最新DC 投信マーケット解説 2023年1月号
Finasee / 2023年1月31日 7時0分
Finasee(フィナシー)
DCガバナンスの視点から受託者責任を果たす目的で、投資信託のモニタリングや入れ替えを検討・実施する企業も少しずつ増えています。そこで、投資信託のモニタリングに役立つDC商品マーケットの最新状況を、投資信託評価会社である三菱アセットブレインズの標氏に解説していただきます。
※この記事は、2023年1月26日(木)に実施したWEBセミナー「 最新DC 投信マーケット解説 2023年1月号」を記事化したものです。
——早速2022年10月-12月のDCマーケット状況について伺いたいと思います。まずはアセットクラスごとのパフォーマンスをお聞かせください。
下記、図1は過去2年間のファンド分類別の累積パフォーマンスを示したものです。2021年は外国REITや外国株式が好調で大きく上昇しましたが、2022年は金利が上昇基調で推移したことから、軟調なパフォーマンスとなりました。また、外国債券や国内債券などの債券カテゴリーでも金利上昇により債券価格が下落し、苦戦が目立っています。
2022年10月-12月の推移をみると、10月は米欧の中央銀行である、米国のFRB、欧州のECBによる政策金利引き上げのペースが減速するのでは、との期待を受け反発しましたが、12月には再び利上げに対して積極的な方針が示され、景気悪化懸念から外国株式などが下落しました。日本では、12月20日に日銀が長期金利の許容変動幅を±0.25%から±0.50%へ拡大すると、市場では実質的な利上げと受け止められ、長期金利や円相場が上昇し、国内株式のカテゴリーなどが下落しました。
図1 分類別累積パフォーマンス 拡大画像表示
※ 公社債投信等を除くDCファンド(専用・共用)について月間収益率をカテゴリー別に単純平均し、 24ヵ月前を100として指数化したもの。出所:三菱アセット・ブレインズ次に分類別に直近3ヵ月間のパフォーマンスランキングを確認します(図2)。まず、2022年10月にパフォーマンスが良かったのは、外国株式と外国REITのカテゴリーです。外国株式、外国REITともに、+8.4%となりました。前月の9月に大幅下落していたことや、前述のとおり利上げペースの減速期待が高まったことから、上昇しました。
11月は、エマージング株式のカテゴリーが+4.7%上昇しました。中国のゼロコロナ政策修正に伴う経済活動再開への期待から、中国株式ファンドなどが上昇したことが影響しました。
12月は、再び景気悪化懸念が強まり、株価が下落・金利が上昇した影響により、全てのアセットクラスのリターンがマイナスとなりました。
図2 分類別パフォーマンス 拡大図表示
※ 公社債投信等を除くDCファンド(専用・共用)について各期間別の収益率をカテゴリー別に単純平均し作成したランキング表。出所:三菱アセット・ブレインズ——2022年10月-12月のDCファンドの状況について教えてください。
ここではDCファンドの資金流出入動向について確認します。図3のとおり、10月の資金流出入額は約620億円の流入超、11月は約500億円の流入超、12月は約900億円の流入超となりました。おおむね安定的に資金流入傾向が継続しています。
12月の流入額は11月から約400億円も増加したことになります。相場が軟調に推移したことから、逆張り思考を持つ一部の加入者が資金を投資信託に振り向けたものと考えられます。資金流入額は、多い順に、外国株式型(319億円)、複合資産型(308億円)、国内株式型(167億円)となりました。国内株式型は11月に流出しましたが、12月は流入に転じました。これにより、すべてのアセットクラスが資金流入超となりました。
図3 ファンド分類別 月間流出入額推移(DC専用ファンド) 拡大図表示
※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ次に直近6ヵ月の資金流出入額の累積は、外国株式型が1,532億円、複合資産型が1,570億円と人気を二分しています(図4)。外国株式型は若年層から、複合資産型はシニア層から、人気を集めているようです。リスク許容度の高い若年層は積極的に外国株式型で運用する一方、リスク許容度の低いシニア層では安定的なリターンが見込める複合資産型で運用する人が多いようです。
図4 ファンド分類別 直近6ヵ月資金流出入額累積(DC専用ファンド)拡大図表示
※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズでは、続いて、個別ファンドではどのようなファンドに資金が流入しているのか確認しましょう。今回は外国株式型と複合資産型の2つのアセットクラスについてみてみます。
まず、外国株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します(図5)。ランキング表のとおり、上位15本のうち13本がMSCIコクサイ指数などの世界株価指数に連動するパッシブファンド、インデックスファンドとなりました。世界の株式市場に投資をするという商品性の分かり易さのほか、運用管理費用が相対的に安いことが要因と言えるでしょう。一方、相対的にコストが高いアクティブファンドからは、「野村世界好配当株投信(確定拠出年金)」が7位にランクインしました。こちらのファンドは2005年5月に設定された、長期の運用実績を有するファンドです。北米、欧州、アジア・オセアニアの3つの地域の株式に分散投資を行い、配当利回りを重視した運用を行っています。昨今の投資環境も反映して、配当やバリューといった運用スタイルのファンドにも一定の資金が流入しているようです。上位15ファンドでは唯一、直近6ヵ月のリターンがプラスとなっている点にも注目です。
図5 2022年12月 外国株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示
※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ次に、複合資産型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します(図6)。ランキング表のとおり、上位15本のうち12本がパッシブファンド、インデックスファンドとなりました。外国株式型と同様に、複合資産型ファンドでもパッシブファンドの割合が多くなりました。アクティブファンドでは、「野村DC運用戦略ファンド」が2位にランクインしました。当ファンドは国内外の株式・債券・REITで運用する9本のマザーファンドに分散投資するバランスファンドです。各マザーファンドでは各アセットクラスのベンチマークに概ね連動させるパッシブ運用を行いますが、各アセットクラスの投資割合は市場環境に応じて機動的に変更されます。各アセットクラスへの資産配分を固定するのではなく、運用のプロに適宜調節してもらいたいという加入者にとっては魅力的な商品と言えるでしょう。
図6 2022年12月 複合資産型(DC専用ファンド) 拡大図表示
※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ——最後に、直近DC向けにどのような商品が設定されたか教えていただけますか?
新規設定ファンドでは、10月から12月にかけて、アクティブファンドが5本、パッシブファンドが1本、計6本が設定されました(図7)。
10月に設定された、「<DC>次世代REITオープン」は、米国のコーヘン&スティアーズという、REITのアクティブ運用では世界最大級の資産規模を有する運用会社が運用します。「次世代REIT」とは、人口構造の変化や情報技術の進歩等の恩恵を受けて高い成長が見込める「新しい分野のREIT」を指すようです。現在は、通信塔やデータセンターなどの「テクノロジー関連REIT」、物流施設などの「ロジスティクス関連REIT」、シニア向け住宅などの「ニュースタイル関連REIT」に注目しています。
他方、11月に設定された、「One国内株式ESGフォーカスファンド<DC年金>」は、環境・社会に関する課題を解決する事業を行う企業や、課題解決に向けた環境変化に積極的に対応できる、ガバナンスが優れた企業に投資します。TOPIXをベンチマークとして運用を行い、ESG調査対象銘柄を絞込み、ESG調査を経て組入候補銘柄を選定したうえで、約50銘柄~100銘柄のポートフォリオを構築します。
また、投資先企業に対しては、ファンドマネジャーや同社の株式アナリスト、ESGアナリストが協働して、エンゲージメント活動を行っています。エンゲージメント活動とは、企業と「建設的な目的を持った対話」を行うことで、企業価値の向上や企業が抱える課題の解決を促すための活動を言います。
ESG投資はグローバルで注目度が高まっている分野であり、DCの世界でも近年いくつかのESG関連ファンドが設定されています。まだまだ、各ファンドの残高は小さいですが、今後少しずつ人気を集めていくかもしれません。
図7 2022年12月 新規設定ファンド(直近30本、過去2年間) 拡大図表示
※ 公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ以上、パフォーマンス動向、資金流出入動向、新規設定ファンド動向をお話しさせていただきました。
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