「夫婦の年金は16万円でローンの残債1000万円…」老後破産を回避する、超シンプルな「お金の育て方」
Finasee / 2023年1月30日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
相談者・横山紗枝さん(36歳・仮名)は、自営業の夫・亮平さんと2歳の子どもと暮らす会社員。
ある時、保育料が6万円から2万円になった通知から、亮平さんの収入に大きな異変があったことが発覚します(その詳細は、前編『妻あぜん…完全別財布・収支不干渉のイマドキ夫婦が直面した“危機的な状況”』にて解説)。
その“事件”をきっかけに、今後必要となる資金について洗い出そうと夫婦でFP前田菜緒さんの元に訪れます。
後編では、2人が準備すべき資金の必要額やその根拠、そして具体的にどうそのお金を作っていけばいいのかについて、前田さんよりアドバイスを送ります。
*** 教育費と老後に必要な金額は?まず紗枝さんご夫婦がこれから準備しておきたい教育費はお子さんの大学費用です。お子さんが大学生になる頃には、亮平さんは50代後半。体力が衰えて収入減少の可能性がありますから、大学にかかるお金は全額を準備しておきたいところです。費用は受験費用と大学在学中にかかるお金平均で約700万円というデータ*がありますから、受験費用込みで700万円をみておくとよいでしょう。
*日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」より。
次に老後費用です。お2人の「ねんきん定期便」を拝見したところ、このまま亮平さんが個人事業主を続けるなら、老後の年金は60万円の老齢基礎年金と会社員時代に作った30万円の老齢厚生年金、合計90万円(年間)ということが分かりました。会社員であれば、これから働くことで厚生年金を増やすことができます。しかし、個人事業主の亮平さんは厚生年金に加入しませんから、30万円の厚生年金は増えることなく、そのまま老後の厚生年金になります。
一方、会社員の紗枝さんは、老齢基礎年金と老齢厚生年金合計で150万円(年間)ほどありそうです。夫婦合計すると240万円ですが、社会保険料や税金を差し引くと月の手取りは約16万円ほどになるでしょう。老後も住宅ローンが残っているうえ、リフォームや修繕が発生する可能性もあり、貯蓄が必要なことは明らかです。
亮平さんは、教育費の必要額と老後の年金額を初めて知り、ようやく現状のままではマズいと気づいたようです。では、今後どのように対策をとればよいでしょうか。
教育費はNISA、老後資金はiDeCoで準備まず、教育費は現在学資保険150万円があるのと、紗枝さんがお子様17歳時点で400万円になるよう積立をしているとのことですから、残り150万円を作ればよいことになります。
ここでのポイントは教育費は日ごろの引き落とし等で使う口座とは別で管理すること。必ず教育資金専用口座を作り、そこで積み立ててください。これが、夫婦別財布でも、貯蓄をしっかりするためのコツになります。
お子様はまだ2歳。15年もの時間が残されていますから、つみたてNISA(2024年からは新NISA)を利用するのもよいでしょう。
次に老後資金です。老後資金の補強はやはりiDeCoです。個人事業主の場合、65歳まで加入できる人とできない人がいますが、亮平さんは65歳まで加入できます。というのも、65歳まで加入できる人の条件として、「国民年金の保険料納付済期間が40年に達していないこと」という条件があり、実は過去に未納がある亮平さんはこの条件を満たすことになるのです。
65歳になるまで国民年金に加入すれば、5年分の未納期間も取り戻すことができます。紗枝さんは「(夫に)年金の未納があることは知っていたので、取り戻せるならよかったです。でも、未納だからiDeCoに65歳まで加入できるんですね」と言います。
紗枝さんの言う通り、60歳まできっちり保険料を納めた人は60歳以降、国民年金に加入することはありませんから、iDeCoにも加入できません。iDeCo加入は国民年金加入が前提だからです。しかし、2022年12月に厚生労働省の審議会でiDeCoの加入年齢を70歳に引き上げることが示されたところです。亮平さんにも影響あるかもしれませんから、今後の制度改正は注目しておきたいところですね。
さて、老後を65〜95歳の30年として、例えば、生活費を月5万円補強するなら今から約6万円をiDeCoで積み立てる必要があります。「6万円!? 厳しいな」と驚きつつも「でも、そのくらいは必要ということですよね」と、ようやく亮平さんも資産形成の必要性に理解を示してくれました。
しかし、これで安心してはいけません。夫婦2人とも退職金がないうえ、老後は住宅ローンがまだ1000万円ほど残る見込みです。繰上げ返済する余裕はなさそうですし、紗枝さんもiDeCoで資産形成を行いたいところです。例えば、月2万円を65歳まで29年積み立てると約700万円になります。29年かけて700万円を住宅ローン残高の1000万円にする平均利回りは2.5%です。
もし、月2万円の積立が厳しいなら1.5万円に減額して4%程度の利回りを狙っていけば、1000万円を作ることができます。積立額は減るものの、利回りが上がる分リスクも増えますから、紗枝さんの考えに合う方法を選んでください。ちなみに、iDeCoの積立額は年に1回いつでも変更可能です。
夫婦別財布でも家計の「経営計画」は共有する最後に、夫婦別財布でも家計や資産形成がうまくいくポイントをお伝えします。
それはズバリ、家計の「経営計画」を一緒に作成し、実行することです。今後もお互いの収入支出に干渉しないスタイルを続けてもかまいません。しかし、家計を経営するために「計画の共有」は必要です。将来のための必要貯蓄額を共通で認識し、資産形成を実行するのです。
その際、お互いの収入と支出および貯蓄状況を情報共有することになるでしょう。しかし、干渉することと情報共有は別です。家計の経営計画を実行していれば不干渉は問題ではないのです。
紗枝さんは「お金の話は、なんとなくお互い避けてきた気がします。でも将来のお金のことを共有するのは、家族のために必要ですよね。iDeCoはすぐに始めます」と言っていました。
相談後、亮平さんは「将来のこと、実は何も考えていませんでした。老後もどうにかなると思っていましたが、マズいですね」と言った後、紗枝さんに「前みたいに働くか〜。体が勝負の仕事だから、働けるうちに働いておいた方がいいね」と言っていました。
将来の家計を考えるにあたって、具体的な資金計画はもちろん大切ですが、まずは「今のままではマズい」と認識することが一番大切です。紗枝さんはこの言葉を聞けたことが、今回の相談の一番の成果だったようです。
前田 菜緒/ファイナンシャルプランナー
FP事務所AndAsset代表。ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。大手保険代理店に7年間勤務後、独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。子連れでセミナーに行けなかった自身の経験から、子連れOK、子どもが寝てから開催するなど、未就学児ママに配慮した体制で相談やセミナーを実施。経済的理由で進学をあきらめる子をなくしたいとの想いを持ち、活動中。
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