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負債150億円超、格安旅行会社が“最悪”の破産…粉飾決算で社長は逮捕【3月27日はどんな日?】

Finasee / 2023年3月27日 12時0分

負債150億円超、格安旅行会社が“最悪”の破産…粉飾決算で社長は逮捕【3月27日はどんな日?】

Finasee(フィナシー)

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もしも予約したホテルから「予約はありません」と言われたらどうしますか? それがもし海外だったら? 6年前に破綻した格安旅行会社「てるみくらぶ」のケースで実際に起こったトラブルです。破綻時の記者会見で同社社長が「すでに出国した人は自力で対処してほしい」と発言し大きな話題を集めました。

新型コロナウイルスの影響で旅行会社の財務は悪化しました。旅行会社が破綻したらどうなってしまうのか、てるみくらぶを例に学びましょう。支払った旅行代金を取り戻す方法についても解説します。

旅行会社としてはリーマン以降で最大規模の破綻

てるみくらぶは2017年3月27日、東京地裁に破産を申請し即日受理されます。破綻時の負債はおよそ151億円。リーマンショック後では旅行業として最悪の規模となりました。

記者会見で同社社長が語ったところによると、てるみくらぶは航空券を手配する期日3月23日に支払いができなかったようです。24日には予約客に航空券が利用できない旨をメールで通知しました。破綻の前日には観光庁が立ち入り検査を実施しています。

被害が大きくなった原因の1つに同社が破綻の直前まで新聞広告を行っていたことがあるでしょう。てるみくらぶの破綻時、すでに代金を支払っていた顧客は8~9万人に上ります。うち約3000人は海外渡航中で、現地ホテルや航空券などの予約が取れていないといったトラブルに見舞われました。

てるみくらぶはサービスを提供できないと知りながら資金を集めるため旅行者を募り続けたと強く批判されます。東京商工リサーチによると、破綻時の負債総額151億円のうち100億円は一般旅行客に返還すべき金額でした。同社社長は破産前に自宅に現金を隠し破産法に違反した疑いで逮捕されています。

てるみくらぶ経営陣は粉飾決算にも手を出していました。決算書を改ざんし実態よりも経営状態を良く見せかけ、銀行から不正に融資を受ける手口です。てるみくらぶは虚偽の決算書に基づき三井住友銀行などから数億円の融資を受けていました。社長と経理責任者は詐欺の疑いで逮捕され2018年7月に実刑判決(経理責任者は猶予判決)が下されます。刑事事件にまで発展したまれに見る悪質なケースだといえるでしょう。

支払った代金の98%以上が失われる

旅行会社が破綻した場合、すでに代金を支払っていたらどうなるのでしょうか? これは旅行会社が破産前にどこまで業務を遂行したかによって異なります。

もしも破綻前に旅行会社が予約したツアーの手配を終えていた場合、その旅行会社が破綻した後でもツアーを続けられるでしょう。しかし破綻が差し迫った企業は一般に資金繰りに窮しているためこのケースは少ないかもしれません。

てるみくらぶのように旅行会社が必要な支払いをせずに破綻した場合、そのままではツアーは実施できないでしょう。追加の費用を支払うか予約を取り直すケースが考えられます。

破綻した旅行会社に支払った代金は取り戻したいところですが、一般的に破綻した企業は管財人の管理下に置かれ法的に処理が進められます。個別の返金には対応しないため清算配当(破綻企業に残ったお金を分け合うこと)を待たなければいけません。ただし破綻企業の財務に期待できないこと、税金や従業員の給与等の支払いが優先されることなどから、清算配当で返ってくる金額はわずかなものにとどまるでしょう。

東京商工リサーチによると、てるみくらぶの破産処理は事件から2年以上たった2019年9月に終わりますが予約客の配当率は1.9%にとどまりました。旅行代金として100万円支払った方が1万9000円しか返金されない計算です。

知っておきたい旅行会社破綻の保証制度

てるみくらぶのケースのように清算配当では旅行客は十分な補償を受けられません。そこでより消費者の保護を手厚くするために設けられている制度が「営業保証金制度」です。これは旅行会社に営業保証金として国にお金を預けさせ、破綻時にそこから弁済を行う制度を指します。海外旅行の募集などを行う第1種旅行業者は最低でも7000万円の保証金を預けなければいけません。

旅行業協会(日本旅行業協会、全国旅行業協会)に属する旅行会社は営業保証金制度に代えて「弁済業務保証金制度」があり、こちらは営業保証金制度の5分の1の保証金を預ける制度です。弁済はその5倍まで行われるため旅行者は営業保証金制度と変わらない補償を受けられます。

もっとも、てるみくらぶの場合はこれらの保証金制度も十分とはいえませんでした。同社は日本旅行業協会の会員だったため弁済業務保証金制度から1億2000万円が弁済されていますが、これは申し出があった金額のおよそ3.5%に過ぎません。旅行代金100万円に対して3万5000円しか取り戻せず、消費者には大きな負担が残ってしまいました。

出所:日本旅行業協会「株式会社てるみくらぶの認証結果について」

てるみくらぶは特に悪質なケースであり、通常のケースなら保証金制度で十分保護されるかもしれません。もし心配なら「ボンド保証制度」に加入している旅行会社を選んでみてはいかがでしょうか。日本旅行業協会の会員旅行会社が任意に加入する制度で、保証金制度に上乗せの弁済が受けられます。

【旅行会社の保証制度】

 

また、旅行代金をクレジットカードで決済した場合「支払い停止の抗弁権」を用い支払いを止められる可能性があります。

出所:日本クレジット協会「支払停止等の抗弁に関する手続きについて(ご案内)」

いずれも必ず代金を取り戻せる方法とまではいえませんが、知識として覚えておくとよいでしょう。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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