国債「利回り35%」の衝撃…政府の信用失墜で暴落、経済混乱の恐怖【2月11日はどんな日?】
Finasee / 2023年2月11日 11時0分
Finasee(フィナシー)
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2008年9月のリーマンショックの陰に隠れがちですが、実はその後も大きなショックが連続的に発生しました。「ギリシャショック」はその代表的な事例です。ギリシャの信用力が失墜し、共通通貨「ユーロ」でつながるEUは同国の支援を余儀なくされます。
13年前の2月11日、EU諸国はギリシャを支援することで合意したものの、事態は収束せず、数年にわたって影響が続きました。ギリシャショックは、EUに共通通貨のもろさを突き付けたケースといえるでしょう。
ギリシャショックとはギリシャショックは、同国で起きた政権交代を機に顕在化します。
2009年10月に新民主主義党から全ギリシャ社会主義運動へ政権が移り、ギリシャの財政赤字が隠蔽されていた事実が明らかになりました。それまで同国はGDP比5%程度の赤字としていたところ、実際には約13%に上ることが判明します。
これを受け、米格付け会社のフィッチはギリシャ国債の格付けを「A」から「Aマイナス」へ、さらに同年12月には「BBBプラス」へ引き下げました。他の主要な格付け会社も追随し、ギリシャの信用不安が台頭します。同国債の価格は暴落し、利回りは10年物で35%を超えるほど急騰しました。
【ギリシャ10年国債利回り】
Investing.comより著者作成拡大画像表示
これをきっかけに、ギリシャに多額の融資をしていたEU主要国や、財政赤字が比較的大きい南欧の国々でも信用不安が懸念され、ギリシャ問題はEU全体の問題となります。
ギリシャはEUやIMFから支援を受ける見返りに、厳しい財政健全化の道のりを歩みます。その代償は大きく、同国経済は大きく落ち込んでしまいました。
【ギリシャ実質GDP成長率】
IMF「World Economic Outlook Database(October 2022)」より著者作成拡大画像表示厳しすぎ? EU加盟国が負う財政規律
EUは経済の異なる国々が参加し、ユーロという共通通貨を支える仕組みとなっています。ギリシャショックで見られたように、参加国で財政悪化が表面化すると、ユーロ全体が揺らぎかねません。
そこで、EUは参加国に一定の財政規律を課しています。年間の財政赤字をGDP比3%以内にすること、また債務残高をGDP比60%以下とすることが主な柱です。日本の場合、前者はGDP比5.9%の赤字、後者は256.9%となっており、どちらも満たすことはできていません(2021年)。
【EUが加盟国に課す主な財政規律要件】
・年間の財政赤字をGDP比3%以内にする
・債務残高をGDP比60%以下にする
・債務残高がGDP比60%超となった場合、毎年5%ずつ削減し、20年以内にGDP比60%以内の水準とする
もっとも、これらの基準はEU加盟国にとっても簡単な水準とはいえないようです。特に新型コロナウイルスに対する経済対策を実施して以降、多くのEU加盟国がこれらの基準を超える状況に陥りました。EUは財政健全化を加盟国に求めていく方針ですが、道筋は険しそうです。
【2021年における主要国の財政収支と債務残高の推計値(対GDP)】
出所:財務省 財政に関する資料
ドイツ依存が強まるEU経済2016年の国民投票から起こったイギリスのEU離脱問題(いわゆるブレグジット)は、EU発足以来の大事件でした。これにより、EUは重要な資金源を失うことになります。
EUでは「多年次財政枠組み(MFF:Multiannual Financial Framework)」と呼ばれる7年単位の予算が組まれます。主に加盟国の拠出金によって運営され、経済規模が大きい国ほど多くのお金を拠出する仕組みです。
イギリスは2020年の予算までは多くの資金を供給していました。しかし同国がEUを離脱したため、残りの主要国が拠出割合を増やし、イギリスの穴を埋めています。特にEU圏で最大の経済規模を持つドイツは、より大きな負担を強いられるようになりました。
【EU主要5カ国の拠出割合】
欧州委員会「EU spending and revenue 2014-2020」および「EU spending and revenue 2021-2027」より著者作成拡大画像表示
EU予算だけでなく、実体経済でもドイツの立場が強くなっています。主要5カ国におけるドイツの経済規模はおよそ3割程度でしたが、イギリスが離脱したことで残りの4カ国に対する割合は4割を超えることとなりました。EUにおけるドイツの役割は、ますます重要なものになっています。
【EU主要5カ国の名目GDP比(米ドルベース)】
IMF「World Economic Outlook Database(October 2022)」より著者作成拡大画像表示
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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