日本が誇る電機メーカーが衝撃の大型倒産…負債1030億円超、業界は衰退
Finasee / 2023年2月5日 11時0分
Finasee(フィナシー)
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かつて日本の電機メーカーは世界をリードする存在でした。特に液晶テレビなどのディスプレーは世界で大きなシェアを握ります。しかし2000年代以降に韓国や台湾といったアジア勢の台頭が相次ぎ、国内のディスプレーメーカーは衰退していきました。4年前に起こった「MT映像ディスプレイ」の経営破綻も、日本のディスプレー産業の凋落を印象付けるものでした。
2018年度最大の倒産劇MT映像ディスプレイは、松下電器産業(現パナソニック)と東芝が2003年に共同で設立(※実質的な事業開始)した会社です。ブラウン管の製造を手掛けますが、液晶との競争が激しく、また独占禁止法の違反が指摘されたことから、2009年には早々に事業停止に追い込まれました。
MT映像ディスプレイは独占禁止法違反にかかる対応のため、事業を停止しつつ会社だけ存続している状態が続いていましたが、公正取引委員会の手続きが終結したことから、2019年2月5日に清算手続きが開始されます。倒産時の負債額は1030億円以上となり、大型の倒産が相次いだ2018年度においても最大でした。
【2018年度の主な倒産企業】
出所:東京商工リサーチ
日本のお家芸「ディスプレー」が衰退した理由近年、ディスプレー市場における日本のシェアは低下の一途をたどっています。生産額ベースでいうと、2010年はまだ約2割のシェアを持っていましたが、市場規模の成長についていくことができず、2021年では6%台にまで低下しました。
【ディスプレーデバイスの生産額と日系企業のシェア】
電子情報技術産業協会「電子情報産業の世界生産見通し」および日本銀行「時系列統計データ検索サイト」より著者作成拡大画像表示
日本はもともとテレビや映像再生機器といったAV機器市場では高いシェアを握っていました。現在も世界生産の約2割は日系企業が担っているとみられており、決してシェアが低いわけではありません。
しかし世界のニーズは、従来のAV機器からタブレットやスマートフォンといった次世代の通信機器へ移っていきます。日本の電機メーカーも参入しますが、海外勢との競争が激しく、うまくシェアを伸ばすことができませんでした。携帯電話に至っては、国内においてもアップルに市場の4割以上を握られています。
【最もよく利用する携帯電話のメーカー上位3企業(2022年)】
出所:モバイル社会研究所 モバイル社会白書 2022年版
日本は、新しい市場に乗り遅れただけではありません。それまで得意としていたAV機器における売り上げも大きく失ってしまいました。タブレットやスマートフォンは多機能で、テレビなどが担っていた機能の多くが搭載されています。そのため、従来のAV機器はタブレットなどに取って代わられるようになり、市場そのものが小さくなってしまったのです。
これらが原因で日本の電機メーカーは苦戦するようになり、ディスプレー部門の撤退や再編が相次ぎました。
ジャパンディスプレイが連発する「世界初」の技術は切り札になり得るか電機メーカーの再編で誕生した企業といえば「ジャパンディスプレイ」が知られます。ソニー、東芝、日立のディスプレー部門を統合し、2012年に事業を開始しました。2014年3月には上場も果たしています。
しかし同社は2014年3月期を最後に利益が出ておらず、2022年3月期まで8期連続で最終赤字となりました。継続企業の前提に疑義が付されており、破綻の可能性は決して低くありません。ジャパンディスプレイは借入金や子会社の売却で当座をしのぎますが、経営の先行きは不透明です。
そんなジャパンディスプレイは昨年、新技術の発表が相次ぎました。マスクレス蒸着技術や3D撮影技術など、「世界初」を冠するリリースが5回も発表されています。
【ジャパンディスプレイが2022年に発表した主な技術】
・3月:高移動度酸化物半導技術および超高移動度酸化物半導体技術
・5月:マスクレス蒸着かつフォトリソ方式有機EL「eLEAP」の量産技術
・6月:フレキシブルLTPS TFT圧力分布センサー
・10月:自由照明「LumiFree」の量産技術
・11月:通常の映像とデプスマップの双方を取得する3D撮影技術
ジャパンディスプレイは、技術の高さを武器に業績を改善できるでしょうか。今後の動向が注目されます。
【ジャパンディスプレイの業績】
※2023年3月期(予想)は、同第2四半期時点における同社の予想出所:ジャパンディスプレイ 決算短信
【ジャパンディスプレイの株価】
Investing.com より著者作成拡大画像表示
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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