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50歳おひとりさま女性が備えるべき「できなくなる」という避け難い現実

Finasee / 2022年2月4日 11時0分

50歳おひとりさま女性が備えるべき「できなくなる」という避け難い現実

Finasee(フィナシー)

●前半はこちら

おひとりさまの経済状況

全国家計構造調査(2019年)によると、彩子さんと同じ50代女性単身世帯の金融資産残高(貯蓄現在高)はおよそ1100万円、60代で1400万円となっています。2人以上世帯(世帯主50代)はそれがおよそ1200万円、60代で2000万円となります。貯蓄から負債を引いた純金融資産額は、50代女性単身世帯でおよそ700万円、60代で1300万円。2人以上世帯(世帯主50代)はおよそ450万円、60代で1600万円。こう見ると、おひとりさまの方がやや経済的には余裕があるようです。

また、ひと月あたりの食費は、女性単身世帯が4万円前後で年齢によってはさほど変化がありません。2人以上の世帯では、50代から70代前半で8万円程度、75歳以降は7万円ほどになります。どちらの世帯でも、50代では食費は支出全体の2割くらいを占めていますが、交通費の割合が年齢の上昇に伴って減っていくに従い、食費の割合は3割ほどになっていきます。

単身世帯と2人以上世帯では、単身世帯の方が支出に住居費が占める割合が高い傾向(1.5割前後)にあります。2人以上世帯では1割以下です。2人以上世帯では住居費でも設備の修繕や維持に支出していますが、単身世帯では家賃地代の方にお金がかかることが多いようです。

少し面白いのは、交際費です。交際費は年齢に伴って上がっていき、50代女性単身世帯では月に8700円程度、その後もずっと1万円程度を支出しています。2人以上世帯では50代後半から70代前半までは1万3000円程度、それ以降も1万円程度となっています。男性の単身世帯では、統計のサンプル数等の影響もあるのかもしれませんが、50代前半と、60代後半から70代前半で1万円程度支出していますが、それ以外では6千円台になる年代もあります。現役時代と、退職前後では盛んにお付き合いがあるものの、その他の年代では女性ほどは人付き合いがないのが想像できます。

保健医療費は、女性単身世帯で50代から70代前半までがおよそ月に1万円、75歳から80代前半までがおよそ7千円、85歳以上で1万2000円となっています。医療費についていえば、75歳からは後期高齢者医療保険制度に組み込まれたり、高額療養費制度によって自己負担額が一定額以下に抑えられる仕組みがあるので、単純に2人以上世帯との比較はしませんでした。

金融ジェロントロジーへの注目

高齢社会における資産形成・管理を考える際、避けては通れないのが加齢による影響です。高齢期には認知症のリスクが高まりますし、認知症でなくとも心身の機能は低下していき、金融取引を行うための十分な能力が確保できないことが増えていきます。

ジェロントロジー(老年学)は、加齢による変化を踏まえて、高齢社会で社会や個人が抱える問題を解決することを目指す学問です。先に挙げた報告書(※)の中でも、高齢期は施設入居や介護など、これまでになかった大きな変化や支出があり得るためにマネープランを見直す必要性が生じる一方で、心身の衰えによって認知・判断能力が低下・喪失し得ることを重視しています。

これまで金融サービスは高齢顧客との取引を年齢によって制限することもありましたが、高齢期に認知・判断能力が低下することは前提として、個人が自らの資産を適切に利用していけるような仕組みとするように提言が行われています。金融ジェロントロジーについては、学術的な研究が積まれるとともに、一般社団法人日本金融ジェロントロジー協会が設立されて、アドバイザーの研修と資格認定が行われています。

※金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

高齢期ならではの懸念―お金を使えないことにも備えを

彩子さんの同僚が入院した際に、連帯保証人が求められたというエピソードがありました(詳しくは記事前半)。実は、入院の際に求められる保証人というのは、さまざまな役割を期待されていて、必ずしもそれは入院費を支払うことに限りません。お金に関していうと、お金が足りなくて費用が支払えないということだけでなく、医療機関や介護施設、その他高齢者にサービスを提供する企業などの懸念は「支払いの手続きができないこと」なのです。

高齢期には、せっかくお金があっても、お金を銀行口座から引き出したり、振り込みの手続きをしたりということが、心身の状況によって難しくなってしまう場合があります。おひとりさまに対しては、この懸念が大きく、保証人を強く求められたり、保証人がいないとサービスを受けられないことがあるのです。

社会福祉協議会が主に行っている日常生活自立支援事業や、法律専門職が主に提供する財産管理委任契約、認知機能や判断能力が低下したときに財産管理だけでなく身上監護(生活、治療、療養、介護などに関する法律行為を行う)も行う成年後見制度の利用などについて、あらかじめ調べ、必要があれば契約をしておくことも検討するとよいでしょう。

●前半の記事>> 彩子さん(50歳)が直面したおひとりさまの現実とは…

沢村 香苗/日本総合研究所 スペシャリスト

東京大学文学部卒業。同大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。研究機関勤務を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。研究・専門分野は高齢者心理学、消費者行動論で、「高齢者の身元保証人、身元保証等高齢者サポート事業に関する調査研究」など実績多数。著書に『自治体・地域で出来る!シニアのデジタル化が拓く豊かな未来』(学陽書房)。

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