巧妙なワナが潜んでいる!? “お得そうな響き”とは裏腹の投資信託に注意
Finasee / 2023年1月10日 11時0分
Finasee(フィナシー)
岸田首相が打ち出す「資産所得倍増プラン」に関する報道が耳目を集めているように、投資による資産形成に多くの人の関心が寄せられています。人生100年時代を迎えつつある日本において、これからは「預貯金がわりに投資でお金を育てる」ことは必須になると言えそうです。
とはいえ、「どんな商品を選べばいい?」「株価チャートの値動きが気になってしまう」etc. 投資にまつわる不安は多くの人について回るもの。
こうした不安に対し、これまで数千人に資産運用のアドバイスを行ってきたIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)福田 猛氏は、“買った後はほうっておけばいい”投資信託の「積み立て投資」こそが、シンプルかつ最高の投資法だと提唱します。
そんな投資信託の「積み立て投資」について、その本質や“最高”であると言える理由、そして具体的な商品選びまで、分かりやすく解説されたのが書籍『お金の不安から一生自由になれる考えない投資生活』です。
今回は同書の第3章「コロナ禍でも勝てた人の習慣」の一部を特別に公開します(全3回)。
●第2回を読む
※本稿は福田 猛著『お金の不安から一生自由になれる考えない投資生活』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
「分配型」は巧妙なワナが隠されているNG商品と覚えておこう投資信託の初心者は「毎月分配型」をすすめられることがあります。
その名の通り、「毎月いくらかの分配金を受け取ることができる商品」で、毎月キャッシュが入るのはお得なような気がします。
定年退職後のシニア世代にとって、貯金が減っていく生活は不安なものです。だから、年金にプラスして「分配型」を受け取りたいと考える気持ちもよくわかります。
しかし、分配型は買ってはいけないNG商品のひとつです。投資の世界は、「いい」と思われているものが、実はよくないという例が山ほどあるので、あちこちにワナが潜んでいると思ってください。
問題点1 元本が削られている
分配金は、必ずしも運用した利益から分配されているとは限りません。実際は運用益からではなく、元本を取り崩している商品が多いのです。
つまり、10万円投資をして、1万円の分配金を受け取ったとしたら元本が9万円になっているわけです。
QUICK資産運用研究所の2017年の調査によると、毎月分配型で純資産総額(残高)が上位10位に入るファンドのうち、運用益だけで分配金をまかなえているファンドは1本もありませんでした。これでは、資産を増やすどころか、減らすために投資をするようなものです。
問題点2 資産の増え方に差が出る
結論から言えば、毎月分配型は、「複利運用効果」が得られません。
たとえば、利回り年5%の投資信託商品に1万円を投資します。すると、1年後には1万500円になります。最初にこの投資を「再投資型」と設定しておけば、翌年は「1万500円」を新たな元本にした運用ができます。すると〝利息が利息を呼ぶ〟と言われる複利効果が生まれます。
けれど毎月分配型(あるいは「受取型」の設定)は、「1万500円」から数百円を分配に回します。すると、複利効果が得られないどころか、元本が減っていくことすらあるわけです。これでは、ほったらかし資産運用は夢のまた夢でしょう。
「元本が削られても良い。一定額を取り崩しながら運用したいんだ」
こういう意向の人は、何も毎月分配型の投資信託を選ぶ必要はありません。
楽天証券等では投資信託を購入した後、「取り崩し設定」ができます。自分自身が必要な金額を取り崩しながら運用できるのです。人によっていくら受け取りたいかは異なりますので、運用会社に「分配金」を機械的に決められるのではなく、「毎月1万円を取り崩そう」などと自分で決めるほうがよいでしょう。良い投資信託を購入し、取り崩し設定をしたほうが、毎月分配型を購入するよりもおすすめです。
こういう問題点を事前に知っておけば、分配型を選ぶ人はほとんどいないでしょう。
とくに長期で積み立てる場合は、分配金のない投資信託でないと、毎月投資したお金の一部が戻ってくるようなものです。だからつみたてNISAの対象の商品には分配型は含まれていません。
自分で探すなら地味でいいから実績のある「ロングセラー」を探すべき昔は、出前のバイクと言えばホンダのスーパーカブでした。
発売されたのは1958年と、実に50年以上も世界中の人に乗られてきました。その数、累計6000万台以上。
決してモードなデザインではないですし、スピードもそれほど出ない。それにもかかわらず世界中で愛されているのは、安くて丈夫だから、の一言に尽きます。
世界中のバイクの中でもっとも燃費がいいと言われ、東南アジアの国では平気で5、6人乗りしていますが、壊れません。
投資信託でもそういった世間の荒波を乗り越えてきたロングセラーの商品を見つけられれば、資産運用の強力な味方になります。
新しいモデルの車やバイクはカッコいいし、性能もいい。しかし、流行はすぐに終わってしまうかもしれません。ロングセラーの商品は見た目だけではない、信頼できるだけの材料がそろっています。
独自に調査したところ、日本株を10年以上運用している投資信託で、TOPIXに年率3%以上勝っているファンドは、全体の5%以下でした。
10年前後の実績がないと、信用できる数字は取れません。
運用は多くの人が考えている以上に運の要素が大きく、幸運なファンドマネージャーと腕がいいファンドマネージャーを見分けるのは非常に難しい。
また、10年間は成績が良くても、ファンドマネージャーが交代していたら、そこから先は悪化する可能性もあります。
試しに楽天証券の投資信託のページで、「運用年数10年以上~」ならびに「ファンドスコア(運用実績がよいもの)10年の5つ星」で検索をかけてみてください。
約2700件の商品で該当するのは100件前後です。そこからさらに純資産100億円以上などの条件を加えると、半分以下に減ります。いかに長期間、いいパフォーマンスを保っているのは難しいのかがわかります。
投資信託に限らず、どんなロングセラー商品も、愛され続けるのには理由があります。そして、「考えない投資生活」を過ごしていくのなら、なぜ愛されているのか、その理由を知っておく必要もあるでしょう。
ファンドマネージャーの腕が良かったのか。投資対象の市場がたまたま好調だったのか。それとも継続的にパフォーマンスを向上させる仕組みがあるのか。それを知っておけば、安心してほったらかすことができるのです。
お金の不安から一生自由になれる考えない投資生活福田 猛著
発行所 飛鳥新社
定価 1364円+税
福田 猛/ファイナンシャルスタンダード代表取締役
同志社大学卒業後、大手証券会社を経て、2012年ファイナンシャルスタンダード設立。大手金融グループに属さない「IFA(独立系アドバイザー)」として、中立公平な立場からこれまで数千人をサポート。2020年一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会の理事に就任。著書に「プロがこっそり教える資産運用のはじめかた」(毎日新聞出版)など。
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