「投資信託でマイナス…」焦っても絶対にやってはいけない“あること”
Finasee / 2023年2月6日 17時0分
Finasee(フィナシー)
一般社団法人投資信託協会が、「投資信託の主要統計等ファクトブック」を公開しました。
今回のファクトブックは、2022年12月末までの、過去10年間の国内投資信託市場に関する動向を、データでまとめたものです。投資信託を保有していて、自分の持っている投資信託に関する情報は多少把握していても、日本の投資信託マーケット全体の情報を知らない人は多いのではないでしょうか。
このファクトブックには普段、あまり触れることのない国内投資信託市場全体の情報が掲載されています。投資信託を持っている人は一度、目を通してみることをお勧めします。
国内投資信託の大半は株式投信まず全体像から見ていきましょう。個人の多くが保有している投資信託は「公募投信」と呼ばれるものです。2022年12月末時点の純資産総額は168兆7235億1600万円で、運用されている投資信託の本数は5955本です。
国内で設定・運用されている投資信託には「私募(しぼ)」といって、募集人数が50名未満、もしくは1人以上の適格機関投資家に限定して販売されるものがありますが、これは基本的に個人を対象にしていないので、本稿の説明からは省きます。
公募投信は広く一般に募集・販売されるもので、私募投信にある募集人数の制限はありません。現在、公募投信は契約型投信と投資法人があり、前者はインデックスファンドなど、銀行や証券会社などの金融機関窓口で募集・販売されているタイプです。また後者は、受益証券が証券取引所に上場されていて、株式と同じように取引所で売買できるものです。不動産投資信託がその中心です。
ちなみに全体像で言うと、契約型投信の純資産総額が157兆1991億9300万円で、公募投信の93%を占めています。かつ、そのなかでも株式投信の純資産総額が142兆7485億5900万円ですから、国内投資信託の大半は株式投信であることが分かります。
かつては公社債投信に人気集中ちなみに1990年代に入って国内株価が暴落し、平成不況に突入した当時は、株式投信よりも公社債投信が主流でした。当時は今に比べて金利水準の高かったため、預貯金に比べて相対的に高い利回り水準が期待できた公社債投信に、人気が集中したからです。
それが再び株式投信中心になったのは、公社債投信の中心的存在だった中期国債ファンド、MMF、短期公社債投信、長期公社債投信、長期国債ファンド(トップ)が、元本割れを起したり、超低金利の影響で運用成績が低下したりした結果、投資家が離れてしまったことが理由です。
投資信託の純資産の要因分析も掲載ファクトブックには、投資信託の純資産の要因分析も掲載されています。純資産総額の増減が、「収益分配額」、「資金増減額」、「運用増減額」に分けてグラフ化されています。
収益分配はマイナス幅減少の傾向収益分配はファンドの純資産総額からキャッシュアウトするものなので、どの年においても常にマイナスになるのですが、昨今の傾向としてはマイナス幅が減少しています。
たとえば2015年は6.4兆円のマイナスでしたが、2022年は3.2兆円のマイナスでした。これは、毎月分配型など分配を行うタイプのファンドが減ったからだと思われます。
資金増減額は2012年以降プラスが続く資金増減額は、購入によって資金流入した額と、解約や償還で資金流出した額の差です。これは2012年以降2022年に至るまで、すべてプラスでした。
ちなみにこの10年間で最も資金流入額が大きかったのは2015年の12.6兆円で、2022年は8.8兆円でした。
運用増減額はおおむね10兆円前後のプラスまた運用増減額はその年のマーケット動向に大きく左右されます。この10年でマイナスになったのは2015年、2018年、2022年の3回で、2015年が2兆円のマイナス、2018年が11.7兆円のマイナス、2022年が12.9兆円のマイナスでした。
2018年と2022年の運用減が大きいのですが、とはいえ他の年ではおおむね10兆円前後のプラスが出ており、特に2019年は16.2兆円、2021年は17兆円にも達しています。
過去のケースが将来にも当てはまるかどうかは何とも言えませんが、少なくともこの10年のケースで考えると、昨年のように大きなマイナスが運用面で生じたとしても、長期保有に徹すれば、徐々にマイナス幅が埋まり、プラスに転じる可能性が高いと考えられます。
一度解約してキャッシュにすると、マーケットが上昇局面に転じたとしても、なかなか新たに買うことができず、結果的に実現損を回復するチャンスを失うことになりかねません。その意味でも、投資信託はマーケットが下がったからといって解約するのではなく、そのまま保有し続けることを心がけるのが良いと言えるでしょう。
インデックス型の勢い増すも、いまだアクティブ型が6割超その他、気になるデータとしては、ETFを除く公募株式投信のアクティブ型とインデックス型の対比があります。昨今、個人に人気の高いインデックス型ですが、2012年時点のインデックス型の割合は全体の8.7%で、2022年は26%まで高まっています。
かなり増えてきたのは事実ですが、それでも全体の61.8%はアクティブ型です。運用会社からすれば、信託報酬率が極端に低い現状において、インデックス型だけでは経営を維持できず、やはりアクティブ型をある程度中心にせざるを得ないのが現実です。
運用管理費用は「安さこそ正義」というわけでもない
その関連で言うと、このファクトブックには公募株式投信における運用管理費用(信託報酬)の推移がグラフで表示されていますが、2022年時点におけるインデックス型の信託報酬率は平均0.38%であるのに対し、アクティブ型のそれは1.14%です。それでも2016年におけるアクティブ型の信託報酬率は1.20%のため、徐々にアクティブ型でも信託報酬率の引き下げが進んでいるのが分かります。
消費者である個人の立場からすれば、コストは安いに越したことはありませんが、あまりにもコストが下がると、運用会社の経営に関わる問題が生じ、運用の継続性に疑義が生じてしまいます。
信託報酬率は安いことが正義ではなく、プロダクツを組成している運用会社と、コストを負担する受益者の双方が納得できるような情報開示の仕組みをつくり、合理的な料率設定ができるようにすることが肝心です。
もうひとつ、見ておきたいのが確定拠出年金(DC)の動向です。企業型と個人型の加入者数ならびに資産額の推移が示されています。両方とも順調に加入者数ならびに資産額が順調に伸びていることが分かります。
***本稿で紹介したのは、ファクトブックに掲載されているデータの一部です。全体の内容は投資信託協会のサイトからダウンロードできるので、興味のある方は一度目を通してみることをお勧めします。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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