“ある言葉”でイギリス人は爆笑、ドイツ人は憤慨…何を言った?
Finasee / 2023年5月1日 12時0分
Finasee(フィナシー)
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「世界笑いの日」は、笑いヨガ運動の創始者マダン・カタリア博士によって1998(平成10)年に提唱された記念日だ。2008(平成20)年7月28日にインドのムンバイで初めて開催されたが、現在は5月の第1日曜日(今年は5月7日)に実施される。
心身の健康を促し人間関係の潤滑油ともなる笑い笑うと、体内でエンドルフィンという物質が分泌されるそうだ。このエンドルフィンは、幸せ感をもたらす化学物質で、痛みも和らげる。苦しいときでも、あえて笑うことで苦難を乗り切ることが可能らしい。
ウイルスやがん細胞などを撃退するのが、リンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞だが、体内には50億ものNK細胞が存在する。ウイルスやがん細胞を激しく攻撃することで、各種の病気の根源を撃滅する。笑うことで、このNK細胞が活性化することが確認されている。結果として免疫力の向上につながるそうだ。
また、笑うことに認知症予防の効果があることも立証されている。一定期間にわたって継続調査する、いわゆる“縦断研究”で確認されたとして、福島県立大学の主任教授・大平哲也氏が冊子『公衆衛生』(vol.76 No.11:2012年11月)で紹介している。あわせ、同氏は週に1回の笑い療法が、高齢者のうつ症状や睡眠障害に有効であるとする海外の研究にも言及する。
笑いをもたらすユーモアが、人間関係の潤滑油になることは周知のことだ。話し相手に安心感を与えることで、お互いの関係を一層深めるとされる。昔から、こうした笑いの効果が体験的に察知されていたのだろう。数々の名言が各地に残されている。
「笑門来福」(笑う門には福来る)は、中国で古くから伝わり、日本でもよく引用される言葉だ。笑いは副作用のない妙薬として、笑うことを奨励する。英語圏にも「laughter is the best medicine」(笑いは最高の薬)ということわざがある。
古代ギリシャ時代の、医学の父と称されるヒポクラテスは「人は誰でも体の中に100人の名医を持つ」という言葉を残し、人間に自然治癒力のあることを力説した。笑いを通して、この自然治癒力である免疫力を強化できると示唆する。
笑いの中心となって築く前向きの場づくり笑いの中心になって陽気な場づくりに貢献しようにも、自らが陰気に沈み込んでいてはかなわぬ夢だろう。東大の教授で、日比谷公園の設計などに携わり“公園の父”とも称された故・本多静六氏が、明るくなれるための3法則を残している。
1つは、まず誰でも好きになること。目の前の人と同じ環境のもと同じような両親・兄弟等の中で育ったら、自分もその人と同じような考え方や行動をしたはずだと推測すれば、寛容の気持ちが芽生えるはずだ。
第2に、何事も果断決行で物事に取り組もうと説く。優柔不断でいると、心にしこりが残り言動が鈍ってしまう。
第3に、あらゆる不幸を甘受することの大切さを強調する。どんな不幸も耐え抜くことによって、かえって自らの姿勢に幸福感さえ芽生えるのではないだろうか。
一方、「自分の弱点を好きになれ」という人もいる。筆者なども、人生を振り返ってみると、むしろ弱点のせいで救われたことが数多くあったような気がする。
笑いのための環境づくりも欠かせない。落語や漫才を聴いたり、コメディーを見たりして気分転換することも必要だろう。ふざけた漫画やポスターをデスクのそばに置き、ストレスに負けないようにと努める人もいる。1日に1回、笑えることを見つける努力をすることで、いつの間にか性格が明るくなったという人もいた。
欧米では、エイプリルフールの習慣がある。特定の人を笑いの対象とするのではなく、人と一緒に笑うネタづくりだ。
いまだに忘れられないのは、ロンドンのビッグベンをデジタル化するので、不要になった時計針を興味のある人へ払い下げるというものだ。多くの人がだまされ、だまされたと気付いたときの爆笑の渦――誰も傷つけることなく思わずほほ笑んでしまう懐かしい思い出だ。
スイスでスパゲティが豊作となり、農家の人が樹木からスパゲティを収穫している映像が流れた。だまされた人々が次々と栽培方法を問い合わせたという話も興味深い。
ただ最近は、4月1日には関係なく流れるフェイクニュースも多く、用心が肝心だ。
ユーモアで人々の心をわしづかみした著名人アメリカのレーガン元大統領は、ユーモアに満ちた人だった。一度、狙撃され病院に担ぎ込まれたことがある。ベッドに横たわったとき、周りの医師たちに「君たちがみんな共和党であることを祈るよ」と冗談を言って周りを爆笑させたそうだ。大統領は共和党員だった。また、会議を始めるとき、みんなをユーモアでドッと笑わせた後、本題に入ったことでも有名だ。
元首相の吉田茂も度々ユーモアを発し、周囲を和ませた。寒い冬の総選挙の街頭演説で、外套を着たまま演説する吉田茂に対し、野次馬が「有権者に失礼だろう、外套(がいとう)ぐらい脱げ」と罵声を浴びせた。これに対し「外套を着てやるから街頭(がいとう)演説なのです」と応え空気は一変、大勢の聴衆が笑いをこらえきれず拍手喝采をしたそうだ。
イギリスが不況に苦しんでいるとき、経済学者のケインズに対して記者団の1人が「長期的に見て、われわれは一体どうなるのでしょうか」と不安げに質問した。経済の長期的予測など即答しようもない状況であり、一瞬返答に躊躇したケインズは、「さよう、長期的に見れば……」と一呼吸おいた後、「さよう、長期的に見れば、われわれはみんな死んでいます」と返した。返答の難しい経済の問題を言葉の範疇に切り替えたケインズに、ユーモアが好きなイギリスの記者たちは大爆笑となった。ただ、ドイツの特派員は、真面目に答えてほしいと息巻いたという後日談が残っている。
例を挙げればキリがないが、新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵略など、憂鬱なことに事欠かない昨今、時にはジョークを交わして暗雲をみんなで笑い飛ばしたいものだ。グループなど組織の絆が深まり、仕事がはかどるかもしれない。
執筆/大川洋三
慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。
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