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「おじいちゃん、ありがとう」孫のために一大決心、“生きた証”に涙

Finasee / 2023年2月13日 11時0分

「おじいちゃん、ありがとう」孫のために一大決心、“生きた証”に涙

Finasee(フィナシー)

相続税の節税対策として最も有名な「生前贈与」。その中でも2013年からスタートした、一度に1500万円までの資金を贈与できる「教育資金一括贈与」は節税対策として積極的に活用されています。

ただし、正しい知識を持っていないと思わぬトラブルになってしまうことも。今回は「教育資金一括贈与」に関する失敗事例を紹介します。

初孫の顔が見たい

鈴木敏郎さん(仮名、65歳)には同い年の妻と37歳になる一人息子がいます。息子は地元の大学を卒業後、大手メーカーに勤務。職場結婚し、鈴木さん夫婦の近くにマンションを借りて幸せな家庭を築いています。

鈴木さん夫婦は、子どもが1人しかいなかったこともあり、孫の顔が早く見たいと孫の誕生を切望していました。しかし、息子は「夫婦2人の生活を楽しみたいから、当面は子どもをつくる気はない」として、なかなか期待通りにはいかないものだと鈴木さんはどこか寂しく思っていました。

結婚してから10年経過しても、夫婦2人で旅行を楽しむ息子夫婦からは、孫誕生の予兆も見えないままでいました。そんな矢先に、突然鈴木さんの自宅を息子夫婦が訪ねてきます。そして、開口一番「お父さん、お母さん、ようやく孫の顔が見られるかもしれないよ」と言ったのです。

あまりに突然のことで鈴木さん夫婦は驚きましたが、同時に大きな喜びに包まれました。あまりのうれしさからか、その瞬間のことをはっきりと思い出せないほどです。息子の報告から数カ月後、待望の初孫が誕生しました。

孫の教育のために自分の退職金を使いたい

鈴木さん夫婦にとっては、待望の初孫です。とにかく目に入れても痛くないほどかわいい。また、近くに住んでいることもあってか、息子や嫁も頼ってくれていることが、鈴木さんには何よりもうれしく感じられました。

鈴木さんは、手元にある退職金2000万円(定年退職時に取得)の一部を何とか初孫の教育資金に充てたいと考えます。自分の生きてきた証である退職金で孫が十分な教育を受けられたら、どれほど幸せなことか。孫が大学を出るまで生きていられたら、「おじいちゃん、ありがとう。おじいちゃんのおかげで大学を卒業することができました」と、この上なく幸せな言葉を聞けるかもしれない――そんなことを夢見ていました。

金融機関からの提案を受け入れてみた

そんな思いが募る中、ふと目にした本に記載されていたある言葉が鈴木さんの目に留まりました。

「お孫さんの喜ぶ顔が見られるだけでなく、ご自身の相続税対策にもなります! 教育資金一括贈与がおススメです!」

鈴木さんの資産は預金4500万円のみで、自宅はこれまでずっとマンションを借り続けています。関東の郊外にある昔ながらの住宅地で、住民は減少傾向にあるものの、鈴木さんは地元のコミュニティーが好きでここを離れるつもりはありません。住み慣れたこの地を“ついのすみか”にしようと考えており、近くに住む息子夫婦もそばで支えたいと考えているようでした。

そんな息子夫婦の気持ちに応えたいこと、また、自身にも相続税対策が必要だと金融機関から提案されていることから、鈴木さんは教育資金一括贈与をしようと考えます。

金融機関からの提案があってから1カ月熟考し、最終的には非課税限度額の1500万円を教育資金として一括贈与することを決断。金融機関で手続きをすることになりました。もらう側の孫は生まれたばかりであるため、法定代理人である息子夫婦が契約に同席しました。実際に贈与が実行完了した際には、息子夫婦は非常に喜んでくれ、嫁は感極まって涙さえ流してくれたそうです。鈴木さんにとって、心から贈与してよかったと思えた瞬間でした。

これで、初孫には十分な教育を受けさせてあげられる。「おじいちゃん、ありがとう」と言ってもらえる。鈴木さんはとても満たされた気持ちになりましたが、これが悲劇の始まりでした。

●後悔してもしきれない事態に… 続きは後編【「孫の役に立ちたい」一心が後戻りできぬ悲劇に…悔やまれた祖父の判断】で紹介します。

木下 勇人/税理士法人レディング 代表税理士

愛知県津島市出身。監査法人トーマツ・税理士法人トーマツにて非上場会社オーナーファミリーの事業承継対策に従事。2009年、名古屋で相続専門税理士法人を設立し、富裕層に対する不動産・財産コンサルティング、オーナー社長への事業承継コンサルティングを中心に業務を展開。税理士の枠を超えたコンサルティングには定評がある。2017年9月に東京事務所、2021年6月につくば事務所開設。税理士向け研修講師を年間100回以上精力的に対応。東京税理士会 麹町支部所属。

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