ベテラン、若手で異なる「運用」への期待。販売員の経験の差が背景に
Finasee / 2023年2月7日 19時0分
Finasee(フィナシー)
販売会社の若手とベテラン層で、運用会社に期待する「運用力」の違いが鮮明になってきた。金融リテール専門誌『Ma-Do』が実施した「運用会社ブランドインテグレーション評価2022」で、30代以下の若手と40代以上のベテラン層が運用会社に期待する「運用力」について調査した。運用力の評価で軸になっている「リスク/リターン、コスト/リターンの良い運用ができている」との項目で、30代以下の評価が大きく上がった一方、40代以上は「一貫した運用哲学で運用されている」が大きく上がっていることが分かった。若手よりもベテラン層の方が、運用会社の運用力に対する期待が強い傾向がうかがえる。これは販売員がこれまで経験してきた市場環境の違いが背景にありそうだ。
「運用会社ブランドインテグレーション評価」は、投信販売会社が運用会社を評価する調査で、運用会社について「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ブランド力」「ガバナンス」の6つの軸で評価してもらい、得点順にランキングした。2022年調査は9月~10月にWEBで実施し、国内外の運用会社36社を評価の対象とし、310件の回答を得た。回答者の年齢構成は、20代と30代が合わせて40.3%、40代以上で59.7%だった。
ベテラン層に強い「運用力」に対する期待値販売会社による運用会社の評価で運用力に関して評価するポイントで、「リスク/リターン、コスト/リターンの良い運用ができている」という項目に対する評価が、若手とベテランで大きく異なる結果になった。30代以下の若手販売員は、同項目について2021年の77.1%という回答率が2022年は92.0%に大きく上昇する。40代以上のベテラン層が21年の80.7%から22年は80.0%と横ばいだったことと大きく異なる。これに対して、「市場平均を上回る収益をあげている」という項目について若手は21年の76.3%から22年は72.0%とポイントを落としているが、ベテラン層は21年の65.2%から22年は68.6%と評価ポイントをあげている。
2022年は米国株式も米国債券もともに代表的な指数が2ケタマイナスのパフォーマンスになるという運用が非常に難しい1年だった。その難しい運用環境の下でも、ベテラン層は運用会社に対して「運用の工夫によって良い運用成績を示すべき」と厳しい目で見ているようだ。一方、若手は運用成績についてはやや目をつむって「低コスト」や「運用効率」という収益性以外のところを評価し、「運用会社に対する運用力の期待値」がそれほど高くないといえる。
対してベテラン層は過去20年、30年という市場変化を経験し、「リーマン・ショック」(2008年)や「チャイナ・ショック」(2015年)などの市場が難しい期間にもかかわらず、プラスのリターンを残しているファンドがあったことを身にしみて感じているのかもしれない。
「リーマン」後しか知らない若手とベテランの差も運用会社の運用力に対する評価は、若手とベテランの間に価格変動商品を取り扱ってきた期間の経験の差があるのではないだろうか。20代、30代の若手の大半は、「リーマン・ショック」後の超低金利の時代しか知らない。基本的にリスク性資産を保有していれば、「多少のマイナスはあっても時間が経てば挽回できる」という楽観的な対応で乗り越えることができた15年間だった。しかし、2000年のITバブル崩壊や、1989年をピークとする日本のバブル崩壊を知るようなベテラン担当者にとっては、10年たってもマイナス価格が回復しない苦い経験がある。
このような経験の差は、今回の調査で「一貫した運用哲学の下で運用が行われている」という項目から、ベテラン層は21年の37.9%が22年は50.8%に大きくポイントを伸ばしたことに対し、若手は21年の23.7%が22年は25.6%と横ばいだったことに表れている。厳しい運用成績を前にして、ベテラン層は「過去に実績のある運用チームであれば、長期に変わらぬ姿勢で運用していれば必ず挽回してくれる」という「運用力」に対する期待と信頼があるのだろう。
Finasee編集部
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