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「新NISAは金持ち優遇」の声に自民党・中西健治氏がNOという“これだけの理由”

Finasee / 2023年2月9日 11時0分

「新NISAは金持ち優遇」の声に自民党・中西健治氏がNOという“これだけの理由”

Finasee(フィナシー)

多くの個人投資家にとって、嬉しいサプライズとなった「NISA拡充」。2024年のスタートを前に、新NISAを自身の資産形成にどう活かしていくかを考えることが必須といえそうだ。今回は、そんな新NISA実現のキーパーソンである、自民党財務金融部会長・中西健治氏へのインタビューを公開する(前後編の後編)。

●前編:自民党・中西健治氏「必要性を訴え続けた」。NISA拡充に向け党内論議をまとめた“過程”

※本稿はfinasee Pro「NISA大変革 永田町のキーパーソンに聞く 自民党財務金融部会長・中西健治氏」(2022年12月28日掲載)を再編集したものです。

***
 

政府は2024年1月にNISAを恒久化し、その投資枠を年360万円に拡大する。自民党税制調査会(税調)のメンバーや公明党からは「富裕層への優遇になる」との慎重論が相次いだなか、元JPモルガン証券副社長で自民党財務金融部会長の中西健治氏らが制度を拡充する必要性を力説し、与党内の方向をまとめた経緯があった。その中西氏が党内論議を振り返り、新NISAが日本の金融市場に及ぼすインパクトについて語った。

なかにし・けんじ 1964年生まれ。東大卒、JPモルガン証券へ。2006年に副社長。10年、参院議員。21年より衆院議員(神奈川3区)。自民麻生派。

――与党内には一般NISAの拡大に懐疑的な見方もありました。

自民税調のインナー(ベテラン幹部)や公明党には2つの懸念があったようです。投資枠の拡大が「お金持ちへの優遇」と批判されかねないとの意見と、低位株への投資に使われて万馬券のように儲かった利益に課税しないのは本末転倒だという意見です。私のように金融の世界にいた人間からすれば、この程度の優遇で超富裕層が動くとは思えません。中所得層への恩恵のほうが、はるかに大きい。なかにはNISAを使って特殊な買い方をする人はいるかもしれませんが、それは別にNISAに限った話ではないですし、それをもって多くの方の資産形成に役立つ制度を否定する論理にはならないと主張しました。何とか消極的な方々を説得できました。

――年間投資枠の拡充幅の大きさはサプライズでした。

日本のNISAのモデルになった英国のISAは、年間投資枠が最大2万ポンド(約330万円)です。24年からのNISA新制度は、つみたてNISAの年間投資枠が120万円、一般NISAを引き継いだ「成長投資枠」が240万円で、合計360万円まで広がります。年間の枠では本家に引けを取るどころか、本家を超えます。一方で生涯投資枠は1800万円を上限と定め、そのうち成長投資枠の上限を1200万円としたのは現時点では致し方ありません。すでにNISA口座をお持ちの方が、枠の上限まで活用している状況ではないからです。24年から始まる「成長投資枠」は、目いっぱい資金を入れ続けても5年は使える設計です。枠を使い切る方が多いかどうかを見極めながら、生涯投資枠の拡大に向けた議論を進めていきます。

つみたてNISAについて述べますと、年間投資枠が現行の40万円では12カ月で割り切れず、使い勝手の悪い設計になっていました。それが年間120万円と3倍に引き上げられ、1カ月あたり10万円ずつ積みたて投資できるようになります。月10万であれば相当な期待を集めるのではないでしょうか。例えば将来的に月10万円くらいずつ返済する住宅ローンを組もうとしている世帯が、あらかじめ「つみたてNISA」で10万円ずつ積みたてておいてローンの頭金をつくるような活用法がありますね。

さらに私がずっと主張してきた「つみたてNISA」と「一般NISAの後継制度」(成長投資枠)の併用も実現できました。従来は一方しか選べませんでした。「どちらか選べ」となれば、制度を利用したくても「どちらにしようか」と迷ってしまうのは当然です。ライフステージに合わせて、どちらも使えるようになるのは大きい。あと、「つみたてNISA」や「成長投資枠」を使って買った投信や株を売却した後に別の金融商品を買う場合、投資枠の「再利用」が可能となります。非課税期間が無制限となっても、長い目でみれば投資先の業種に栄枯盛衰はつきものです。今までのように、一旦ある業種の株式に投資してしまったら、その投資枠を再利用できないようだと、長期的な資産形成にはマイナスでしかありません。こういう不都合も今後は解消されます。

――NISA改革の今後の課題は。

一連の折衝で唯一実現できなかったのが、ジュニアNISAの事実上の継続です。そもそも現行でも年110万円まで生前贈与を認めているわけですから、子や孫に向けた資産形成をNISAで行うというのは至って自然な発想です。しかしながら18歳未満の本人に代わって投資できることへの抵抗が大きかったのだろうと思います。もし将来、実現の機運が高まるとすれば、未成年者への金融教育の充実が前提となります。今回の税制大綱でも金融リテラシー向上のための中立的な機関をつくると盛り込まれました。おそらく法案の形にまとまるでしょう。社会人だけでなく中高生のリテラシーが上がってくれば、18歳未満のNISAについても再び議論が盛り上がってくるとみています。

――新NISAによって日本の経済・金融はどのように活気づいていくでしょうか。

さっそく2023年に起きそうなのが、現行NISAの駆け込み需要です。1800万円の生涯投資枠は24年1月からの新制度に適用されるため、23年12月までに「一般NISA」や「つみたてNISA」に投資した分は生涯投資枠に計上されません。今のうちにNISAを始めれば事実上、生涯投資枠が1800万円を超えます。金融機関はこのあたりの仕組みを宣伝し、24年にスタートする新制度への弾みにしていただければと思います。

新NISAによって日本でも「貯蓄から投資」が進んできたとの実感が広がれば、海外の資産運用会社が日本に参入してくるでしょう。日本の膨大な個人資産の山が動く好機を見逃すはずがありません。日本の国際金融センター化にも貢献するでしょう。私は菅義偉内閣で財務副大臣を務めていた際、国際金融人材を日本に受け入れるための規制緩和やインフラ整備に取り組みました。ただ、足りなかったのは「お金のにおい」でした。個人による投資が増えて国内市場が盛り上がってくれば、「所得税が高い」などという理由で日本市場を敬遠してきた海外投資家も日本に注目せざるを得ません。デフレと超円高からは脱却しました。新NISAを日本市場のマインドセットを変える起爆剤にしていきます。

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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