マイナンバーで財産が没収される? 1年後に迫った新紙幣発行との関係
Finasee / 2023年2月17日 12時0分
Finasee(フィナシー)
・待っているのは老いと死だけ…「君を忘れてしまう」無常に過ぎる現実
1946(昭和21)年2月16日、当時の幣原喜重郎内閣は新円切り替えを発表しました。新円切り替えから預金封鎖、財産税の課税が強制的に行われ、多くの国民が財産を失ってしまったのです。終戦後の日本に実際に起きた、事実上の国による財産没収でした。
1946年に日本で起きた預金封鎖とは?預金封鎖は、金融機関からの預金引き出しを制限することで国の財政を立て直す目的などで行われます。終戦後の日本だけに起きた特殊なイベントではなく、過去に世界各国で発生してきました。以下は2000年以降に実際に起きた預金封鎖です。
・2001年12月:アルゼンチンで銀行業務の停止
・2002年7月:ウルグアイで銀行業務の停止
・2013年3月:キプロスで預金封鎖とネット上の資金移動制限
預金封鎖は頻繁に発生するわけではありませんが、現代でも世界各国で行われていることが分かります。つまり、必然性があれば、今後も行われる可能性があるというわけです。
預金封鎖が起きた終戦後の日本の状況終戦後の日本はさまざまな要因が重なり、ハイパーインフレが起こっていました。最大の要因は戦時国債の発行により、終戦時の日本の債務がGDPの約2倍にまでなったことです。戦争にかかる莫大な費用は税金だけではとても賄いきれず、政府は大量の国債を発行していたのです。
また、終戦時に大陸からの引き揚げなどで国内の人口が急激に増加し、物資の供給が追いつかなくなりました。さらに、1945年はまれに見る凶作で食糧まで不足したのです。それらの負の連鎖により物の値段が上がり、猛烈なインフレが起きたというわけです。
インフレの抑制のために預金封鎖そこで、政府はインフレを抑えるために、預金封鎖を実行することにしました。2月16日に新円への切り替えを発表し、翌17日から預金封鎖が実施されたのです。
この政策の内容は、
1.2月17日以降、全金融機関の預貯金を封鎖
2.流通している10円以上の紙幣(旧円)を3月2日限りで無効とする(2月22日に5円券追加)
3.3月7日までに旧円を強制的に預け入れさせ、既存の預金とともに封鎖。新円を2月25日から発行し、一定限度内に限って旧円との引き換えおよび新円の引き出しを認める
というものでした。
出所:日本銀行 新円切り替えと証紙貼付銀行券
この政策では、預金封鎖と併せて「財産税」が課されました。課税対象には、預金だけでなく不動産も含まれました。財産税の税率は資産額に応じた累進税率で、最高90%という過酷なものだったのです。
預金封鎖と財産税によって流通するお金の量が減り、インフレは収束していきました。さらに、財産税の税収により、国の債務も減少しました。
インフレが抑制されて国の財政も改善されたとはいえ、それは多くの国民の犠牲のたまものです。このような悲劇が二度と繰り返されないことを願うばかりです。
今後の日本に預金封鎖が起きる可能性は?現在の日本の状況と当時の状況を比べると、似ている点がいくつかあります。そのため、近い将来に預金封鎖が起こるのではないかと危惧する声も聞かれます。
最大の問題は国の債務で、預金封鎖が行われたときと同様にGDPの2倍以上です。コロナ対策の支出増加により財政はますます悪化しています。また、小泉改革以降格差が広がり、一部の富裕層に富が集中しているのも共通点です。
このような状況で、来年新紙幣が発行されることが決まっています。新円切り替えと違い、新しい紙幣が発行されても旧紙幣が使用できなくなるわけではありません。しかし、日本の危機的な財政状況の中での新紙幣発行は、預金封鎖の前兆のように感じる人もいるようです。
国の債務は簡単に解消できるレベルではありません。預金封鎖ではないとしても、国民に痛みを伴う政策が行われる可能性は高いのではないでしょうか。
リスクヘッジとしての資産運用現在の日本で、すぐにでも預金封鎖が行われる可能性は低いでしょう。しかし、預金封鎖は予告なく行われます。ひとたび発令されれば、その後に資産を守ることはできないでしょう。安全だと思っていた銀行預金は、実はとても不安定な資産かもしれません。資産運用は、お金を増やすためだけでなく、資産を守るためでもあるのです。
預金封鎖に対抗できる資産は?国のマイナンバー制度やキャッシュレス決済の推進は、国民の財産を把握する目的もあるといわれています。もし、預金封鎖や財産税が課されるなら、マイナンバーでひも付けられる財産は没収されるかもしれません。マイナンバーと無関係なタンス預金も、新紙幣が発行されると紙くず同然になってしまう可能性もあります。
現状、有効と考えられるのは仮想通貨(暗号資産)や200万円未満の金の現物などです。2013年のキプロスの預金封鎖では、ビットコインが富豪たちの資産の逃避先だったといいます。ただし、それらについても法改正で、保有状況がガラス張りになる可能性はあります。あくまで、「現状できること」というわけです。
不安をあおるような内容になってしまいました。しかし、起こる可能性は低くても、ゼロではありません。起きたときのダメージの大きさを考えると、適切な対策が必要ではないでしょうか。
執筆/松田聡子
明治大学卒業後、ITエンジニア、国内生命保険会社での法人営業を経て、2007年より独立系FPとして開業。コンサルティングの他、企業型確定拠出年金講師や執筆活動に従事。人生100年時代を最後まで自分らしく生きるためのお金のアドバイスと情報発信がライフワーク。日本FP協会認定CFP、DCアドバイザー、証券外務員二種。
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