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印税はたった1円!? CDが売れない…「食えない」アーティストの苦境

Finasee / 2023年6月9日 12時0分

印税はたった1円!? CDが売れない…「食えない」アーティストの苦境

Finasee(フィナシー)

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6月9日は「ロ(6)ック(9)」の語呂合わせで「ロックの日」と制定されています。分かりやすさから音楽ファンに浸透し、ロックにちなんだイベントが開催されるようにもなりました。ロックに代表される大衆文化は時代を象徴するものであり、時代の変化とともに楽しみ方も変わってきました。

バンドブームとともにCDの売り上げが上昇

【音楽ソフトの生産実績の推移】

 

出所:日本レコード協会「音楽ソフト 種類別生産金額推移」

日本では1980年代の終盤からバンドブームが起こり、ライブで人気を博したバンドが次々にメジャーデビューを果たしました。上記の表はアナログレコードやカセットテープなど全ての媒体での生産ベースの金額推移ですが、その大部分をCDが占めています。

CD市場は全盛期の3分の1に

音楽ソフトの売り上げのピークは1998年でミリオンセラーのシングルが14作もあり、アルバムも25作ありました。バンドブームから音楽ソフトの売り上げがピークとなる1998年までに、日本はバブル崩壊を経験しています。つまり、音楽ソフト業界の成長は景気とは関係なく起きたムーブメントだったといえそうです。

しかしその後、音楽ソフトの売り上げは急降下。2008年には3617億円と、1998年の6074億円からわずか10年で半分近くまで落ち込んでしまいます。さらに直近の2022年には2023億円と、全盛期の約3分の1になってしまいました。

CD離れが進行している間に、日本ではそれほどまでに「音楽離れ」が起きていたのでしょうか。もちろんそのようなことはなく、原因の1つは社会全体で進んでいったデジタル化の影響が考えられます。音楽業界ではアップルの「iTunes(アイチューンズ)」のようなダウンロードサービスや、YouTubeなどの動画配信サービスが登場しました。これらによって、より気軽に音楽が聴けるようになったことがCD離れを引き起こしたと考えられます。

デジタル化によって既存のモノやサービスが売れなくなる現象は、他の業界でも起きています。しかし、音楽ソフト業界のように市場規模が3分の1になるほどの衰退は、ほかに例がないかもしれません。

CDの衰退とライブの動員増加

【ライブの事業規模の推移】

 

出所:(一社)コンサートプロモーターズ協会「基礎調査推移表」

音楽ファンがCDを買わなくなってから、伸びてきたのはライブの動員です。上記は日本の主なコンサートプロモーターが加盟する一般社団法人コンサートプロモーターズ協会の正会員によるライブの事業規模の推移です。CD市場の縮小が始まった1998年以降に拡大しているのが分かります。音楽ファンは、日常はダウンロードやYouTubeなどで手軽に音楽を聴いて、好きなアーティストのライブを楽しむことを重視するようになりました。

サブスクリプションの台頭

2015年ごろからはサブスクリプションの音楽配信サービス(音楽サブスク)が登場し、今では日本人の4人に1人が利用しているといわれています。音楽サブスクとは毎月一定額の料金を支払うと、そのサービス内の音楽が聴き放題になるサービスです。「Spotify」や「AWA」など人気のあるサービスの月額料金は1000円程度が多く、その金額で数十万から数千万曲が楽しめます。今ではiTunesなどの楽曲に課金するダウンロードサービスを追い越すほどの人気になりました。

CD1枚が3000円くらいだとすると、音楽サブスクは音楽好きにとってはとてもコストパフォーマンスのよいサービスです。しかし、アーティストからすると、死活問題といえるほど経済的に過酷な状況になりました。

音楽サブスクでも、楽曲が再生されるとアーティストに印税が支払われます。その金額はサブスク会社ごとに異なりますが、1再生あたり1円あれば高い方だといわれています。

一方、CDならば売り上げの1%程度が歌唱したアーティストに支払われ、作詞作曲をした人には3~6%支払われる場合が多いようです。自作自演の3000円のCDが1枚売れた場合、アーティストは210円程度を受け取れるというわけです。

この水準で3000円のCDが1万枚売れれば、アーティストの収入は210万円程度です。CDが売れていた時代にメジャーデビューできれば、音楽で生活できる人も多かったと考えられます。

しかし、音楽サブスクでは1万回の再生でアーティストが受け取れる金額は、CDに比べてかなり少額です。1曲を何回も再生することもあるので単純比較はできませんが、よほどの人気アーティストでなければまとまった収入とはならないでしょう。

アーティストがサブスクを解禁する理由

アーティストにとっては経済的メリットの薄い音楽サブスクですが、多くのアーティストは音楽サブスクを解禁(自分の作品をサブスクで視聴可能にすること)しています。なぜ、利益の期待できないサブスクを解禁するのでしょうか。

それは、解禁しなければ自分の音楽を知らない人に聴いてもらう機会がほとんどないからです。Spotifyのユーザーは約5億人で、今でも増加中です。その巨大な市場にアクセスできれば、知名度のない新人アーティストにも自分の音楽を知ってもらうチャンスが広がります。音楽サブスクをきっかけに気に入ってもらえば、CDの購入やライブに足を運んでもらうことも期待できるのです。

ファンによるアーティストの支援が必要

音楽業界の構造が変化したことは、アーティストの力ではどうにもなりません。音楽サブスクは便利でお得なので今後も利用者は増加していくでしょう。しかし、そのためにアーティストが収入を得られず音楽業界から去っていく流れを止めるには、音楽ファンの力が必要です。コロナ禍で中止続きだったライブも、最近ではコロナ前と同様に開催されるようになりました。好きなアーティストのライブに足を運び、生の音楽を楽しんではいかがでしょうか。

執筆/松田聡子

明治大学卒業後、ITエンジニア、国内生命保険会社での法人営業を経て、2007年より独立系FPとして開業。コンサルティングの他、企業型確定拠出年金講師や執筆活動に従事。人生100年時代を最後まで自分らしく生きるためのお金のアドバイスと情報発信がライフワーク。日本FP協会認定CFP、DCアドバイザー、証券外務員二種。

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