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抗がん剤の副作用も対象!? 障害者手帳は必要? “もしも”の時の大きな支え「障害年金」とは

Finasee / 2023年1月17日 11時0分

抗がん剤の副作用も対象!? 障害者手帳は必要? “もしも”の時の大きな支え「障害年金」とは

Finasee(フィナシー)

例えば、バス等公共交通機関に乗る際、「障害者手帳」を提示している方を見かけたことがあると思います。その方々は病気やケガが原因で障害が残った場合に障害者手帳の交付を受けています。

一方、年金の世界にも「障害年金」が存在します。一言でいえば、万が一の病気やケガになってしまった際、その後の生活を支えるために一定額が給付される制度です。

ともに「障害」とつくために、障害者手帳がないと障害年金は受けられないとイメージする方はとても多いのですが、本当にそうなのでしょうか?

障害年金も2階建て

まずは、公的年金制度の障害年金から解説します。

障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があります。年金の世界でよくいわれる「2階建て(基礎+厚生)」は障害年金においても同様です。

障害基礎年金は障害の重いほうから障害等級1級、2級に該当している場合が対象で、一方、障害厚生年金は1級、2級のほか、2級より軽い3級に該当している場合を対象としています。

障害基礎年金は定額(2022年度の年額:1級は97万2250円、2級は77万7800円)、障害厚生年金は本人の厚生年金加入記録に基づいて報酬比例で支給されます※1。

※1 障害等級1級の場合は報酬比例の年金(2級・3級)の1.25倍の額で計算されます。厚生年金被保険者期間が300月未満の場合は300月にみなして計算し、また、3級の場合は障害基礎年金がないため58万3400円(2022年度の場合)の最低保障額があります。

障害認定日(初診日から1年6カ月経過した日または1年6カ月前に治癒した日)に障害等級に該当し、その他受給に必要な要件(保険料納付要件等)を満たせば、障害年金の請求をして、受給できるようになります。また、障害認定日時点で障害等級に該当していなくても、その後65歳になる前に障害等級に該当して請求すれば受給できるようになります(事後重症請求といいます)。

なお、20歳前の国民年金未加入中に初診日のある障害の場合は、少なくとも20歳になってから障害基礎年金の対象になります。

障害年金の対象となる障害とは?

障害年金の対象となる障害は、視覚・聴覚といったものから、肢体(指といった末端から、歩行などその範囲はさまざまです)、また循環器、呼吸器、嚥下機能、腎機能といった内臓疾患に関わるもの、さらには精神疾患まで広範囲です。意外に知られていませんが、抗がん剤の副作用もその内容によっては障害年金の対象になることがあります。いずれも共通しているのは、等級によって程度の差はあるにせよ、日常生活に制限があるということです。

必ずしも「この病名だから障害年金が受けられる」「この病名だから何級」と決まるわけではなく、原則として障害年金請求時の診断書の内容をもとに障害等級の判定がされることになっています。

障害者手帳の等級と、障害年金の等級は異なる

一方、障害がある場合に障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳)が交付されることもあり、障害者手帳にも障害の程度に応じた障害等級が表示されています。交付されれば税法上の障害者控除が受けられ、税金の負担が軽減できます※2。また、冒頭にあげたような、公共交通機関等の割引も多くの場合、障害者手帳の提示が求められます。

※2 障害者手帳の交付がなくても、介護を受けている場合などで障害者控除を受けられるケースもあります。

しかし、障害年金と障害者手帳は別制度(さらにいうならば、根拠とする法律が異なります)。障害年金の等級と障害者手帳の等級は異なるもので、身体障害者手帳に等級が1級と書いてあるからといって、必ず年金も1級で受給するわけではありません※3。

※3 身体障害者手帳は1~6級、療育手帳はA1、A2、B1、B2(※自治体によって、手帳の名称、等級の表記が異なります)、精神障害者保健福祉手帳は1~3級に区分されています。

その一方で、例えば、肢体の障害で人工関節を入れた場合は、障害者手帳は発行されなくなってきているなか、障害年金については3級と判定されて障害厚生年金を受給できるケースが大半です。このように、障害者手帳がなくても障害年金は受給できる場合もあります。

つまり、冒頭の「障害者手帳がないと、障害年金は受け取れないのでしょうか?」に対する答えは、「(別制度なので)そうとは限らない。手帳がなくても、障害年金が受給できるケースはある」となります。

障害年金にも時効がある!? 思い込みで判断は禁物

障害年金の障害等級に該当し、その他受給に必要な要件を満たしているにもかかわらず、その請求をしていないこともあります。その主な理由は「自分は障害年金の対象とならないと思っていた」「障害年金について知らなかった」というものです。

例えば、大腸がんが原因で人工肛門を造設した場合、身体障害者手帳では主に4級と認定され、一方、障害年金では3級と認定され、両者の等級は異なっています。障害者手帳の4級という等級から「障害年金は3級以上でないと受けられない」と思い込み、障害年金の請求をしていないこともあるでしょう。

障害の種類にかかわらず、障害年金の時効は5年です。障害認定日にすでに障害等級に該当していて、その障害認定日から5年を過ぎてから請求をすると、5年前まではさかのぼって年金を受けられますが、それより前までの分は時効により受け取れないことになります。また、障害認定日後に障害等級に該当した場合の事後重症請求については、請求した月の翌月分から支給されますので、請求が1カ月遅くなるごとにその分受け取れるはずの年金が受け取れなくなってしまいます。

従って、早めの手続きがいかに大事かということになります。障害が残るほどの病気やケガだと、心理的負担が大きく、また、療養やリハビリなどもあって大変な状況となりますが、その後の経済的な負担を少しでも軽減できる制度はないか、年金事務所や市区町村へ確認、相談をすることは忘れないようにしておきたいところでしょう。

 

五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。

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