医師が手洗いせず産後間もない母親が死亡…感染予防軽視が招いた悲劇【2月10日はどんな日?】
Finasee / 2023年2月10日 12時0分
Finasee(フィナシー)
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2020年1月にWHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスの発生を発表してから3年以上が経過し、ようやく世界が落ち着きを取り戻してきた今日この頃です。これからも自身や大切な人を守るために、身の回りの衛生に気をつけて生活したいですね。
2月10日は「ばい菌ゼロの日」です。今日は「ばい菌ゼロの日の由来」と「コロナ禍で拡大した衛生用品市場」、感染制御の父と呼ばれた「ゼンメルワイスの悲劇」についてご紹介します。
2月10日は数字が2→1→0と減るから一般社団法人日本記念日協会によると、2月10日を「ばい菌ゼロの日」としたのは株式会社A-one(エーワン)です。同社は建築物の清掃や点検を手掛ける企業で、感染症被害の削減を願って制定されました。2月10日としたのは、この日は数字が2→1→0と減るため、ウイルスやばい菌の数が減っていく様子になぞらえたそうです。
また、2月は新型コロナウイルスがまん延し始めた時期でもあります。NHKがまとめたデータによると、2020年1月末時点では累計感染者数は17人ですが、2月末には242人と14倍以上にまで拡大しました。
感染はその後も拡大を続け、2023年1月末で3253万2905人と、3年前の190万倍以上にまで増加しました。
出所:NHK特設サイト「新型コロナウイルス 国内の感染者数」
コロナ禍では衛生用品の市場規模が1.9倍に新型コロナウイルスは経済にも重い影を落としました。帝国データバンクによると、新型コロナウイルスに由来する、いわゆる“コロナ倒産”は2023年1月までに5077件に到達。倒産件数も一貫して右肩上がりに増加しました。
【新型コロナウイルス関連倒産の累計件数】
・2020年7月:361件
・2021年1月:960件
・2022年1月:2780件
・2023年1月:5090件
出所:帝国データバンク 新型コロナウイルス関連倒産
一方、新型コロナウイルスは衛生用品市場には追い風となりました。矢野経済研究所は、2020年度の家庭用衛生用品(※6品目)の市場規模は前年度の1.9倍以上に拡大したと発表しました。
※6品目:家庭用マスク、ウエットティッシュ、タオルペーパー、ハンドソープ、浴用固形せっけん、手指消毒剤
手洗いの重要性を訴えたゼンメルワイスの悲劇今では手洗いが感染予防に効果があると知られていますが、昔はそう重要だと考えられていませんでした。そんな中、ハンガリー出身の医師イグナッツ・フィリップ・ゼンメルワイス(1818年~1865年。以下ゼンメルワイス)は手洗いの重要性を訴えていました。
ゼンメルワイスは産婦人科部長のとき、同じ病院・同じ技術で治療をしているにもかかわらず、産褥熱(さんじょくねつ=産後の女性における熱性疾患)の死亡率が病棟で大きく異なることに気づきます。
違いは医療従事者にありました。死亡率が高い病棟では医学生の教育が行われており、医師たちは解剖の授業後にそのまま検診していたのです。当時は病原菌の存在は知られていませんでしたが、ゼンメルワイスは解剖後の医師に「死体粒子」が付着していると考え、手を消毒するよう義務付けました。その結果、産褥熱による死亡率は激減し、ゼンメルワイスは手指の消毒の有効性を見事に証明したのです。
しかし、当時の医学界はゼンメルワイスの功績を認めませんでした。ゼンメルワイスの発見は、当時の医学界の主張と対立していたためです。また感染の原因が医師にあるとしたことも、医学界に受け入れられなかった理由だと考えられています。
ゼンメルワイスは失職し、晩年は神経衰弱と思われる症状に苦しみます。そして1865年7月、精神病院の入院中にこの世を去りました。彼の功績を考えれば、あまりに不遇な結末といえるでしょう。
今日では彼の功績をたたえ、ゼンメルワイスは“感染制御の父”や“母親たちの救い主”と呼ばれています。手を洗うとき、母親たちを救うために奮闘したゼンメルワイスのことを思い出してみてください。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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