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年額400万円超。「国会議員、優遇されすぎ」と批判が集中した「議員年金」とは

Finasee / 2022年7月8日 11時0分

年額400万円超。「国会議員、優遇されすぎ」と批判が集中した「議員年金」とは

Finasee(フィナシー)

7月10日の投票日に向け、いよいよ大詰めの参議院選挙。毎回選挙になると社会保障が重要な争点の1つとして挙がりますが、議員を務めた人向けの「議員年金」という制度があったことをご存じでしょうか?

どのような制度で、どのような経緯で廃止されたのか――この時期だからこそ、あらためて紐解いていきたいと思います。

国会議員にも地方議員にもそれぞれの年金制度があった!

現在、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人には国民年金に加入する義務がありますが、かつて国会議員や地方議会議員には、これとは別にそれぞれ「議員年金」という独自の年金制度がありました。

国会議員向けの「国会議員互助年金」は2006年4月に、地方議会議員向けの「地方議会議員年金」は2011年6月に廃止されて現在はありません。

国会議員互助年金とは…

まず、国会議員互助年金制度より支給される年金(普通退職年金)については、国会議員としての在職期間が10年以上あり、引退し65歳になれば支給されることになっていました。

その保険料と年金額が気になるところでしょう。保険料(納付金)は年間約126万円で、かなり高いですが、受給できる額は10年の在職で年間412万円となっていました(※退職時期が1994年12月以降の場合)。さらに、国会議員としての在職期間が1年増えるごとに受給額が8万2400円増額することになっているため、在職20年で494万4000円、30年で576万8000円となり、在職期間が長ければ長いほど年金額が高くなります(50年を上限)。また、在職期間が10年に満たなかったとしても、3年以上の在職期間があれば、掛けた納付金の8割が一時金として支給されることになっていました。

なお、在職50年以上の国会議員について、衆議院や参議院の議決があった場合は、憲政功労年金という、年額500万円(1987年改正後)支給される年金もありました(2003年廃止)。

国民年金・厚生年金と比較すると「おいしい」制度…批判の末、廃止に

国会議員互助年金の納付金と給付額が以上のようになるのに対して、国民年金保険料の場合、年間20万円程度(2022年度)、10年(120月)納付した場合に受けられる老齢基礎年金は年間19万5000円程度(2022年度)となります。

また、厚生年金に加入して毎月の標準報酬月額が最高等級の65万円、年2回の賞与でそれぞれ標準賞与額が最も高い150万円の場合だと、厚生年金保険料が年間99万円程度の負担、これを10年掛けた場合に受け取れる老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計は年間75万円強となります。最も高い報酬・賞与で厚生年金を10年掛け続けたとしても、年間412万円の年金を受け取ることはできません。

こうして見てみると、国会議員の年金は、国民年金や厚生年金といった制度と比較するとかなり優遇された制度であると言えます。当然、国会議員の“特権”となっていることや、また、給付財源として納付金で足りない分を補う国庫負担(税金の負担)が7割もある点への批判もありました。その結果として、国会議員互助年金は廃止されることになりました(※廃止前の加入期間分について、減額された年金で支給、一時金で精算など、廃止による措置はあります)。

地方議会議員の年金も財政悪化で廃止に

一方、地方議会議員の場合は、1961年7月に任意の互助年金として開始した後、1962年12月に地方議会議員年金として強制加入の制度となりました。地方議会議員年金(退職年金)の受給に必要な議員の在職期間は12年で、受給開始の年齢については、1995年改正以降は原則65歳となっていました。また、在職12年未満の場合でも3年以上在職している場合は在職期間に応じた退職一時金が支給されました。

その掛金は標準報酬月額(議員報酬を元に決定された額)に掛金率を掛けて算出し、また、特別掛金として期末手当に掛金率を掛けて算出するという、厚生年金と似たような仕組みを採っており、実際に受給できる退職年金についても、平均標準報酬年額や乗率を用いて計算されます。退職年金の平均額は、都道府県議会議員が年間194万円、市議会議員が年間103万円、町村議会議員が年間68万円となっていました(2011年3月末時点、総務省「(旧)地方議会議員年金の概要」より)。

こちらも加入者からの掛金のみではなく、地方公共団体による公費による負担(都道府県:約42%、市町村:約39%〈特例あり〉)もありましたが、議員特権であるとの批判に加え、財政悪化(市町村合併による議員数の減少による掛金の減少、積立金の枯渇)を理由として、給付水準の引き下げ等を行いながら廃止に至りました(※廃止前の加入期間分について、年金の支給、一時金での精算など、廃止による措置はあります)。

今後、何らかの形で議員向け年金制度が復活する可能性も…?

参議院選挙投票日を目前とした中、議員の年金について取り上げてみました。

批判が大きかったことから廃止されましたが、国会議員、地方議会議員ともに現職のまま亡くなることもある一方、引退して年金に頼る生活を送ることもあるでしょう。引退した元議員にとっても、年金収入は老後生活の重要な基盤であることは私たちと変わりません。議員年金が廃止されて10年以上経過していますが、昨今、議員年金を復活させようという議論も出てきています。当然のことながら、その復活には反対意見も多数出ています。一方で、地方議会の人材確保という点から地方議会議員を厚生年金の加入対象とするべきという意見もあります。

今後の議論次第では、議員のための年金制度が変わることも予想されます。ウォッチしてみるのも面白いかもしれません。

 

五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。

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