。彩子さんは心配になってきました。簡単に人の連帯保証人にはなってはいけないということは小さい時から繰り返し言われていたので、弟夫婦に頼むとしても、何をどれくらい保証するのかが説明できなければいけません。入院費はどれくらいかかるのだろうか、弟にあらかじめいくらか渡しておくべきだろうかなどと考えて、その日は仕事中も気持ちが晴れませんでした。

おひとりさまの高齢期に必要なこととは

2019年に世間を騒がせた「老後2000万円問題」を覚えていますか? 事の起こりは金融審議会の市場ワーキング・グループが「高齢社会における資産形成・管理」報告書の中で提示した試算で、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯は、収入と支出の差が毎月5万4520円あり、これを仮に30年続けると約2000万円の赤字になる(5万4520円×12カ月×30年)という話だったのですが、これは報告書のメッセージの前置きに過ぎませんでした。ただ、年金収入があっても老後にこれだけお金が足りないとは何事か、国の責任放棄ではないか、と「炎上」してしまい、報告書のメッセージが伝わることなく終わってしまいました。

ではこの報告書のメッセージは何だったのでしょうか。報告書はウェブで公表されているので、ぜひ一度お読みになることをお勧めします。

かいつまんでいうと、まず、長寿化はこれからも進む見通しで、人生100年といわれる通り老後はとても長いものになること、私たちのライフスタイルが多様化していること、介護を必要とする場合が増えることなどから、標準的なライフプランを提示することが難しくなっているという現状が示されています。「結婚後、夫婦と子供、親と同居し、持ち家を持ち、老後の親の世話は子供がみるというようなかつて標準的と考えられてきたモデル世帯は空洞化してきている」という一文がそれを表しています。

世帯の形だけでなく、働き方も変化しています。多様なスキルを身に付けて転職や起業をし、年齢にかかわらず働き続けられる可能性が広がっている一方で、1つの企業で勤め上げて定年で退職金を得、年金と合わせて老後生活の基盤とするという形が当てはまらない人が出てきます。

つまり、もう国などが「あなたはこうすれば大丈夫です」といったモデルを示すことは難しく、個人が自らの人生を見通しつつ、資産形成を行いましょうというのがこの報告書のメッセージです(それを可能にするような金融サービスのあり方も提言されています)。

彩子さんは貯蓄もそれなりにあり投資もしていますが、世の中の50代おひとりさま女性の経済状況はいったいどのようなものなのでしょうか。皆が皆、自分で資産形成ができるわけではないでしょう。実態を見てみると、意外な数字と面白い傾向がありました。

●後半へ続く>>

沢村 香苗/日本総合研究所 スペシャリスト

東京大学文学部卒業。同大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。研究機関勤務を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。研究・専門分野は高齢者心理学、消費者行動論で、「高齢者の身元保証人、身元保証等高齢者サポート事業に関する調査研究」など実績多数。著書に『自治体・地域で出来る!シニアのデジタル化が拓く豊かな未来』(学陽書房)。

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