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「お金を払ってでも売りたい!」史上初、マイナス価格で取引された物

Finasee / 2023年4月20日 12時0分

「お金を払ってでも売りたい!」史上初、マイナス価格で取引された物

Finasee(フィナシー)

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新型コロナウイルスの感染拡大で初めて緊急事態宣言が発出された2020年4月、商品市場である記録的な出来事が起こります。原油先物が史上初めてマイナス価格で取引されたのです。それまでおよそ20ドル前後で取引されていましたが、4月20日にマイナス40.32ドルまで売り込まれました。

【WTI原油先物の値動き(2020年4月)】

Investing.comより著者作成

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マイナス価格で取引されたということは、「お金を払ってでも売ってしまいたい」という人がいたということです。なぜそのような動きが出たのでしょうか? 理由を確認しましょう。

マイナスで原油が取引された理由

原油先物がマイナスで取引された理由は「本物の原油を受け取りたくない投機筋が多く参加していたため」だと考えられます。

マイナス価格を記録したのは原油先物商品の1つ「WTI原油先物」です。先物取引とは将来のある時点での決済を約束して行う取引で、それまで売買せず期日を迎えた場合は何らかの方法で清算しなければいけません。

WTI原油先物の場合、決済の方法は現物の受け渡しです。つまり期日までWTI原油先物の買い(ロング)ポジションを持ち続けた場合、本物の原油を受け取らなければいけません。

石油業者のように原油の貯蔵施設を持つ参加者なら現物の受け渡しに応じられるでしょう。しかし、単に原油先物のトレードで利益を目指した投機筋にとって現物の原油は引き取れません。このため原油を受け取りたくない投機筋は取引最終日までに買いのポジションを手放す必要がありました。

マイナスを記録したWTI原油先物の取引最終日は4月21日で、投機筋は前日から買いのポジションの解消に動いたと思われます。WTI原油先物はマイナスまで取引され、最終日の21日も一時マイナス価格を記録しました。これが、原油先物がマイナスとなった主な理由です。

先物型ETFは「ロールコスト」に注意!

原油先物を直接取引する方は少ないでしょう。しかしETF(上場投資信託)を通じてこれら原油先物を取引している方は一定数いると思います。例えば「WTI原油価格連動型上場投信」はWTI原油先物に投資しているため、同ETFを買えば実質的にWTI原油先物に買いを行うことが可能です。株式と同じように取引できるほか、現物の原油を受け取る必要もないため手軽に取引できるでしょう。

しかし、これら先物型ETFに投資する場合は「ロールコスト」に注意しなければいけません。ロールコストとはETFが投資している先物商品が次の期日に切り替わる際に発生するコストです。

先物商品が取引最終日を迎えた場合、次に期日が近い銘柄が主に取引されます。例えば5月物の取引が終われば6月物が取引の対象です。先物型ETFも投資を継続するため次の期日に切り替える必要があり、これを「ロールオーバー」といいます。

そして原油先物商品は基本的に期日が近いものほど価格が低く、期日が遠いものほど高い傾向にあります。これは現物の原油を引き受けたときの保管コストが価格に反映されるためだと考えられており、このような状況を「コンタンゴ」呼びます。

コンタンゴが起きている場合のロールオーバーは「価格が安い期近の先物を売り、価格が高い期先の先物を買う」という取引となります。つまり「安く売って高く買う」不利な取引であり、ETFにとっては実質的なコストです。これをロールコストと呼び、このようなロールオーバーを繰り返す先物型ETFは減価していくため注意しなければいけません。

もちろんロールコスト以上に先物価格が上昇すれば先物型ETFも上昇します。また、原油先物は常にコンタンゴが起こるわけではなく、反対に期日が遠いほど価格が下がる「バックワーデーション」が起こる可能性もあります。この場合はロールオーバーでむしろ利益が得られるでしょう。

今後の原油価格の動向は?

2020年4月にマイナスを記録したWTI原油先物ですが、その後上昇し2022年2月には2014年7月以来初めて一時100ドル台を記録し、翌3月には130ドル台まで買われる場面もありました。

【WTI原油先物の値動き(月足2020年5月~2022年3月)】

Investing.comより著者作成

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原油価格高騰の背景にはロシアとウクライナの武力衝突があります。もともと新型コロナウイルスからの脱却に対する期待感などから原油価格は上昇傾向にありましたが、ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻すると原油価格はさらに上昇しました。

ロシアは世界的な原油産出国で、ウクライナはロシアからEUへ原油を運ぶ重要なパイプラインが通っています。両国が戦争状態となったため供給不安から原油価格が上昇しました。

ロシア・ウクライナ問題は流動的で依然どうなるか不透明です。昨今は落ち着きを見せてきた原油価格ですが、武力衝突の長期化や国際情勢により今後も目が離せません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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