65歳になったら…「リタイア or 今の勤め先でアルバイト契約」どちらが正解?
Finasee / 2022年9月5日 11時0分
Finasee(フィナシー)
相談者のプロフィールとお金データ
【橋本 渉さん(仮名)プロフィール】
・年齢:64歳
・都道府県:東京都
・家族構成:1歳上の妻と2人で暮らす(専業主婦・公的年金はすでに受給中)
・職業:定年後再雇用制度を利用し、フルタイム勤務
【寄せられたお悩み】
「大学卒業後の入社以来、一時期の在宅勤務を除き、日々家と会社を往復するだけのような会社員を続けてきました。趣味と言えば仕事を通じて覚えたゴルフくらい。60歳で定年を迎えてから再雇用でフルタイム勤務を継続(一部、特別支給の老齢厚生年金も受給)していますが、それも65歳で終わりです。
65歳でいよいよ本格的な年金生活になると思ったところ、65歳以降は週3回の勤務のアルバイト契約(社会保険加入)で70歳まで勤務できると会社から案内されています。さすがにもう仕事を辞めたいと思いながらも、働く体力もありますし、アルバイト契約の条件も月給換算で20万円程度と悪くありません。
貯蓄もあり、企業年金(有期年金あるいは一時金で受給選択)も受け取れますが、自分の亡き後に妻や子へ遺せるものを考えると老後資金には余裕があるほうが望ましいですし、老後をどのように過ごしたらよいかも悩みどころです」
【お悩みの論点】
①老後資金はあるはずだが、今後の働き方と老後の過ごし方が気になる
②貯蓄も企業年金もあるがその位置づけ、使い方は?
③公的年金はどのように受け取るのがよいのか?
世帯の金融資産額:2500万円
内訳
預貯金:2500万円
収支
<収入>
・世帯の毎月の手取り収入:45万円(妻の公的年金7万円を含む)
・手取りの年収:540万円
<支出>
・毎月45万円
<支出内訳>
住居費6万円※、水道光熱費4万円、食費6万円、交通費2万円、通信費4万円、貯金10万円、趣味4万円、交際費3万円、その他6万円
※ 修繕にかかる費用、固定資産税、火災保険料など
長い間会社に勤務し、まもなく65歳を迎える橋本さん。これまでは会社中心の生活で「ついに退職の時が来て年金生活になる」と思ったところ、65歳からは週3回のアルバイト契約の打診が来ているとのこと。「人生100年時代」と言われ、65歳以降の人生も長いこととなるでしょう。65歳以降のことについて、今回は老後資金面だけでなく、老後の過ごし方という点も含めてご提案します。
注意すべきは、急激な環境の変化による喪失感65歳でお辞めになるつもりだったところでの週3回の延長勤務のお話、どうしたらいいか迷うところでしょう。
大学卒業以来、これまで月曜日から金曜日まで(場合によっては土日祝日も)会社に行っていたところ、65歳で完全にお辞めになると、それが突然なくなってしまいます。そうして急にできるのが、自由時間です。
ご家族と過ごす時間もあると思いますが、それ以外で自由時間をどのように過ごすかというところ。これまで以上に趣味のゴルフを楽しむ時間も取れるようになるでしょう。しかし、趣味とはたまにやるからこそ楽しめるもの。平日だけでなく土日も含め、毎日ゴルフやその練習を続けていると、いずれ飽きてくるかもしれません。また、当然のことながらゴルフにはお金もかかってしまい、あまりゴルフに費やすと家計に影響を与える可能性もあります。
そうなると、これまで生活も人間関係も会社中心だったからこそ、余った時間をどのように過ごしたらよいか分からなくなるかもしれません。会社中心の生活から自宅中心の生活へとなると、急激な環境の変化です。出勤する会社がなくなった喪失感も大きいかもしれません。
完全リタイアまでの移行期間の過ごし方が大事そのような中で65歳から70歳までの5年間はアルバイト契約で、厚生年金や健康保険など社会保険も加入して勤務できるとのこと。5年間週3回アルバイト勤務をすれば、引き続き給与収入を得られるだけでなく、65歳で完全に退職する場合と比べ時間を持て余すことも少ないでしょう。引き続き勤務する体力はあるとのことですので、週3回勤務も無理のない範囲の勤務と言えるのではないでしょうか。
それでも、フルタイム勤務から週3回勤務になるため、会社に行かない日が今よりは増えることにはなります。70歳までの5年間、会社に出勤しない日でゴルフ以外の新しい活動を見つけたり、会社外の新しい人間関係を広げたりしながら、70歳以降の生活に向けて備えるのがよいでしょう。70歳を「完全リタイア」の時期と定め、65歳から70歳までの5年間はその時に向け、徐々に慣らしていくための移行期間と位置付けてみるということです。この5年間を有効に使えれば70歳以降も充実した日々を送ることができるでしょう。
公的年金を「繰下げ受給」する選択も視野に65歳以降今より勤務時間と給与収入が減っても、70歳まで可能な限りアルバイト契約で勤務すれば、その間給与収入(月額20万円)があります。また、65歳の奥様が受給されている公的年金(月額7万円)も収入に計算されます。
しかし、これらだけでは今の支出は賄えないでしょう。そこで、足りない分はこれまで準備してきた貯蓄や企業年金の一部を生活費に充ててみるのがよろしいかと考えられます。そうなると、65歳から受給可能な公的年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)については受給時点ではまだ必要ないかもしれません。終身受け取れる公的年金の特徴を生かし、受給が必要のない間は受け取らず、例えばアルバイト勤務が終わって給与収入がなくなる70歳を迎えてから、繰下げ受給を選択してみてはいかがでしょうか。
70歳から繰下げ受給(5年間の繰下げ)をすると、65歳までで掛けてきて計算された年金を42%増額できます。さらに、70歳から増額された年金で生涯支給されることになります(繰下げ受給自体は75歳まで・84%増額まで可能)。また、アルバイト勤務で65歳から70歳まで厚生年金に5年加入して掛けると、その分も受給額にプラスされます。
老後資金の枯渇を防ぐためにも勤務の継続は有効な一手アルバイト勤務をしない場合は、65歳から70歳までの間、生活費に充てる貯蓄・企業年金が多くなったり、橋本さんの公的年金をすぐ受給する必要が出てきたりするでしょう。貯蓄等には限りがあり、公的年金の額も70歳繰下げの場合よりも少なくなってしまいますので、将来長生きした場合の老後資金としては不安が残るかもしれません。
短時間でも5年間(65歳から70歳まで)の勤務による給与収入、貯蓄・企業年金での補填、70歳受給開始の公的年金収入を組み合わせれば老後資金の枯渇を防ぐことができますし、ご自身の亡き後にご家族の方に遺せる資産も増えるでしょう。もちろん、65歳から70歳までの間に急な支出、退職、病気などの事情があって、計画通りには進まないこともありえますが、まずは65歳以降の勤務を希望されてみるのがよろしいかと考えます。
***老後資金の面だけでなく、リタイア後の過ごし方も含めてトータルで考えることが重要です。健康にはご留意のうえ、65歳以降も、充実した時間を過ごし、お金のことでの不安を感じることがなければ一番ですね。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。
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