【確定申告】会社員も見落とし厳禁!? 今こそ知りたい「所得控除」入門
Finasee / 2023年2月7日 11時0分
Finasee(フィナシー)
「老後の備えは自分で作らなくてはいけない」そんな危機感がコロナ禍でさらに膨らみ、投資を始める人が増えている。しかし、そうはいっても奥深いのが投資の世界。慣れれば慣れるほど疑問や不測の事態に直面することも増えてくる。
そこで、この連載では「資産形成3年目だからこそ知りたい」用語や投資情報を解説する。第14回は「所得控除」について。毎年2月16日から3月15日の間に行う確定申告の際は、税額を算出するために各種控除額の計算が必要になる。今回は、確定申告の基本やどんな人が対象になるか、所得控除の種類など手続きに必要な知識を解説していく。
納税額の精算に必要なのが「確定申告」そもそも、確定申告とは1年間の所得と、それに対する所得税額を精算するための手続きを指す。計算する期間は1月1日から12月31日、申告期間は原則、翌年の2月16日から3月15日まで。つまり、2022年中の所得については2023年3月15日までに申告が必要だ。
確定申告が必要な場合の例としては「事業所得」がある個人事業主、「不動産所得」や「山林所得」がある地主などが挙げられる。また、源泉徴収されていない退職所得がある人や、公的年金の所得額が400万円を超える場合も、必ず確定申告が必要だ。
会社員(給与所得者)の場合、所得税は勤め先が代わりに納めるだけでなく年末調整の段階で納税額も調整されるため、原則として確定申告は必要ない。しかし、以下の場合は必ず確定申告しなければならない。
1. 給与所得が2000万円を超える人
2. 年間20万円以上の給与所得以外の所得がある人
3. 災害減免法で、源泉徴収額の徴収の猶予や還付を受けた人 ……など
まず、給与所得額が2000万円を超える場合は、勤め先が年末調整を行っていても確定申告が必要になる。
次に、各種所得(給与所得や退職所得以外の所得)が20万円を超える場合や、年末調整されなかった給与と各種所得の合計が20万円を超える場合も確定申告しなければならない。とくに副業を行い、2カ所以上から給与所得を得た人は後者に当てはまる可能性が高いため、注意が必要だ。
また、災害で住宅や家財に損害を受けて所得税の軽減・免除の対象となった場合は、確定申告することで所得税が軽減・免除される。免除の割合は500万円以下の場合は全額免除、500万円を超えて750万円以下の場合は2分の1を軽減、750万円を超えて1000万円以下の場合は4分の1を軽減と、世帯の所得額により異なる。
確定申告した方がお得になる場合もある会社員の多くは確定申告は不要だが、以下のパターンに当てはまる人は、確定申告をすると税金の還付や節税が可能かもしれない。
1. 災害、泥棒、事故で資産に損害があった人
泥棒や事故などで資産に損害を受けた場合は「雑損控除」という控除を適用できる可能性がある。雑損控除では、損害金額や災害関連の支出から保険金等の額を差し引いた金額が控除される。
災害に遭った場合の救済制度には、前述した災害減免法による所得税の免除・軽減もあるが、どちらの制度を適用するかは納税者自身が選ぶことができる。自分にとってより有利な制度を選択したい。
2. 退職し、年内に再就職していない人
退職した会社員にも、確定申告した方がいい場合がある。年内に再就職すれば、新しい勤務先で前の勤務先の給与も含めて年末調整され、所得税の納め過ぎがあっても解消できる。
しかし、再就職しない場合は年末調整を受けられないため、所得税の納め過ぎがあっても還付される機会がなくなってしまうのだ。退職した翌年以降5年以内であれば行えるが、添付書類が揃ったら早めに行おう。
3. 年収103万円以下で源泉徴収されている人
1年間の所得が103万円以下のパートやアルバイトには、所得税が課税されない。しかし、月の給与が8万8000円以上かつ扶養親族がいない場合は源泉徴収される。源泉徴収された額は年末調整の際「扶養控除等申告書」を提出すれば還付されるが、提出していない人は確定申告が必要になる。
4. 一般口座や源泉徴収なしの特定口座で投資をしている人
一般口座や源泉徴収なしの特定口座で投資をしている投資家は、欠かさず確定申告したい。利益が出ていない場合でも、「損益通算」という仕組みを使って税額を抑えられる可能性があるからだ。
損益通算とは、同一年分の利益と損失を相殺すること。株式投資などで損失が出た場合、利益から損失を差し引いて、その分だけ税金を減らせるのだ。さらに、損失は最大で3年間繰り越して控除することができるため、申告する年に損失が出ていなくても制度を利用できる場合がある。
一般的な会社員が使える「所得控除」とは?確定申告では、所得の合計額から各種控除の額を差し引いたうえで納税額を算出する。控除の種類は全部で15種類あり、適用されるための条件はそれぞれ異なる。
なかでも、配偶者や子を扶養している場合に適用される「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」や、民間の保険料に対する控除である「生命保険料控除」「地震保険料控除」などは、年末調整の際も計算される。
ここでは、確定申告ならではの所得控除である「医療費控除」と「寄付金控除」について見ていこう。
医療費控除医療費控除とは、自身や同一生計の家族の医療費が一定額を超える場合に受けられる控除だ。控除される金額は以下の計算式で求められる。
(実際に支払った医療費の合計額ー保険金などで補填された金額)ー10万円
医療費控除では、最大で200万円までの金額が控除される。なお、年間の総所得金額が200万円未満の場合は、差し引かれる金額が10万円ではなく総所得金額の5%になる。
また、医療費控除には特例もある。健康の維持や疾病予防のための健康診断や予防接種を受けている場合、一般の医薬品の購入費のうち1万2000円を超える部分を控除する「セルフメディケーション税制」だ。セルフメディケーション税制では、一般の風邪薬や漢方薬などの購入費も控除の対象となるため、より多くの人が制度を利用できる。
ただし、セルフメディケーション税制は、医療費控除との併用はできないため、どちらを利用するのがよりメリットが大きいかを計算のうえ判断しよう。
寄付金控除寄付金控除とは、国や地方公共団体などに対して「特定寄附金」を支出した場合に受けられる控除だ。最も一般的な控除対象は「ふるさと納税」による地方自治体への寄附だろう。
ふるさと納税とは、任意の地方自治体に寄附金を贈る制度だ。寄附金のうち2000円を超える部分を対象に、所得税と住民税の両方が控除される。会社員であればワンストップ特例制度という簡易手続きで完了するが、自営業者や6カ所以上の自治体に寄附した場合、控除を受けるには確定申告が必要となる。制度を利用している人は忘れないようにしよう。
確定申告には「e-Tax」が便利確定申告では「確定申告書」に必要事項を記入して税務署に提出する必要がある。国税庁ホームページから書面をダウンロードして記入することもできるが、e-Taxでの申請なら書類の記入漏れなどのリスクを避けることもできるうえ、より簡単に手続き可能だ。
ちなみに個人の確定申告の場合、マイナンバーカードと、マイナポータルというアプリをインストールしたスマートフォンがあれば申請できる。
一般口座や特定口座やiDeCoでの投資、ふるさと納税を利用していない人でも、医療費控除やセルフメディケーション税制の対象になる可能性がある。節税対策の一環として検討してみてもいいだろう。
文/中曽根 茜(ペロンパワークス)
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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