NTTが「世界一」の企業に! 投資初心者も株に殺到…歴史的暴落の末路【2月9日はどんな日?】
Finasee / 2023年2月9日 7時0分
Finasee(フィナシー)
・日本が誇る電機メーカーが衝撃の大型倒産…負債1030億円超、業界は衰退
かつて日本企業が世界の時価総額ランキング上位を独占していた時代がありました。その代表格がNTT(日本電信電話)です。同社は36年前の2月9日に上場し、一時は世界最大の時価総額を持つ会社になりました。
上場で株価2.7倍! 世界一の時価総額にNTTは1987年、政府が保有していた同社の株式を1株119万7000円で放出することで上場します。現在では見られないほど高額ですが、上場すると投資家の買い注文が相次ぎ、160万円もの初値(上場して最初の株価)が付いたのは翌日のことでした。
その後も人気は衰えず、株価は同年4月に売り出し価格の約2.7倍となる318万円に到達します。値上がりを見て取引に参入する個人も多く、上場後2年間で160万人もの人が株主となりました。現在の株主数が約90万人ですから、いかに多くの人がNTT株式を保有していたかがうかがえます(2022年9月末時点)。
株価の上昇を受け、NTTは当時世界で最も時価総額が大きい企業となります。この時期、日本はバブルの絶頂で、多くの日本企業が時価総額の上位にランクインしていました。
【1989年の時価総額ランキング(世界)】
・1位:NTT(1638.6億ドル)
・2位:日本興行銀行(715.9億ドル)
・3位:住友銀行(695.9億ドル)
・4位:富士銀行(670.8億ドル)
・5位:第一勧業銀行(660.9億ドル)
・6位:IBM(646.5億ドル)
出所:内閣府 選択する未来2.0 第3回会議資料
NTT株を急落させた「ブラックマンデー」とは上場直後は快調だったNTT株式も、その後は低迷します。そのきっかけの1つが「ブラックマンデー」でした。NTTが上場した1987年の10月19日に起きた、ニューヨーク株式市場の歴史的な暴落のことです。代表的な株価指数「NYダウ(ダウ工業株30種平均)」は、1日で22.6%もの下落を記録しました。
原因として、当時アメリカでインフレ懸念が台頭したこと、新しく導入されたプログラム売買が下落を増幅させたことなどが指摘されています。ブラックマンデーは海外にも波及し、世界的に株価の急落を引き起こしました。日本の株式市場も株価の下落は避けられず、多くの投資家が損失を被ります。
【NYダウと日経平均株価(1987年1月5日=100)】
Investing.comおよび日経平均プロフィルより著者作成拡大画像表示
その後はバブルの崩壊もあり、NTT株式は売り出し価格を割り込みます。ITバブルでいったんは回復したものの、それもはじけると再び売り出し価格を下回り、長く安値圏に沈みました。
ただし、配当込み株価では2017年に売り出し価格を上回りました。その後も現在までおおむね右肩上がりに上昇しています。また近年は業績もよく、2022年3月期まで3期連続で最高益を稼ぎ出しました。
【NTT(日本電信電話)の株価】
Investing.comより著者作成拡大画像表示
【NTT(日本電信電話)の業績】
※2023年3月期(予想)は、同第2四半期時点における同社の予想出所:日本電信電話 決算短信
大型IPOが不人気な理由NTTの上場は多くの個人投資家を惹きつけましたが、現在では大企業の新規上場は人気が高いとはいえないようです。その理由の1つに、初値に期待しにくいという点があります。
新規上場(IPO)では公募(株式を新たに発行すること)や売り出し(既存株主が保有株式を放出すること)を通じ、上場前に株式が個人投資家の手に渡ります。既存株主は上場から一定期間は売却が制限されるケースが一般的ですが、個人投資家にこのような制限はありません。従って、新規上場株式の配分を受けた個人投資家は、上場後に売り手に回ることが想定されます。
大企業の場合、新規上場時の公募や売り出しの株数が多い傾向にあります。つまり、多くの株式が個人投資家に割り当てられるため、上場後の売り圧力が強くなることが懸念されるのです。事実、2022年のIPOでは、資金吸収額(※)が大きいほど初値騰落率(※)が悪化する関係にありました。
※資金吸収額:IPOにおいて、公募株式と売り出し株式で投資家から集める金額。「公開価格×(公募株数+売り出し株数)」で算出される。
※初値騰落率:公開価格に対する初値の上昇率または下落率
【資金吸収額と初値上昇率(2022年)】
日本取引所グループ「新規上場会社情報」およびヤフーファイナンスより著者作成拡大画像表示
これらから、新規上場株式は大型より中小型の銘柄の方が投資家の人気が高くなる傾向にあります。IPOに応募する際は、公募株数や売り出し株数をチェックしてみてはいかがでしょうか。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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