「夢かないそうもない」40代で“現実”知り焦燥…直面する老化の運命
Finasee / 2023年3月16日 12時0分
Finasee(フィナシー)
・政府が戦後初めて認めた“危機的”状況…「打つ手なし」に陥る恐れ
男性用化粧品メーカーの株式会社マンダムが、社会を支えるミドル世代の男性が生き生きと若々しく生きることを応援する日として、2011(平成23)年に「ミドルの日」を制定。3月16日を「ミ(3)ドル(16)」と語呂合わせすることで、同日を「ミドルの日」とした。
ミドルの危機は存在するのか?『広辞苑第七版』では、“中年”について「青年と老年の中間の年頃。40歳前後の頃」と定義している。一方、『Random House Unabridged Dictionary』では「the years between 45 and 65 or thereabout」と65歳ごろまでを中年としている。しかし、人生100年時代とまで言われるようになった昨今、遠からず70歳も中年の範疇に入るかもしれない。
「中年の危機」という言葉を目にすることがある。英語圏でも「midlife crisis」という言葉が定着しているが、家族間でさえ改めて話し合うことはなく、捉えどころのない感覚でもある。
しかし、現実には健康上の問題が出始め、老化を意識し始める頃だ。人は死ぬ運命にあるということを実感し始める時期でもある。長く抱いてきた夢や希望を実現できそうにない焦燥感にも襲われる。中には、長寿化で長生きする両親に対する経済支援が必要になる人もいる。こうしたことから、ストレスに見舞われるミドルは多い。
一方、長くなった人生、心機一転のうえ再スタートも可能な時期といえる。そのためにも、まずは体力づくりに励む人は多い。
運動することで、老化や死を早める疾病等を防御し得るとする専門家は多い。特定のがん、成人発症型の糖尿病、関節症などを防ぐことにつながる。
また、頭脳や精神の疲労には、体を動かし身体を同じ程度に疲れさせることで、かえって頭や心の疲れが打ち消せるとされる。体を動かすことで、中年特有のモヤモヤ感も吹き飛ばせるのではないだろうか。
コロナ禍で増大した新たな孤立感に悩むミドルコロナ禍ではリモートワークが拡大した。若い世代は新しい時代の流れに適応しやすいが、40~50代ともなると、従来からの対面での業務運営から脱しきれずにストレスを抱える人が増えるようだ。
東京都健康長寿医療センター研究所が、15~79歳の全国約3万人の男女を対象に、コロナ禍のせいで孤立感を感じたか否かを調査した。2021年の調査によると、40~50代では40代が25.7%、50代が25.3%と約4分の1が孤立感を持ったとする。しかも、前年の2020年の調査からそれぞれ約10%も増加している。
テクノロジーの急速な発展、若い部下の価値観の多様化、中間管理職としての上と下からの期待感の中での焦燥感など、数々の課題を解決するには、従来通り顔と顔を突き合わせて本音での業務を運営したい……。しかし、顔を合わせることもままならない現実に、ストレスがたまる一方のミドルは多いようだ。
ストレスを感じるのは、職場に限らない。家庭内での仕事が増加し、家族としょっちゅう顔を突き合わせる環境となり、子供への対応にも気を配らなくてはならない。
企業によると、家庭でも職場でもない、サードプレイスの設置に取り組むところも出てきた。職場外にコワーキングスペースを用意したり、喫茶店などでの仕事をバックアップしたりする企業もある。
ヤフーでは、全国どこで仕事をしてもいいとする画期的な方針を打ち出した。郷里に帰って仕事をしたり、あるいは生まれ育った都心から離れ、地方に家を建てることで生活基盤を移し、新天地で仕事に精を出す人も現れるだろう。地方で仕事をしながら、近隣の人たちとの交流でストレスの発散がスムーズになり、仕事の効率が上がるかもしれない。
長寿化の時代、ミドルは二段ロケットさらには三段ロケット噴射の時かつて“転職35歳限界説”という考え方が横行したが、終身雇用の日本では当然ともいえた。しかし、リクルートワークス研究所の調査によると、長年勤め上げたことに対して支給される退職一時金は減少する一方だ。2003年には平均の退職一時金は2499万円だったが、2018年になると1788万円と大きく減少した。終身にわたって一社で勤務することの是非が問われる時代となった。
むしろ35歳前後を含めたミドル世代は、新たなスキルを身につけ自己の価値を高める大切な時期となった。企業でもミドルのパワーアップを期待するところが増加し、スキルアップした人に対し、ジョブ型の人事体系で報酬面でも応えようとする企業が目立ち始めた。
パーソル総合研究所が2020年に調査した結果では、36%の企業が中高年のスキル・能力の不足が課題だとしている。NECでは、「NECライフキャリア」なる企業を創設し、中高年を対象とするキャリア開発やグループ内外への派遣・あっせんをサポートしている。東京海上日動火災保険は、中高年を対象とする「ライフシフト大学」を創設し、今後のキャリア設計へのサポートをするなど、企業の動きは活発だ。
ただ、キャリアの再開発は、あくまで個人が主体的に進めるべきものだろう。長い人生、現在所属する企業であろうと、転職先であろうと、新たに噴射するエンジンを自らが構築し稼働させるのは、一人一人の意識と行動にかかっているのではないだろうか。
執筆/大川洋三
慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。
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