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「遺族年金」は女性のもの…!? 男女で異なる「もらえる条件」驚きの“差”

Finasee / 2023年2月14日 11時0分

「遺族年金」は女性のもの…!? 男女で異なる「もらえる条件」驚きの“差”

Finasee(フィナシー)

一家の大黒柱が亡くなった場合、遺された家族はこれからどのように生活したらよいか不安を感じることでしょう。まさにそんな不安に寄り添うものとして、年金制度には遺された家族の生活を保障する遺族年金があります。

遺族年金と聞くと、女性が受ける年金とイメージされる方も少なくないようですが、真偽のほどは? 制度とともに解説します。

遺族年金を受け取っている人の98.1%が女性という実態

遺族年金には遺族基礎年金、遺族厚生年金があり、亡くなった人に死亡当時生計を維持されていた遺族が対象になります。ただ、遺族なら誰でも受け取れるわけではなく、優先順位の高い人が受給します。

遺族基礎年金は①配偶者、②子をその対象遺族とし、①の配偶者は「子がいる配偶者(子とは②に該当する子)」が条件で、その優先順位は①②の順となっています。

一方、遺族厚生年金は①配偶者・子、②父母、③孫、④祖父母をその対象遺族とし、遺族の優先順位は①②③④の順となります。遺族厚生年金の配偶者は子がいることが条件ではありませんが、①の中では「子のある配偶者」「子」「子のない配偶者」の順がルールです。

こちらを見る限り、“ルール上”は男性も女性も対象になりうることはお分かりいただけると思います。しかし、遺族年金を受け取っている人の98.1%(5328万人)が女性で、しかも、97.4%(5288万人)が死亡した人の妻となっています。実態を見れば、ほぼ女性に支給されている年金となっています。

※ 厚生労働省「年金制度基礎調査(遺族年金受給者実態調査)令和2年」より。なお、同調査では、旧厚生年金保険法の遺族年金の受給者、寡婦年金の受給者も含んだ数字となっています。また、受給者となる遺族のうち子と孫は調査対象とされていません。

遺族のうち、妻だけ年齢制限がない

なぜ圧倒的に女性、それも妻が受け取ることが多いのでしょうか。その大きな理由として、遺族のうち妻だけが年齢制限がないことが挙げられます。

まず、遺族基礎年金・遺族厚生年金についての「子」や、遺族厚生年金についての「子や孫」については18歳年度末まで(一定の障害がある場合は20歳未満)で結婚していない人が条件となっています。日本人の平均寿命は長いため、まだ高校も卒業していないような子どもを遺し、若くして亡くなる方は少ないでしょう。そもそも配偶者が遺族としての優先順位が高いため、これらの遺族(高校生以下の子)が実際に受給するケースはまれです。

一方、遺族厚生年金の対象遺族のうち夫、父母、祖父母については、亡くなった人が亡くなった当時、これらの遺族が55歳以上であることが条件で、しかも60歳にならないと支給はされないという年齢要件があります(夫のみ後述の例外あり)。つまり、妻死亡当時、55歳未満の夫などは支給されません。年齢がかなり限定されていると言えます。

また、妻死亡当時、夫が55歳以上であって、さらに60歳を迎えたとしても、遺族自身(=夫本人)の老齢年金との調整があります。遺族が60歳台前半で特別支給の老齢厚生年金(特老厚)が受けられる場合、遺族厚生年金といずれか選択になります。遺族自身が会社員として厚生年金被保険者期間が長く特老厚の受給額が高い場合、多くの人は特老厚を選択受給し、遺族厚生年金は選ばないでしょう。

65歳以降についても、老齢基礎年金、老齢厚生年金と遺族厚生年金を同時に受給できますが、遺族厚生年金は老齢厚生年金相当額を差し引いた差額支給という扱いとなり、自身の老齢厚生年金が遺族厚生年金より圧倒的に高いような場合、支給されないことになります(この差額支給のルールについては次回取り上げます)。

要は年齢制限があるだけでなく、自分の掛けた年金があることで遺族厚生年金は調整され、場合によっては支給されないこともあります。そのため、たとえ優先順位の高い配偶者でも、夫が受けるケースは少なくなります。

受給者の中で「遺族厚生年金を受ける妻」が圧倒的に多い

優先順位の高い配偶者について、若くして亡くなって18歳年度末までの子がいることが少ないことから、遺族基礎年金受給者は全体的に少なく、その受給者のうち妻は5万8000人、夫は1万1000人となっています(前掲調査より。いずれも「基礎年金のみ」と「基礎年金と厚生年金の両方」の受給者数の合計)。

これに対し、子がいることが条件ではない遺族厚生年金のほうが支給されることが多く、夫に先述の年齢制限などがあって、圧倒的に妻が受給する可能性が高くなっているのが実情です。

実際、遺族厚生年金(旧厚年法の遺族年金受給者も含む)のみで受給する妻は522万2000人にのぼります(前掲調査より)。高齢の夫が死亡した際、子は18歳年度末をとうに過ぎ(40代、50代を迎えている)、夫と同じく高齢の妻が遺族厚生年金を受給するというパターンが最も多いと言えます。

遺族厚生年金で受給する妻の圧倒的な多さから、女性の年金、サラリーマンの夫亡き後の妻の年金としてイメージがされることになっていると言えます。

つまり、冒頭の「遺族年金と聞くと、女性が受ける年金としてイメージされる方も少なくないようですが、真偽のほどは?」の問いに対する答えをまとめとしてお示しすると、「実際に遺族年金の受給者は女性が多数。ルール上は男性も受け取れるものの、年齢要件や男性側の老齢厚生年金との兼ね合いで、実際に遺族年金を受給するケースは少ない」となります。

現状の遺族年金には時代錯誤な面も…今後の改正に注目

ただ、女性の社会進出や共働き家庭の増加にともなって、この「受給者の大部分がサラリーマンの夫を亡くした妻」となるような制度は、時代に合っていないのではという声も上がっています。

現在の年金制度は1986年4月に施行されたのですが、当時は「サラリーマンの夫と専業主婦の妻」の世帯が多くを占めていました。そのため遺族年金もそのような前提で設計され、一部改正はあったものの、多くは現在も継続していることが主な要因です。

しかし、共働き家庭の増加はおそらく不可逆的な変化でしょうから、遺族年金のほうが時代に合わせて変わっていくべきという声もうなずけます。

また実際にそんな声に応じて、男性に対して遺族年金の拡充が図られている部分もあります。遺族基礎年金の対象遺族は2014年3月までは「子のある妻」か「子」に限定されていました。それが2014年4月から「子のある配偶者」か「子」になりました。つまり、遺族である配偶者に妻だけでなく夫も含まれるようになり、母子家庭だけでなく、父子家庭にも支給されるようになっています。遺族厚生年金と異なり遺族基礎年金を受ける夫については年齢制限がありませんが、妻死亡当時、夫が55歳以上であれば、60歳未満でも遺族基礎年金だけでなく、遺族厚生年金も併せて受給できます。

ただし、夫が受給するため、遺族厚生年金への加算である寡婦加算はなく、依然として妻との制度上の差があります。

まずは遺族年金の制度を理解して、そのうえで、今後どのような改正がされるかにも注目していくとよいでしょう。

井内 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員。専門分野は公的年金で、3000件を超える年金相談業務を経験。さらに、年金事務担当者・FP向けの教育研修、ウェブメディアや専門誌への記事執筆も行っている。横浜市を中心に首都圏で活動中。

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