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「親日家」元大統領の衝撃過去…ゲリラ活動で逮捕4回、獄中で拷問も

Finasee / 2023年5月20日 12時0分

「親日家」元大統領の衝撃過去…ゲリラ活動で逮捕4回、獄中で拷問も

Finasee(フィナシー)

・GHQが根負けした日本の“ある集団” 原爆投下わずか4年で復活したもの

「世界一貧しい大統領」として有名なウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領は1935年5月20日に首都モンテビデオで生まれました。

彼の名を世界に知らしめたのが、2012年にブラジルで開催されたリオ会議でのスピーチです。先進国による大量消費社会を批判したムヒカ氏の言葉は、世界中の人々に大きな影響を与えました。

彼の発したメッセージは地球上でウルグアイのほぼ反対側にある日本にも届き、多くの日本人が共感しています。ムヒカ氏の哲学にはコロナ禍に振り回された私たちが、再び力強く生きていくヒントが詰まっているのです。

リオ会議でのスピーチ

2012年6月にリオデジャネイロで行われた国連の持続可能な開発会議(通称リオ会議)では自然と調和した人間社会の発展や貧困問題について話し合われました。そこで登壇したムヒカ氏は次のような言葉を全世界の人に向けて投げかけたのです。

「ドイツ人が1世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てば、この地球はどうなるのでしょうか。私たちが呼吸できるだけの酸素は残されるのでしょうか?」

「私たちは発展するために生まれてきたのではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです」

ムヒカ氏は世界が共有する危機は環境問題ではなく、政治の問題であると主張します。資本主義社会の果てしない消費のサイクルを変えていかない限り、問題は解決しません。私たちはよく「グローバル化」という言葉を耳にしますが、実際には世界の諸事情をつぶさに知る機会はあまりないのではないでしょうか。そのために自分たちに不都合な事実からは目を背け、解決するはずのない抽象的な議論をしていたのかもしれません。

リオ会議でのムヒカ氏の言葉は、先進国の人々にとって耳の痛いものばかりでした。

「貧乏とは少ししか持っていないことでなく、いくらあっても満足しないこと」

ムヒカ氏の強烈なメッセージは、「人生で一番大切なものは何か」「本当の豊かさとは何か」という人生の本質を考えるきっかけを与えたのです。

極左武装派ゲリラから大統領に

ムヒカ氏が生まれたウルグアイは、ブラジルとアルゼンチンに挟まれた南米の小国です。1960年代からの経済危機により、極左武装組織「ツパマロス」の活動が徐々に拡大していきます。貧困家庭に生まれたムヒカ氏は大学卒業後にツパマロスに加入し、ゲリラ活動を展開。ここで彼は後に妻となり、政治活動を共にするルシア・トポランスキーと出会います。

ムヒカ氏の生涯の活動理念は貧困の撲滅でした。ツパマロスの活動では、自ら銀行の襲撃や身代金目的の誘拐などを実行。そこで奪ったお金を貧しい人々に配っていたのです。

その後、ツパマロスの活動は徐々に過激化していき、ムヒカ氏は4度も逮捕されました。4度目の逮捕では1972年から1985年まで投獄され、軍部の拷問を受けるなど過酷な獄中生活を送ることになります。その間、ルシアも捕らえられ、2人は別々の独房で13年間を過ごしました。軍政の終焉とともに、ツパマロスのメンバーは釈放されました。

ムヒカ氏はルシアや他の仲間とともに銃を捨て、中道左派政党「拡大戦線」に合流し政治家としての道を歩むことになります。1995年の下院議員選挙で初当選後、2010年3月から2015年2月までウルグアイの大統領を務めました。ムヒカ氏が大統領に就任したとき、ルシアは上院議長。13年も刑務所にいた武装派ゲリラの夫婦が、大統領とファーストレディーになったのです。

2人はムヒカ氏の大統領就任後も官邸には住まず、郊外の農場で暮らし続けました。また、報酬の90%を寄付し、古いフォルクスワーゲン・ビートルを自ら運転するという質素な生活ぶりで有名になります。

ムヒカ氏は大統領在任中の5年間で自身のライフワークである貧困対策に取り組み、貧困率を39%から11%に改善するなどの成果を上げました。

日本人へのメッセージ

コロナ禍の2020年に公開された映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』では、2016年に来日したムヒカ氏の様子が描かれています。

ムヒカ氏は子どもの頃からウルグアイに移住した日系人との交流があり、彼らから花の栽培を教えてもらったそうです。そのため、日本人の文化や精神性をとてもよく理解しています。

東京外国語大学での講演では、ムヒカ氏から熱意あふれるメッセージが日本の若者に贈られました。彼は「人生で一番大切なのは成功することでなく、歩むこと」と言いました。「刑務所に入っても、出所すればやり直せる。仕事を失っても、それで人生が終わるわけではない」。「歩むこと」とは、「今の自分にできることを愚直にやっていくこと」という意味のようです。

日本には近年のコロナ禍の影響から消費が冷え込み、経済的に苦境に立つ人がたくさんいます。また、ガソリン代の高騰や円安による諸物価の値上がりで、国民全体の生活が苦しくなっています。失業や収入減少などで必要以上にダメージを受けてしまうのは、物にあふれた生活に慣れてしまっているから。また、自分と他人を比べてはいないでしょうか。

ムヒカ氏は、あるインタビューで「人生で後悔があるとすれば?」という問いに対し「子どもがいないこと」と答えています。本当に大切なものや価値のあるものは、お金では買えないのです。私たちは自分が持つ真の財産に気付かないだけかもしれません。

執筆/松田聡子

明治大学卒業後、ITエンジニア、国内生命保険会社での法人営業を経て、2007年より独立系FPとして開業。コンサルティングの他、企業型確定拠出年金講師や執筆活動に従事。人生100年時代を最後まで自分らしく生きるためのお金のアドバイスと情報発信がライフワーク。日本FP協会認定CFP、DCアドバイザー、証券外務員二種。

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